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服従のアルカナドール  作者: ゆらん
第一章
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流されて無人島②




 無人島にイケメンと2人きり。

 何なんだこの状況は……。

 さっきまで船に乗っていて、これから冒険者になるってところだったのに……。

 俺、もしかして運が悪いのだろうか。

 ウルリカさんともあんな形でお別れしたままだし、このままここで死んでしまったら最悪な人生で終わってしまう。

 冷静に考えてみるとまだ旅立って2日しか経ってない。

 この調子だと身体が持たないんじゃなかろうか。割とマジで。


「……はぁ。どうなってるんだろ」


 今更ながら、俺は苦悩していた。

 初日から海賊に町が襲撃されたり、次の日には無人島に漂着したり、俺の旅はどうやら波乱万丈なものになりそうだった。もっと穏やかに進むものと思っていたのに、そう簡単にはいかないらしい。


「ただいま」


 俺が嘆息していると、ディーンさんが外の確認を終えて洞窟に戻ってきた。


「もうすっかり暗くなってるね。明日の朝まで助けが来なければ何か手を打った方がよさそうだ」

「手を打つといっても、何かあるんですか?」


 この状況をどうにか出来る方法でもあるのなら、教えて欲しい。


「いかだを造る」

「……は?」

「だから、いかだだよ。丸太とかつなげて造る小さな船だけど、知らない?」

「いや、知ってますけど……」

「なら分かるでしょ? いかだを、僕が、造るんだよ!」

「は、はぁ……」


 何故にドヤ顔なんだ……。

 いかだ造るのに自信でもあるのか。

 ていうかいかだってそんな簡単に造れるものなのか。

 素人がいかだを造っても上手くいかない未来しか見えないぞ。


「なんでか知らないけど、この島にはたくさん丸太が放置してあったんだ。建設業を営んでいる人がこの島に来て伐採していたのが残ってたのかもしれない。しかもね、縄もあったんだよ。すごい偶然だと思わない?」


 なるほど。材料が一通り揃ってたから自信満々だったのか……。

 なんて安直な。


「材料があるのは分かりました。でも、ディーンさんいかだ造れるんですか?」

「そんなの簡単さ。丸太を縄で結んで繋げるだけだろう?」

「……ディーンさんがいかだを造れるのは分かりました。ですけど、仮にいかだを造れても、ここがどこだか分からないのにいかだ如きで人がいる大陸に辿り着けると思いますか?」

「そ、それは……」


 俺に指摘され、ディーンさんは口ごもった。


「分からない……けど、ここでじっとしているよりかはマシじゃないかな」

「いかだに乗っている間にモンスターに襲われるかもしれませんよ? そうしたらどうするんです?」

「僕が戦うさ!」

「武器、ないですけど」

「う……」


 今度こそディーンさんは黙った。

 ちなみに武器はいつの間にかなくなっていた。多分、海に落っことしてきたんだろう。

 こんな時ウルリカさんがいれば、混沌空間カオスゾーンから武器を取り出せたのにと思わずにいられない。

 まあ、俺は素手でも戦う術はある。だけど、いかだの上で素手だけというのはかなり厳しい。またクラーケンに襲われでもしたら、今度は海の藻屑だ。


「と、とにかく、明日まで待とう。それで助けが来なかったらいかだを造るよ」

「はぁ……。そうですね。ここで虚しく朽ち果てるよりはマシですよね」

「な、なんだかイオちゃんが刺々しい……」

「そうですか? そういうつもりはないんですけど」


 そうは言うが、ディーンさんの言う通り俺は少し冷たくあたってると思う。なんというか、ディーンさんに優しく接したらいけないような気がする。何がいけないのかは、分からないけど。

 とにかく理屈じゃないんだ。勘がそう言っている。

 というわけで、相手がイケメンだからという言い訳を俺の中で作っておいた。


「――そろそろ休もう。少しでも体力を回復させておきたいからね」

「いかだを造るためですか?」

「それもあるよ。だけど、この状況じゃいつ休めるか分からないからね。休めるうちに休んでおいたほうがいいと思って。それに、もう夜だしイオちゃんも眠たいんじゃないかなーってさ」

「そ、そんな事ないです……! 子供扱いしないでください!」

「子供だよ。だからちゃんと大人の僕の言う事をきいて寝なさい」

「うー……っ」

「可愛らしく唸ってもダメだよ。ちゃんと寝なきゃ」

「……分かりました」


 俺はしぶしぶディーンさんに従い、横になる。

 焚火が近くにあって暖をとれているので、寒くはなかった。むしろ丁度いい温度で心地良い程だ。


「ふわぁ……」


 横になると急に眠気が来た。

 色々ありすぎて疲れていたんだろう。

 この調子だとすぐに眠れそうだ。


「……ディーンさん、寝ないんですか?」


 ずっと洞窟の入り口の方を警戒するように監視するディーンさん。

 どう見ても寝る気配がない。


「僕はもう少ししたら寝るよ」

「眠くないんですか?」

「そこまでは、ね。ただ、明日のために体力は回復させたいから僕もちゃんと寝るよ」

「本当ですか?」

「ああ。だから僕の事は気にせずお休み」

「そう言う事なら……」


 俺も大分眠かったし、お言葉に甘えて眠る事にする。

 そこから眠りに落ちるまで、長い時間は必要としなかった。

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