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9.リンダの憂鬱

「うーーーわぁーーー!!」


 もう頭がパンパンの私はとうとう部屋で叫んでいた。

 第三王子のリオンが何故か毎日毎日会いに来ることに疑問しかないのだ!! バラまで持って!! 何故!! そりゃあ叫びたくもなるわ……ただあと数年で学園に入る、という事はヒロイン登場!! 私になんか見向きもしなくなるでしょう。ヒロインとは出来ればお友達に、と思っていたけれどこれは関わらない方がいいのかもしれないわね。ミント・イェレン……アニメでは物凄く可愛くていい子だった。ただー……私からしてアニメと大きく違うのだからヒロインも分からないしゲームでの攻略対象者達もどういう動きをするか分からない、そもそも王子三人と義弟エイジ以外の攻略対象を知らない。いるのか、いないのかすら知らない。

 それでよく大好きな作品だなんて……と思う人もいるかもしれないけれどゲームが苦手な人間も存在するのだ。興味はー……あったけれど。でも結局やるにしてもやらないにしても死んじゃったからもう二度と出来ないのよね。やりたい事、いっぱいあったのに……ううん!! 違うわね、そう、ここでもやりたい事やらなければならない事、きっとたくさんある。どうせならここでしか出来ない楽しい事もあるはずだし。それにそれに前世ではいなかった可愛い可愛い義弟がいる。義理とはいえ弟だもの、嬉しいわ。でもあまり仲良くしてしまうとヒロインとの恋の邪魔になるかもしれないのよね、うう、悩ましい。あ、それで死ぬ事もあったり……する?? どうするのよリンダー!! エイジを守ったあの日、あの魔法、アレはとんでもないわ。きっとこれから学園での勉強等でもっともっと強くなる、私に適う人は……いなくなるんじゃないかしら。ん?? アニメではそんなシーンなかったわよね、え、ええ、もしかして……今現在のこの世界では私……ラスボスになっている可能性も。


「いーーーやーーー!!」


 アニメでは戦う相手は魔獣しかいなかった。強い魔獣を攻略対象者とヒロインが力を合わせて倒していって好感度を上げていくのよ。まさか、人間がラスボスになる事なんてあるの?? もう何度目か分からないほど考えた『ゲームやっときゃ良かった』が頭に浮かぶ。

 ――ああ、もう寝よう……明日、は……静かに……過ごせる、と……いい……すぅ……。

 眠る前の祈りは効かなかったようだ。


「おはよう、リンダ。はい……受け取って……」


 朝からリオンが来ていた、もちろんバラを持って。


「おはようございます。リオン様、今日は早いですね……」


 溜息をグッと飲み込んだ。


「今日、は……街に一緒に、行きたくて……」

「街?? 二人でですか??」

「……うん」


 デートッ!! 私は前世でもした事ないのだけれどー!! あ、ああ、ちょっと焦ってしまったけれどただの付き添いか何かよね。ふぅ、ビックリした。


「……一応、デート……って事になる、のかな」


 デートだった!!


「でもお父様に許可を取らないといけませんわ」

「……もう、取った」


 あああーっ!! このぼんやりした感じからは予想できない手回しの良さ。当然護衛もつくので二人きりではないけれど二人きりも同然だわ。


「さぁ、早く……」


 手を差し出されて少しドキッとした。


「どうしてそんなに急かしますの??」


 私はリオンの手を取りながらソワソワしている彼に聞いてみる。


「早く、しないと……エイジが来る」

「まぁ、仲間外れですか!?」

「……そんなつもりは、ない。でも今日は……二人がいい」

「っ、わ、分かりました」


 んもおお、恥ずかしい事言うんだから!!


「リンダ義姉さん!! 何処か行くの!?」


「おい、何処へ行く気だ」

「朝からいねーと思ったらやっぱりここか、リオン」


 階段から下りて来たエイジ、正面入り口から歩いてきたエヴァンにデレル。


「はぁーーーーーーっ」


 大きく溜息を吐き頭を抱えるリオン。


「あのぉ、どうします?? リオン様」


 チラリと私を見て首を振るリオン。


「……街へ、行こうと」

「僕も行きます!!」

「へぇ、いいじゃないか。俺も行こう」

「楽しそうだな!! 俺も」

「あ、あはは」


 皆、嬉しそうに行きたいと言う。というより行く事が決まっているかのようだ。決まって……いるんでしょうね。


「……はぁ、分かった……皆で、行こう」


 何か用事があるのかしら?? これって別にデートが目的だった訳じゃないって事よね!! はー、なんだ、驚いちゃったわ。そうよね、たまたま今日は二人の予定にしていただけなんだわ。皆が忙しいと思って。わ、私は暇人だと思われているのかしら……まあ、それくらいで怒ったりしないけれど少し失礼ね!! でも街へは行けるというのに何故リオンは残念そうな顔をしているのかしら。ハッ!! 分かったわ、大人数で行動するのが苦手なのかもしれないわ。なるほど、リオンなら納得だわ。意外と毒舌だし思った事はしっかり発言するけれど大人しい方だものね。


「リオン様、今日は楽しみましょう」

「えっ、あ、ああ……そう、だね」


 私も久しぶりだし何だか楽しくなってきた。楽しみだわ!! 皆で街へ行けるの!!

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