38.高熱と記憶喪失⑦
「あの……皆??」
私が元に戻ってから三日、皆がおかしい。やたらと近くで私の周りを囲んでいるしミントは私の腕をしっかり掴んでいる。リオンもちょくちょく顔を覗き込んでくるからその度にドキリとする。心臓に悪いからやめて欲しいのだけれど……。
「ねぇ、ちょっと?? 聞いていますか??」
「リンダが……心配で心配で……」
「私も、すみません、リンダ様を失いたくないのです」
「いやぁ、まあ、すまん」
「だっていつおかしくなるかと思うとな」
「皆リンダ義姉さんが大好きなんでしょう」
「うん、好き……」
「もう!! リオン様!! エイジもー!!」
でも、皆が笑っている、それは私にとってとても嬉しい事……少し聞いた……変わってしまっていた間の私の事。エイジやミントに暴力をふるっていた事は衝撃的でもあったけれど『やっぱり』という気持ちの方が大きかった……悲しくて悔しくて、それでも側にいてくれた二人には感謝しかない。私を信じてくれたって事よね。
「エイジ、ミント!! ありがとう」
皆への贈り物にはまた内緒で魔力を込めておいた。次また戻るかもしれない恐怖はあるけれどこれでまたなんとかなるといいなと思っての事。
「もちろん、エヴァン様、デレル様、リオン様もありがとうございます!!」
皆、笑顔で応えてくれた。
「そういえばリンダ義姉さん、まだ全属性の魔法使えるの??」
「えっ、ええ、使えるわよ。どうして??」
「変わった時のリンダ義姉さんは闇魔法しか使えなかったんだ……」
「……しかも今のリンダみたいに強くなかったよね……」
ええー。どうしてかしら。転生したから得た能力だとしても身体は同じなんだから魔法も同じように使えたんじゃ……いや、でも……知らなかったら使えないのかしら?? え、でも私も突然使えるようになったんだけれども!?
「全然わからないわ!!」
「……ふっ、あははっ、リンダはやっぱり面白いね」
「リンダ義姉さんらしいよ」
「そんだけ強くてもなんか抜けてるんだよな」
「分かる」
「リンダ様の強さはリンダ様だけの強さです!!」
な、なんだか馬鹿にされている……かも。まぁいいか。オモチャが返ってきて喜ぶ王子様方、子どもかっ!!
「それにしても……怖くない?? エイジ、ミント」
「もう、リンダ義姉さんソレ何回目?? 全然怖くないから!! 今のリンダ義姉さんになら別に叩かれてもいいとすら思っているよ!!」
何言っているの!? 私の可愛い義弟エイジが変態に!! いつから変態に!!
「そうです」
えっ、ミントも!?
「怖い訳ありません。リンダ様は絶対そんな事しないって分かっていますから」
ああ、そういう事ね。良かった。
「……オモチャ……」
「え?? リオン様??」
「そんな事、思ってない……」
「リオン様、どうしていつも私が思っている事が分かるのですか??」
結構、怖い。かなり、怖い。凄く、怖い。
「リオンは誰の事もだいたい分かるんだよ」
「おう、でもリンダの事は特に敏感だよな」
「だって……リンダの事ずっと見ているから……」
前世ではそれを『ストーカー』といいます!! 思えばリオンは昔からそうよね。いつも突然現れたり考えを読まれたり……うん、立派なストーカーだわ。
「ねぇリオン様、ストーカーって知っていますか??」
「……何それ……お菓子??」
お菓子!! 可愛い……リオン可愛いわね。
「何でもないです。ちょっと聞いてみただけですわ」
「リンダ義姉さん、ストーカーって結局何なの??」
「ああ、本当に何でもないのよ。ちょっと聞いた事がある気がしただけよ。ふふふ」
それにしても二ヶ月間も私何やっていたのかしらね、イジメとか悪い事していた事は分かったけれど皆に聞く限り自分は十一歳だったって言っていたらしいし……でも勉強に支障はなかったし生徒会のお仕事もちゃんとこなしていたみたい……記憶はないって言っていたのに学園生活ちゃんと送れていたっていうのは謎なのよね……本当は、本当のリンダは嘘を吐いていた可能性はない?? んー、でも嘘を吐くメリットって何なんだろう。私が思うにアニメで観ていた限り私よりリンダの方がよっぽど頭がいい、性格が悪いくらいでその他は魔法以外は私より全然上だった。
「あの、リンダって本当は記憶があった可能性はないでしょうか??」
「でもそれじゃあ性格が変わった意味が分からないんじゃないか??」
「私も説明しにくいんですけれど……何となくそう思ってしまったんです」
「でもリンダ義姉さんはこの二ヶ月の記憶ないんでしょ」
「ええ、全く」
「……じゃあこの間までのリンダも……ないんじゃない??」
「そっかー、そうですね。考えすぎですよね」
別にもう戻ったんだからそんなに考える事はないんだけれど、もしも記憶が薄っすらでもあったんならエイジやミントをイジメていた理由が少しだけ変わってくるかなって……私が大切にしていたから、前のリンダが大嫌いで嫌悪していた二人を大切にしていた事に腹が立った可能性も……あるのかなぁって。
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