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服従のアルカナドール  作者: ゆらん
第一章
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帰り道




 この地上で最強と謳われているクラン『ウルスラグナ』。

 一説によれば、大国の保有する武力を凌駕する程の力を誇るのだとか。そこまでいけば色んな国に侵略侵攻出来てしまうな。先程ウルリカさんが言ってたんだが、それに関しては言い過ぎだと信じたい。

 それともう1つ。カイゼルさんにはある伝説があるらしい。

 なんでも巨大なドラゴンを1人で倒したという話だ。まだドラゴンというものを実際に見た事がないが、伝説になるという事は相当凄い事なんだろう。

 で、俺とウルリカさんはそのクラン、ウルスラグナに誘われてしまった。

 カイゼルさんが言うには、有望な冒険者を集めて、もっと力をつけたいらしい。もうこれ以上クランを強くする必要はないように思えるが、カイゼルさん的には足りないようだ。

 それで俺とウルリカさん……いや、正確にはウルリカさんの返答だが、キッパリ断ってしまった。俺個人としても、いきなり最強のクランの一員なんて荷が重いからウルリカさんの返答には賛成だ。

 ただ、また話がしたいという事で一応俺とウルリカさんが利用している宿の部屋だけはカイゼルさんに教えておいた。多分勧誘に来るつもりなんだろうが、ウルリカさんはウルスラグナに入る気は全然なさそうだ。


「……とりあえず冒険者の登録は終えたわね。なんだかいきなりアクシデントもあったけど、無事なれてよかったわ」

「え、まだ試験がありますけど……」


 そうなのだ。冒険者になるにはとある試験をクリアしなければならない。

 カイゼルさんとの手合わせが終わってからギルドに戻った俺達は、すぐに冒険者の登録をした。だが、簡単になれるものではないらしく、試験を課せられたのだ。


「モンスター討伐の試験でしょ? そんなのクリアしたも同然じゃない」

「ビッグベア、でしたっけ。大丈夫でしょうか。なんだか強そうな名前ですけど」


 ビッグベア。単純にでかいクマを想像するが、どんな見た目なんだろう。


「余裕よ余裕。討伐レベル4だし。アタシの魔術でイチコロよ」

「それならいいんですけど……」


 話しながら宿屋に戻っていると、武器の露店を発見した。

 そういえば俺の短剣、海の藻屑になったんだよな。これから旅をするにあたって、武器は必須だ。そろそろ新しい物買った方がいいんじゃないだろうか。

 そう思い、俺はウルリカさんに相談する。


「ウルリカさん。新しい武器を買ってもいいですか?」

「武器? それなら心配ないわ。ちゃんと用意するから」

「へ?」


 用意する?

 ここで買ったらダメなのかな。


「でも、色々あるみたいですよ。ほら、あれとかカッコいいです」

「どれどれ……。んー、見た目はいいけど性能は微妙そうね。ま、武器の事は安心なさい。アタシがしっかり造るから」

「え!? ウルリカさんが造るんですか!?」

「ええ。なんたってアタシは魔法使いだからね。武器くらいちょちょいのちょいで造ってあげるわ」

「そ、そういうことなら……」


 ここで買わなくてもいいか。

 でも、ウルリカさんって武器とか造れたのか。魔具は造れるって言ってたけど、武器も造れたなんて。やっぱりウルリカさんは凄い。


「本当は旅立ちの前に造っておきたかったんだけど、素材が足りなくてね。でもそれもこの町で手に入れたわ」

「あ、昨夜の買い出しってもしかして……」

「うん。武器に使う素材を買いにね」

「わ、私のためにわざわざ……。ウルリカさん、ありがとうございますっ」

「ふふ。明日までには仕上げるから、楽しみにしててね」

「はいっ」


 ウルリカさんが俺のために造ってくれる武器。一体どんな物になるのだろうか。今から楽しみだ。


「あ、そうだ」

「急にどうしたんですか?」

「昨日町を歩いてる時によさげな喫茶店見つけたのよね。ちょっと寄っていかない?」

「喫茶店ですか。いいですね」


 喫茶店っていうとコーヒーとか飲める場所だよな。生前はあまり縁のない場所だったっけ。でも、だからこそ行ってみたいという気持ちは強い。知らないところに行ってみるというのも、俺の旅の目的だしな。

 ウルリカさんに連れられ、その喫茶店へと向かう。

 港町というだけあって人はかなり多い。行きかう人の恰好を見るだけでどういった職業なのか分かる人もいて面白い。防具を装備している人や、僧服をきている人。荷台を運んでいる人やとんがり帽子をかぶっている人。特徴ある恰好の人が多いから、道行く人を眺めているだけでも楽しい。


「確かここの通りだったはず……」


 レネネトのメインストリートから外れて、少し狭い道を歩く。

 建物が密集しているからどこか薄暗い。でも、それがなんだか裏通りな感じで風情がある。


「そういえば猫ってそういうお店入れないとかありますか?」

「んー、どうでしょうね。飲食店だから可能性はあるわけど。でも今はミィいないし気にしなくていいんじゃない?」

「それもそうですね」

「っと、話してる間についたわよ」


 辿り着いたのは裏通りの一角。その角の所にお店があった。

 見た所結構古い。長年経営しているのだろうか。


「行きましょ。ドタバタしてきたし、たまにはこういうトコでのんびり時間を過ごすのもいいと思うわ」


 冒険者ギルドからの帰り道。

 俺とウルリカさんは喫茶店でのんびりと過ごす事になった。

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