7.毎日毎日王子が来てウザいです。
「また……来たんですか……リオン様……それにエヴァン様にデレル様まで……」
王子達のお茶会から二週間、毎日毎日バラを一本持ったリオンがやってくる。そしてたまにこうして三人で来る。もううんざりですわ。エイジは何故だか笑顔を絶やさないけれど……なんか変……大丈夫かしら、心配。ただお父様やお母様はついに婚約者ができるのかと嬉しそうだけれど。本当に困りものだわ。
「あの花瓶に……バラが百本になったら……」
「三か月以上毎日来るおつもりですか!?」
「……ダメ……なの、か??」
「できればご遠慮していただきたいですわ。ふふっ」
「……僕は来たいから、来る、かな……」
「あらぁ、そうですの?? 困りましたわね、というかエヴァン様もデレル様も私の事お嫌いですよね??」
もう駆け引きなんて意味ない事をこの二週間で学んだのでハッキリ聞いてみた。
「あと三年くらいで学園生活が始まるだろう?? ここにいる全員が同い年なんだから先に仲良くなっておくのもいいんじゃねーかと思って」
「エヴァン様、そういう人でしたっけ??」
「俺はちょっとリンダが気になって」
「デレル!! リンダは僕のなんだから……やめてよ……」
「私は誰のものでもありません!!」
「本当にそうですよ!! というか僕の義姉さんですよ!!」
「そうね、私はエイジのお義姉ちゃんよ」
可愛い義弟を抱き締めて頭を撫でていたらリオンに引きはがされる。
「……エイジ、君さぁ……女性として見ているよね?? リンダの事」
「そ、そんな、訳……」
「そんな訳ないじゃない!! エイジは可愛い義弟なのよ!!」
「あーあ。むしろ可哀想だわー、リンダ鈍感すぎだな」
「デレル様、リンダ義姉さんにそんな事言わないで下さい」
「はいはい」
「それにしてもリンダ、本当に変わったよな。ただ成長したからって訳じゃなさそうだ」
「エヴァン様。それについては……お、大人になったのですわっ」
「俺達はまだ子どもの部類に入ると思うが」
「ま、学園に入るまではそうだろうな」
「デレル様まで……」
はぁ~。これで三年間の学園生活が不安で不安で仕方ないわ。ここにヒロインまで現れるなんてどうしたら……お友達になれるかも分からないし。アニメではあーんなにイジメていた訳だし??
「前のお前ならエイジの事いじめていただろう」
ギクリと肩が動く。それはそう。それは……うん、間違いなくそう。
「リンダ義姉さんがそんな事するはずありません」
エイジ~!!
「でもまだ出会って三か月も経っていないだろう?? どうしてそう言える」
「そうだぞ、エヴァンの言う通りだ。まだ気を付けておいた方がいいんじゃないか??」
「……でも、リンダは……昔と違う……それだけは分かる。僕はそういうの外さない……」
リ、リオン怖い。まさか転生者だってバレていないわよね??
「あっ、そうですわ、エヴァン様、コレどうぞ」
「ん?? なんだ」
エヴァンに小さな包みを渡すと不思議そうに、そして訝しげにそれに視線を注いでいる。なんか失礼な反応だわ!!
「この間お三方がお帰りになった後街に行ったんですけれどね、もう!! 本当に!! エヴァン様から目玉をくり抜いたのかと思うほどに――」
「待て待て、グロイ、怖い。何なんだ、開けていいのか??」
「はい、是非」
ソローッと慎重に包みを開いていくエヴァン。何だか……少し可愛い……怖いのかしら。別にただの――
「これは……ループタイか??」
「はい!! カジュアルな物ですがその綺麗な緑色!! まるで本物のエヴァン様の瞳のようで!! ついプレゼントにと買ってしまいましたの」
ぺらぺらしゃべっているとエヴァンが何か言いたげな目で私をがっつり見ていた。
「どうかしましたか?? あ、気に入らなかったら捨ててもらっても……」
「お前、瞳の色の物を贈るのがどんな意味か分かっているのか」
「…………あ」
確かに。アニメでも観たわね。告白みたいなものだわ。
「エヴァン様、それ、返して下さい」
「なっ!? やっぱり分かっていなかったんだな!? でも分かった。これはそういう意味ではないと分かったうえで受け取る……その、ありがとう」
「本命はエヴァンだったのか」
「違います」
「……僕も……リンダから、プレゼント……欲しい」
「あ、機会がありましたら……へへっ。ってエヴァン様?? どうしました?? お顔が真っ赤です!! 風邪とか……」
「違うから放っておけ」
「はぁ……」
まあプレゼントなんてするつもりなかったんだけれど。だって仲良くなったら面倒だし。ただそんなものどうでもよくなるほどエヴァンの瞳そのもので興奮しちゃったのよね。推しグッズ見つけたり!! みたいな感じだったのよ。今の私じゃなく前世の私の血が騒いだというかなんと言いますか……。ちなみにアニメで私が推していたのは……箱推し!! なのに実際こうやって会えているのになんか違う。もっとテンション上がるかと思ったけれどこっちの私の性格なのかしらね……。でも私、前の私は……王子様の中で婚約者になってくれる人がいなかった事に物凄く腹を立てていたと思うんだけれど……好きとかじゃあなかったんだろうな。




