33.高熱と記憶喪失➁
僕が何も言えないでただただリンダ義姉さんを見ていると見下すような、気持ち悪い物でも見るような目で睨みつけられた。同じ顔なのに……こんな顔、見た事ない。こっちが聞きたい……本当にあなたは誰なんですか?? 僕の事は覚えていた、イェレンさんの事は知らなかった、僕が感じた初めの印象と変わった時も確か高熱をだしていた……もう、戻らないの?? それとも戻ったから今のリンダ義姉さんなの?? じゃあ一生このままなの。そんな……。リンダ義姉さん……。
「十五歳……それは見た目も変わりますわねエヴァン様、デレル様、リオン様」
王子様方には優しく話しかけている。誰でもいいからというのは本当だったんだね。
「……戻っちゃった……悲しい。でもリンダの方が苦しいよね」
「思い出したな、昔のリンダ」
「ああ、あの日からのリンダが可愛かったから忘れてた」
「……デレル、やっぱり可愛いって思ってたんだ……」
「え、いや、まぁ」
皆、複雑だよね、そりゃあ。
「何をしているの?? 平民。さっさと出て行きなさいよ、空気が濁るわ」
「なんて事言うんだよリンダ義姉さん!!」
「エイジ様、いいのです。今日は……心配ですが私は部屋へ戻りますね」
「分かったよ」
「エイジ、平民と話さない。それとちゃんとリンダ『様』と呼びなさい」
「え、あ、リンダ義姉さん??」
そう言った瞬間物凄い平手打ちを頬に受けた。驚いたのもあって僕は呆然としたまま尻もちをついていた。
流石に王子様方が怒ってくれたけれどあまり聞いていないようだ。むしろ『この人達何を言っているの??』とでも思っている表情だ。
「リンダ様、すみませんでした」
「それでいいのよ。もう二度と義姉さんだなんて呼ばないで」
「……はい」
その瞬間、いろんなリンダ義姉さんとの思い出が次々脳裏に浮かんできて涙がでそうだった。
「リンダの調子もまだ悪いだろうし今日はもう行こう、な、エイジ」
「エヴァン様……」
「……大丈夫って簡単には言えないけれど……きっとリンダは戻ってくるって、思おう」
「リオン様、はい」
「きついだろうけど今は我慢だ」
「デレル様、ありがとうございます」
「じゃあリンダ、俺達は行くからゆっくりしておくんだぞ」
「……はい、エヴァン様」
医務室を出てから誰も何も言わなかった。ショックを受けているのは僕だけじゃないんだ。しっかりしなくてはと思った。必ずリンダ義姉さんを取り戻す。希望がなくなったわけではないのだから、僕が落胆していても何も変わらない。とりあえずは明日、どうなっているか……。
次の日、僕の少しの期待は砕かれた。とりあえず熱は下がって動けている事は嬉しかったけれど……いや、動けない方が良かったのかな。僕が見たのはリンダ義姉さんがイェレンさんを突き飛ばしているところだった。イェレンさんから声をかけてしまったのだろうか?? 平民と話すなと言われたけれど放っておくなんて出来ない。僕はイェレンさんに駆け寄って倒れ込んでいた彼女を起こしてあげた。
「大丈夫??」
「あ、はい。ありがとうございますエイジ様」
「エイジ、私の言葉を忘れたの?? 一日で忘れるなんて馬鹿なの?? それともまたひっぱたかれたいの?? ねぇエイジ」
「こんなの間違ってるよ!!」
言い終わると同時にまた平手がとんできた。
「黙りなさい。もういいわ、あまりイライラさせないでちょうだい」
そう言ってリンダ義姉さんは去って行った。
「おい、お前等大丈夫かよ」
「エヴァン様……はい、大丈夫です」
僕はデレル様が手を貸してくれて立ち上がった。リオン様も心配そうに僕等を見ている。
「前はもっともっと子どもだったから面白かったけれど今はもう笑えない……あんなリンダはリンダじゃない……でも……この気持ちは、愛してしまった気持ちはどうすればいいの……」
皆、何も言えなかった。リンダ義姉さんを愛しているのは皆同じ。あんなに変わってしまったからといって今までの思い出も何もかも忘れられる訳がないんだから。
「私は……わたしはもうリンダ様に近付く事すら許されないんでしょうか!?」
「ミント、お前は危ないからやめといた方がいいだろうな……」
「とても……寂しいです……うぅっ……」
イェレンさんは苦しそうに泣き出してしまった。二人は出会ったばかりでも本当に仲が良かったから、イェレンさんはリンダ義姉さんに助けてもらった事はあっても危害を加えられる可能性なんて考えてもいなかっただろう。その分ショックが大きいのかな。ま、皆そうだけれどね。
「さて、どうしようかね」
「……何か考えでもあるの、エヴァン……」
「ねーだろ」
「まぁ、ないけど。でもさ、自分の為にも皆の為にも何か考えないといけない状態だろコレ」
「皆さんは、リンダ義姉さんが元に戻ると思いますか??」
「……元に、戻ったんじゃないの……」
「……やっぱり、リオン様もそう思うのですね」
「え、エイジ分かるの?? ……最初から仲良かったと思っていたけれど……」
「僕は初日だけです。それも本当のリンダ義姉さんは分かりません、でもあの日、初めて会ったリンダ義姉さんは今の義姉さんととても雰囲気が似ています」
皆、きっと僕も諦めの気持ちが大きすぎて無表情でその場に立ち尽くしていた。
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