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服従のアルカナドール  作者: ゆらん
第一章
21/110

船出前




 ――翌朝。

 俺達はコビンの港へやって来ていた。

 お見送りにとコビンの管理人であるフィオさんや酒場の店主、海賊と戦っていた冒険者の面々が同じく港に集まっていた。


「もう行っちまうのかい」

「はい。あ、店主さん、ミィのことありがとうございました。おかげで助かりました」

「なに、気にしないでくれ。助けられたのはこっちの方さ。フィオはお前さん達が救ったも同然だからな」


 酒場の店主がそう言うと、フィオさんの近くにいた町の男達が申し訳なさそうにした。

 あの時、管理人さんの家でフィオさんを護衛していた彼らは、シーグルの魔法で全員眠らされたらしい。

 フィオさんはエルフ族だから魔法に対する抵抗力がある。だから、シーグルの魔法で眠らされなかったんだろうとウルリカさんは言っていた。


「冒険者ギルドに登録するという事ですが、ここからなら中央大陸最南端の港町、レネネトにギルドがありますね。そこで冒険者登録を済ませるといいのではないでしょうか」

「情報ありがとう。フィオのいう通りにさせてもらうわ」

「道中お気を付け下さいね。またあの魔法使いみたいな悪い人がちょっかい出してくるかもしれませんし。でも、ウルリカさんとイオさんならきっと大丈夫ですね」

「ええ。心配はいらないわ。というかアタシ達よりむしろあなた達自身を心配するべきじゃないかしら。次こんなことになったらどうしようもないわよ?」

「ウルリカさんのおっしゃるとおりです……。町の守りを強化した方がいいかもしれませんね」

「そうね。万が一が起きてからでは遅いわ」


 ウルリカさんとフィオさんも何やらお話していた。

 町の守りの強化。確かに今回の一件、ウルリカさんがいなかったらまずいことになっていたかもしれない。クラーケンだってウルリカさんが倒したし、海賊達の多くを倒したのもウルリカさんだ。

 俺がやった事といえば海賊2人を倒して、クラーケンに捕まったくらいか。ダメダメだな……。


「イオさん」

「あ、は、はいっ」


 いきなりフィオさんに名前を呼ばれて、ちょっぴり驚いてしまった。


「また、この町に遊びに来てくださいね。それと――」

「へ……!?」


 頬にフィオさんの柔らかい唇の感触が。

 い、いきなりちゅーされてしまった……。


「ふふ、これも私からのお礼です」

「え、ええと、あの……その……」


 こういう時なんて言えばいいんだ。

 ありがとうございますって言うのもなんか変だし……。

 こんなに可愛い子から……ほ、ほっぺにちゅーされて、あわわわわわわわどうしよどうしよどうしよ――


「――ちょっと、なに勝手な事してるのかしらね?」

「あらウルリカさん。いけませんでしたか?」

「いいわけないでしょうが。女が女にちゅーするなんて、変だと思わないの?」

「思いませんね。イオさんにならいくらでも出来ますよ」

「ふん。頬にちゅーくらいで調子にならないでほしいわね。その程度じゃ所詮子供のお遊びだわ」

「言ってくれますね。じゃあ、これならどうです?」

「――え?」


 一瞬だった。

 今度は頬じゃなく唇にフィオさんの唇が重なった。

 心臓が高鳴ってる。

 ……ドキドキドキ。

 まさか口にしてくるとは思ってもいなかった。

 というかいきなりキスしてくるのはウルリカさんくらいのものだと思ってたのに。この世界ではこうも唐突にするのが普通なのだろうか。

 2回目のキスもやっぱり雰囲気のかけらもなかった。

 セカンドキスが……。切ないなぁ。


「な――!?」

「――これならウルリカさんも文句ないでしょう?」

「あ、あなた……やってくれるじゃない」

「ふふん。イオさんにならなんだってやれますよ」

「へえ、ならどちらが上か勝負しようじゃないの」

「いいですよ」


 2人は何やら熱いバトルをおっぱじめそうな雰囲気だ。そのバトルの中心にいるのがどうも俺みたいだな。うん。逃げた方がいい気がしてきた。

 でもどこへ?

 俺の居場所はウルリカさんの隣じゃないか。そのウルリカさんがじわじわとフィオさんと一緒に近づいてきてるんじゃ、逃げ場なんてないじゃないか。


「観念しなさい、イオ」

「イオさん、お覚悟を」


 迫りくる2人。

 アカン。

 このままじゃウルリカさんとフィオさん2人からいいように弄ばれてしまう。冗談じゃない。どっちとも目がマジだ。勝負という口実の元、俺を弄ぶ気だ。


「ホラホラホラホラ」

「さあさあさあさあ」

「ひいいいぃぃぃぃぃ!?」


 船出前、俺は2人の美少女から逃げ回る事となるのだった。

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