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旅立ちの前に①




 この世界に来てから数週間。俺は大分こちらの生活に馴染んでいた。

 相変わらず戦闘訓練の日々は続き、少しずつだが戦いというものに慣れてきた気がする。

 初めの頃はスライムとばかり戦っていたが、今では他のモンスター相手とも戦っている。

 例えばウルリカさんが召喚しやすいということで、アンデッドモンスターのスケルトンだ。スケルトンは骨の魔物で、肉が付いていないのに身体が動く様はまさに圧巻である。まあ、スケルトンもスライム同様大して強くはない。今の俺ならすぐに倒せるレベルだ。

 他にもウルリカさん特製のゴーレムとも戦った。ゴーレムといっても全長二メートルないくらいで、少し背の高い男性くらいの大きさしかない。でも、今の俺は身体が小さいため、二メートル弱の高さでも結構な迫力を感じる。さらにゴーレムの装甲はちょっと堅い。堅くはあるが、スライム同様弱点のコアが腹の中に存在していて、そこを剣で突けば楽に倒せる。

 他にも植物系のモンスターとも戦ったが、彼らはあまり動かないので問題はなかった。

 最初の数日はウルリカさんと戦闘訓練していたが、今はもっぱらエウィンさんの元で訓練している。どうやら肉弾戦において獣人はかなりの戦力を誇るらしく、その技術を伝授してもらっているのだ。

 エウィンさんは獣人の中でも相当な実力者で、肉弾戦ならば他の獣人を寄せ付けない程の強さだとか。本人談なので本当かは知らないが。

 で、今も森の広場でエウィンさんに稽古をつけてもらっている。肉弾戦なので、当然武器は無し。素手だ。

 素手とは言ったが、魔力による身体能力強化ブーステッドは許されている。というか、しないと俺が一撃で死ぬ。


「へへ、どうやら魔力の使い方もウルリカの方から色々と教わってるみてぇだな」


 手をぶらぶらさせながらエウィンさんは言った。

 エウィンさんの言う通り、俺はウルリカさんから魔力の使い方を教わっている。

 まだ魔術を発動させることは出来ないが、基本的な使い方、即ち身体能力強化ブーステッドはある程度使いこなすことが出来るようになっていた。

 身体能力強化ブーステッドには色々とルールがあって、基本的に身体全体にかけられる強化には限度がある。例えば百の力があったとしよう。それを足、手、腕、腰、肩などに分割して魔力を送り強化すれば、当然元の百から五で割った二十という数値になる。だが、敵を右手で殴る直前などに百の力を全てそこに注ぎ込めば、威力を全開の百にしたり出来る。これは極端な例だが……まあ、ようは使い方次第というわけだ。

 ウルリカさん曰く、その百が百十や百二十に増やすことも可能らしいが、今の俺には無理だ。


「魔術とかはまだ全然ですけどね」


 魔術とは、体内の魔力を使って属性による現象を引き起こす事を言う。

 基本的な属性を五大元素といい、それぞれ火炎、旋風、地脈、電光、氷結と別けられる。あくまで基本な属性だけを挙げているだけで、他にも様々な属性が存在するらしい。

 ちなみに、魔術と魔法は同じ意味ではない。身体能力強化ブーステッドなんかは魔術ではなく、魔法という大きな枠組みに分類される。ウルリカさんが言うには、魔法という大きな枠の中に魔術などの魔力を行使して扱う様々な力が含まれていると覚えておけばいいとの事だ。だから、言い換えれば魔術も魔法の一種というわけだな。

 で、その魔術だが、俺は現在中々身につけられないでいた。頭の中で式を立てるのだとか、魔力の流れを読めだとか、考えるな、感じろだとか俺には難し過ぎる。

 やはりヨウジョならブツリだろう。

 魔術? 頭の悪い俺には中々難しい代物だぜ。


「ははっ! だがそれだけ素手で戦えりゃ魔術なんて必要ないだろうよ!」

「でも、まだエウィンさんに勝てませんし……」

「いやいやいや俺様に肉弾戦で勝ったらそれお前ヤバいからな? ヤバいはずなんだが、このままいくと結構負けそうな気が……って、弱気になるな、俺様ァ!」


 ふん! と気合を入れ、エウィンさんはファイティングポーズをとった。


「さあ、続きだぜ。イオ、来い!」

「はい!」


 今日も今日とてエウィンさんとの稽古は続く。

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