表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

8.王子達~リオン・オールディス~


 リンダの家からの帰りの馬車も僕はなかなか気に入っている。もっと話していたい気持ちもあるけれど次合った時はどんな表情を見せてくれるのだろう、あの可愛らしい声で何を話すのだろうとワクワクするからだ。兄弟仲も悪くないから一緒に行動するのも悪くはない。ただ……こんなに少しの時間でエヴァンもデレルもリンダに興味を持ち始めている。そういうのには敏感な僕だからすぐに気付いた。まだ好きとかではないんだろうけれど……第三王子の僕では厳しいのかな……。

 リオン・オールディス。三つ子の一番下だ。僕は言った通り昔のリンダも嫌いではなかった。ただ婚約者にはなりたくなかった、遠くからリンダが無茶苦茶な事をしているのを見ているのが面白くて楽しかっただけ。失礼だけれど、きっと僕は他人事だから誰かのペットか何かのように思っていたんだろう。でも今は……一番近くで見ていたいと思う。一番近くでその声を聴きたいと思う。一番近くで、一番近くの僕を見て欲しいと思う。どんどん独占欲が湧き上がってくる……こんな気持ちは……初めて。これが恋ってものなのかなぁ。リンダは僕からの婚約話を冗談か何かだと思っているのだろうか。僕はあのお茶会の後正式に申し込んだつもりだったんだけれど……うん。少し傷付くなぁ。今のリンダの前では美しく咲いたバラさえ霞むと思っている。まぁまだ十一歳、焦るような年齢じゃない、と言いたいところだけれど五歳から八歳くらいに婚約するのが普通だろう、貴族であれば。王子である僕達が三人もいて三人とも婚約者がいないのも実は大問題なのだ。そういえばリンダの義弟のエイジにもすでに婚約話がぞくぞくときていると聞いた。エイジは間違いなくリンダに恋をしている、全て断るだろう。ただエイジは養子だ、そんなにずっと断っていられるのだろうか……


「おい、リオン。またリンダの事考えているのか」

「……うん。そうだけど……それが何??」


 デレルに盛大な溜息を吐かれた。


「……何」

「どこがいいんだよ。性格最悪だぞ」

「デレルも……デレルも今はそう、思ってないくせに…」

「なんだと」

「やめておけデレル。リオンも煽るなよ」

「……ん」

「エヴァンもリンダにプレゼント貰った時すげー嬉しそうだったけど??」

「今度は俺につっかかってくるな。ったくデレルは口が悪い」

「……エヴァンも、人の事言えないんじゃないかな……」

「おい、止めてやったのに何だその言いぐさは、リオン」

「……ごめん??」

「なんで疑問形なんだよ。ふざけてんのか」

「今度はエヴァンが喧嘩してどうすんだよ。馬鹿か」

「ばっ、チッ。もういい」


 僕らのこういう会話は全く珍しくない。だいたいいつもこんな感じだ……。


「そもそも……どうして、着いて来るの……」

「そりゃ、まぁ暇だから。デレルもそうだろう??」

「まあ、ね」


 嘘だ。エヴァンは今のところ本音だろうけれどデレルはリンダの何かを確かめに来ているって感じだ。僕の為にというより……リンダが気になって仕方がないような。僕の場合元々興味のあった女性だ、けれど何故デレルは……。


「デレルは何故……リンダが……気になるの」

「おい、リオン!! 話を戻すな!! お前はそういうところがあるよなぁ。空気が読めないのか読まないのか、まったく」

「リオン、俺はリンダの事気にしてなんかいない」

「それは……嘘、だね」

「デレルー。リオンに嘘は通じないだろう」

「あーもう、じゃあリオンとリンダがどうなるのか見に行っているだけだ」

「……嘘」

「エイジが元気か気になってるだけだ!!」

「一番、意味分からない……嘘……」

「プッ、あははっ!! お前ら面白いな」


 むうっと頬を膨らませて話さなくなってしまったデレル。何がそんなに面白いのかエヴァンはずっとお腹を抱えて笑っているし……なんだこの状況。それに僕は空気……読んでいると思うんだけれど。

 それはそうと……そうだな、エイジの事も考えないといけないのか。ずっと傍にいられるのは正直羨ましい。もっと気弱に見えたのにリンダの事となると人が変わったようになる。ずっと笑顔なのも気持ち悪い……いや、決して悪口ではないし嫌ってなどいないけれど。リンダはあくまで義姉弟としてだけれどエイジの事とても大切にしているのが分かる。そういうところも僕は……。矛盾した気持ちを抱えてしまう、僕だけにその愛情をくれたらどんなに幸せだろうと、今更だけれど。どうして今まで放っておいてしまったんだろう?? ただこんな気持ちが生まれたのは今のリンダにだ。おそらくもっと早くにたくさん会っていたとしてもこんな気持ちにはならなかった。それは確信だ。でも僕にだって分からない事はある。リンダが別人のようになった理由、いつそうなったのか、エイジが変えたとも考えにくい。初めてリンダに会った時の未来予想は成長していくにつれてもっと醜悪な、最低な性格になっていくだろうと……思っていた。僕の勘はほぼ当たる。嘘も見破る。昔から人間観察が好きだからついた能力だ。

 謎も多いけれど……だからこそまた明日も……僕はリンダに会いに行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ