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服従のアルカナドール  作者: ゆらん
第三章
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カードの価値




 ミハエルさんからの連絡があったのは、午前8時過ぎだった。

 宿の談話室でディーンさんと合流し、ウルリカさんがミハエルさんと会話をしている状況だ。例の魔具はイヤホン型なので、俺達にはミハエルさんの声は届かない。受け答えは全てウルリカさんに任せている。


「――ええ、わかったわ。そっちも気をつけて」


 どうやら通信が終わったようだ。

 そんなに長く通話していなかったけど、どういった内容だったのだろう。


「とりあえず予定通りアタシ達は商人連中の動向を探るわ。まあ、メインはコロシアムの方でしょうから、すぐに片をつけてやりましょ」


「片を付けるって言ったって、どうするんだい?」


 ディーンさんがウルリカさんに訊いた。


「そんなの簡単じゃない。縛り上げて連中の計画を吐かせるのよ。まあ、アタシの勘だと商人は協力させられただけで計画には直接加担していないと思うけどね」


「ですね。私もそう思います。商人ですから、自分たちに利益があることしかしないはず。それに、リスクを負うことも極力避けるでしょうから」


 商人達は、直接計画の現場に居合わせはしないだろう。資金提供した見返りに、何かを得たのではないだろうか。お金よりも価値のある何かを。まあ、今の段階では憶測にすぎないが――。


「アルカナカードをシーグルに差し出していないところを見るに、彼らはあいつのことをよく知ってはいないでしょうね。魔術師なら、アルカナカードは喉から手が出るくらい欲しい物。それを渡さずに普通に売ろうとしていたのだから、あの商人はただの協力者止まりでしょ」


「たまたま奪いやすいエルーさんが握っていたから盗んだ。今回の件にはあまり関係ない、ということですね」


「そういうこと。ま、全部憶測だけどね」


「アルカナカードって、貴重な物なんだよね。そういえばウルリカはいくらでそのカードを買ったの?」


 ディーンさんが言うそのカードとはエリスさんのカードのことだろう。

 確かに、あの商人がいくらで売っていたか気になる……。


「30万ゼニスよ」


「30万ゼニス!? ――い、いや、貴重なものだから高いのやら安いのやらわからないけど……その金額をぽっと出すウルリカもウルリカだね……」


「魔具を作って売り捌いていたおかげでたまたま手持ちがあったのよ。人から奪った物を売った代金なんだから、もちろん返してもらうわ」


「あ、ああ。真っ当な商品じゃないからね。それは構わないけど――」


「安心しなさい。何も命まで取ろうってわけじゃないわ。ボコボコにして縛り上げた上でお金を頂くだけよ?」


「…………盗賊と何ら変わらないような」


「む……。悪党なんだからこれくらいしてもいいじゃない! それともなに? 人から奪った物を売ったんだからお金返してくださいとでも言うつもり!?」


「そ、そうは言わないけどさ……。――やり過ぎないように僕とイオちゃんで気をつけようね」


「あ、はい」


 元よりそのつもりである。

 調子に乗ってしまう節のあるウルリカさんの歯止め役はいつものことだ。


「なんか気になる言い方ね……」


 ジーっと俺とディーンさんのことをジト目で見てくるウルリカさん。


「ま、まあまあ、とにかく善は急げだ。大会も気になるけど、僕たちは僕たちの役目を遂行するとしようか」


「そうですね。そろそろ市場も開くころです。戦神祭中の市場は商人たちの稼ぎ時のはず。例の商人も商いをしている可能性は高いです。――それと、出来れば私もエリスさんの試合を見たいので、素早く終わらせましょう」


「そうね。さっさとお金取り返して大会観戦でもしますか」


 なんだか目的が変わっているような気もするが、まあいい。

 どのみち例の計画の現場はコロシアムだ。市場ではない。

 本戦は数日間行われる。いつのタイミングで仕掛けとやらが発動するか判らないので、警戒を怠ることは出来ない。ミハエルさんと【ウルスラグナ】の仲間もそのつもりだろう。







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