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服従のアルカナドール  作者: ゆらん
第三章
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ギルドと再会と




 闘技都市パークスに来てから2日経った今日。俺達は当初の目的であった仲間捜しを行うべく冒険者ギルドにやってきていた。


「闘技都市だけあって、強そうな冒険者が多いですね」


 俺は周りの冒険者たちを見ながら、心を弾ませていた。

 大きな武器を背負った大きな男たちが一杯いる。カイゼルさん程ではないが、いるだけでだいぶ圧がある冒険者がたくさんだ。


「見掛け倒しでしょ」


 しかしながらウルリカさんはいつも通りだった。まあ、魔法使いや魔術師からしたら身体の大きさなんてさほど重要ではないのだろう。前衛職である俺からしたら、体格の良い冒険者は羨ましく思うのだけど。


「私も魔法で大きくなれたらなぁ。そしたらもっと強くなれるかもしれないのに」


 と、何気なくぽつりと呟くと、


「バカなこと言わないで? イオはこのサイズだから良いのよ!? 小さくて可愛いのがイオなの!」


 ウルリカさんにものすごい勢いで咎められてしまった。

 しかしだ。可愛いだけではただの愛玩動物である。


「私はウルリカさんを守るために召喚されたのでは……?」


「イオは愛で――こほん。じゃなくて、一緒に旅をするために召喚したのよ。もちろん守ってほしいというのもあるけれど、私もイオを守るスタンスだからね。無理にあんな風にならなくていいの」


 と、ウルリカさんはひと際大きな冒険者? の男を指さした。

 そこで気づいた。その大男に見覚えがあることに。


「……ん? あれって、筋肉さんじゃあ……」


 僧服にスキンヘッド、そしてあの髭と筋肉。見間違えるはずもない。クリンバに行く前に行ったあの不思議な村で出会ったアズ……なんとかさんだ。あまりにも名前を呼びづらかったので筋肉さんと呼んでいたが。


「あらほんとだ。髭じゃないの」


 髭とは、ウルリカさんがアズなんとかさんを呼ぶときの名前である。


「声かけてみますね。おーい、筋肉さーん!」


「――む……。この愛らしい波動は……」


 むっくと振り返る筋肉さん。

 変わらず僧服に髭に筋肉だ。


「おお! やはりイオ殿ではないか!」


「お久しぶりです……という程の間でもないですが」


 筋肉さんと別れたのはヴァールの町だから、数週間ぶりくらいだ。

 久しぶりといえば久しぶりだが、ちょっと短い気がする。


「いや、まさかこんなところで相まみえるとは思わなんだぞ。パークスには何用で?」


「仲間集めのためです。クランをつくるのが今の目的でして」


「そういえばそうであったな。しかし、まだ増えてはおらぬようだ」


「そうですね。ディーンさんが仲間になってくれてからまだ誰も……。クリンバにも寄ってきたんですけど、そこではちょっと痛い目に合っちゃいまして」


 クリンバの冒険者ギルドでは、アルバンの罠に嵌められてしまった苦い経験がある。今回はその経験を活かし、少しでも嫌な予感がしたらウルリカさんに進言するか警戒を厳にするかしようと思っている。


「ふむ……。この街にはしばらくいるつもりだ。拙僧の筋肉が必要であればいつでも頼るといい。イオ殿のためならばいくらでも力を貸そう」


「ありがとうございます。その時はお願いしますね」 


 やはり筋肉さんは優しい人だ。


「ちょっと髭。アタシを無視してんじゃないわよ」


「はは……」


 ウルリカさんとディーンさんもいるのに、俺とばかり会話していたからかウルリカさんは少しだけご立腹だ。


「おっとこれは失敬。ウルリカ殿にディーン殿。変わらぬようで何より」


「あんたもね。ていうか、あんたアタシ達と違う方角に向かってヴァールを発ったのにどうしてパークスにいるのよ?」


「それには少し事情があるのだが、説明すると長くなるので割愛させていただく」


「ふーん、まあいいけど。髭には髭の事情があるのねぇ」


「そういうことである。時にイオ殿――」


 そうして、再会を果たした俺達と筋肉さんは、少しの間談話を楽しみ、そしてまた別れた。


 パークスにはしばらく滞在するとのことで、もしかしたらまた会うこともあるかもしれない。できれば、筋肉さんが俺達の仲間になってくれたらとは思うが、彼には彼の使命があるようだし、無理強いは出来ないだろう。


 筋肉さんと一緒に、冒険者ギルドでソロの冒険者を調べてみたが、ウルリカさんのお眼鏡に適う人物はいなかった。一応掲示板でパーティを募集してみたが、この調子だとあまりいい結果は期待できなさそうだ。


「また明日来てみますか。募集に喰いつく物好きもいるかもしれないし」


「そうだね。ただ、ウルリカの課した条件が厳しすぎてほぼないとは思うけど……」


「確かに、あれでは難しいですね……」


 そうなのだ。パーティを募集したはいいものの、条件欄にウルリカさんが記したのは、『若くて討伐ランク6以上のモンスターをソロ討伐できる武芸者で協調性があって生意気じゃないこと』であった。条件云々以前にこんな上から目線な募集の仕方をしたら誰だって嫌に決まってる。


「筋肉さんも、これでは拙僧は無理であるな、って言ってましたし」


「あいつは若くないからダメね」


「ウルリカは厳しいなぁ……」


 苦笑いのディーンさん。

 まあ、クリンバでああいうこともあったし、ウルリカさんも警戒しているのだろう。俺も、もうあんな目はこりごりだ。


「あ、そういえば筋肉さんはどうして冒険者ギルドにいたんでしょう?」 


 彼は冒険者ではない。元神聖教会所属の僧侶または僧兵だ。


「さあ、暇つぶしじゃないかしら」


「それはさすがにないと思うよ。この街には目的があって来ているようだったしね」


「まあ、今は詮索しないでおきましょう。今日は他にも行くところがあるしね」


「昨日の件、ですね」


「ええ。あの店主とロメオとかっていう男を探るわよ」


 倉庫街の倉庫内で密会していた2人。

 シーグルの仲間と思しき彼らが、闘技大会で何かを計画している。そしてそれは、確実に良いものではない。


「とりあえず、やつらの会話に出てきた宿に行って情報収集しましょうか」


「はい」


 そして、冒険者ギルドを出た俺達は行動を開始した。


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