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服従のアルカナドール  作者: ゆらん
第三章
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大会二日目の朝




 翌朝。今日は闘技大会二日目だ。残りの8選手がぶつかる。

 といっても、今日はミハエルさんの試合はないので、コロシアムの警戒は【ウルスラグナ】組が中心にあたってくれるらしい。俺達ももちろん協力するつもりだ。色んな人の試合を見てみたいというのもあるにはあるけども。


「さて、と。今日は何か起きるかしらね」


 朝の準備を終えたウルリカさんがそう言った。

 昨日は結局何も起きなかった。相手の規模もまだ判らない状態で警戒し続けるのは結構精神的にくるものがある。いつ、どこで、なにが起きるのか具体的に把握できていない現状では、備えて厳戒態勢でいるしかないのだ。


「ミハエルが言ってた組織ってのも気になるわよね。シーグルとゼルマが絡んでいるでしょうけど、あのレベルの使い手が他にもうじゃうじゃいるとしたらかなり厄介ね」


「さすがにあの人たちと同レベルの人間がたくさんいたら大変なことになりそうです。【ウルスラグナ】が気にしているってことは、それだけの規模なんでしょうけど……」


 そんなやばい組織が暗躍していると思うと、心が休まらないな。

 それに、幻獣化というワード。いったい彼らは何を企んでいるのだろうか。


「大手クランが気にかけているということは、それなりに力のある組織だということ。そしてその組織にアタシの兄弟子が所属している。無関係を貫くのは無理があるのよね。今までも何度かぶつかってるわけだし。ま、そういう敵がいるっていうのも刺激があっていいのかもしれないわね」


「なんというか、さすがウルリカさんです。全く物怖じしないというか」


 自分に絶対の自信があるって感じだ。

 この自信がウルリカさんの強さの秘訣なのかもしれない。


「悩んだって悔やんだって事実は変えられないんだからね。受け入れて、ポジティブに考えといた方が人生楽しいでしょ」


「はは、言う通りだと思います」


 ウルリカさんが言う言葉はきっと正論なんだろう。

 問題は、皆が皆そういう考えが出来ない、もしくは受け入れられずに心が疲弊していくということだ。普通の人は簡単に割り切れるものじゃない。


「おーい、準備できたかい?」


 部屋の外からディーンさんの声が聞こえてきた。


「ええ。今行くわ」


 ウルリカさんはそう応えて、腰を上げる。

 俺も準備の最終確認を終え、ウルリカさんと共に部屋から出た。


「今日も無事に終わるといいね」


「そうですね。なんのアクションもないというのは、それはそれで不安ですけど……」


 動きが読めないというのは、やっぱり心が落ち着かないものである。

 何かが起きて、それに対応している方がわかりやすくていい。

 まあ、世間的には何も起きない方がいいに決まっているけども。


「いや、今日は少し動くわ。ミハエルには警戒しておくよう言われているけど、事前に食い止められるに越したことはないんだから」


「動くって、いったいどういう風にするんだい?」


 ディーンさんは首を捻りながら尋ねた。


「昨日の探知魔法。あれで少し気になることがあったのよ。初日に何もないのなら、こっちから仕掛けてみるのもアリかなって」


「そういうことか。ちなみに気になることっていうのは?」


「探知が引っかかった場所ね。魔法はコロシアム全体を範囲に入れたけど、怪しい魔力的反応の多くがかなり低い場所から検出されたわ」


「低い場所というと、もしかして地下があるとか……?」


「ええ、イオの言うとおりね。恐らくあのコロシアムには地下に空間がある。もしくはこのパークスという都市全体に地下施設があるか。どちらにせよ、その辺を調べてみる価値はありそうかなって思ってる」


「そうですね。もしかしたらその組織っていうのも地下に潜伏しているかもしれませんし……。気になることがあるのならこっちから調べに行く方がいいかもしれませんね」


「そゆこと。イオもわかってきたわね」


 唐突に頭を撫でられ、少しだけ照れてしまう。

 しかし地下の存在か。悪役の暗躍場所にはぴったりだ。


「街の人間なら何か知っているかもしれないね。ということは、聞き込みかな?」


「そうね。問題は、今が闘神祭で外から人が多く来ているってことかしらね。まあでも、冒険者ギルドの人間ならずっとこの街にいるでしょうし、何か知っている可能性は高いわ」


「そうですね。地下に魔物とかでることもあるでしょうし、把握している可能性はありそうです」


 本当に地下があるのなら、だが。

 でも、ウルリカさんの探知魔法が誤検出したとは思えない。

 つまり、高確率であるということだろう。コロシアムのその下か、もしくは街全体の下に。


「てことで、今日はギルドに行くわよ。そこで聞き込みして、その後の行動を決めるわ」


「了解です」


「ああ」


 今日はこちらから動く。

 ウルリカさんの性格上、大人しく待つってのは無理だろうなとは思っていたけど、案の定だったな。まあ、俺もずっと警戒し続けているよりかはマシだ。今日は知り合いの試合もないわけだし、憂いなく行動できる。



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