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3.魔獣、倒します。


「まさかエイジがお花好きだったなんてねー」

「うん……でも好きなお花はあそこには無かったから」

「アッカー家??」

「うん、お庭とっても綺麗だったけれど……」

「でもエイジはこのお花が好きなのね。勝手に出てきちゃったけれど怒られるかしら??」

「えっ、怒られちゃうの??」

「見つかったら」

「ごめんなさいリンダ義姉さん……」

「謝らないでよ。私もエイジの好きなお花見たかったし外の空気だってたまには吸わなきゃ!! ね。ふふっ」

「あっ」

「どうしたの??」

「何でも……ない……」


 エイジは真っ赤な顔で俯いてしまった。変な事言っちゃったかなぁ。


「あんなに広いお庭があるのに外の空気もないか」

「え、うん。そうだね。あの、リ、リンダ義姉さん、これ……」

「……お花の……指輪??」

「な、仲良くしてくれて、あ、ありがとう」


 その瞬間、思い出した。大切に持っていた花を奪い取り、踏みつぶし、それだけでは飽き足らずエイジのお腹を何度も何度も蹴った……アニメで観たあの残酷なシーン。記憶が戻らなければきっとそうなっていた。思い出して涙が溢れる。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」

「あ、嫌、だった?? いらないよね。こんな物」

「違うの、エイジ。良かったらエイジがはめてくれる??」

「うん!!」


 あ、また笑った。この笑顔、ずっと見ていたいな。


「はい」

「ありがとう!! すっごく可愛くて綺麗ね」

「あ……あ、あ……リンダね、えさ……」

「どうしたの!? そんなに震えて」

「ま、魔獣が」


 ハッとして振り返るともう近くまで来ているソレに気付く。あれくらいなら……私は闇魔法、一番弱いけれど……


「エイジ、そこの木の後ろに隠れて!!」

「でもリンダ義姉さ――」

「いいから早く!!」

「はいっ」


 エイジの魔法は水。私よりは強いけれどあの怯えよう……昔何かあったのかもしれないし。私が戦わなきゃ!! 絶対に守る!!


「いけ!! 私の闇魔法!! はぁーっ!!」


 えっ、ナニコレ……魔獣を探すもどうやら消し炭になったようだ……魔獣が弱かった?? いや、違う。私が出したものが何かおかしかった……いつもは紫と黒が混ざったようなものがでてくる、しょぼいの。でもさっきは違った、虹色だった……見間違い?? でも……


「リンダ義姉さん……今の……な、に……」


 見られてたー!! それにやっぱり見間違いじゃなかったー!!


「ななな何でもないわよ、ただの闇魔法。弱かったのよ。ラッキーだわ」

「リンダ義姉さん……キレーな()

「え??」

「虹色だよ!! すっごく綺麗!!」


 興奮気味にエイジに言われ、焦って水たまりで確認する……本当だ、何これ?? え?? 本当に何これ。


「あ、あれ?? 戻ってる……」

「本当!? エイジ」

「うん。とっても綺麗だったのに……今の透き通るような紫色も綺麗だけれど」


 頬を紅潮させて嬉しそうに言う義弟が可愛いんですけどー。でも何だったんだろう?? 分からない。もしかして、え、もしかして……転生チート!? まさか、ね。


「ははっ」

「どうしたの??」

「何でもないわよ」

「そう。助けてくれてありがとうリンダ義姉さん」

「義弟を守るなんて当たり前でしょう」

「んーん。僕、これからは守れるようになる!! リンダ義姉さんを!!」

「ふふっ、ありがとう」


 とりあえずは良かったけれどこれから魔法を使う時は気を付けないといけないわね。闇魔法だけ出す事とかこの先出来るのかしら……練習、するしかないわね。というかあの虹色、まさかだけど全属性じゃ……ないわよねぇぇぇ!? いやあああああ!! 目立つのは良くないわ!! 強くはなりたいけれどあまり人には知られたくないような魔法な気がする。気を付けよう……。

 それから私は闇魔法のみをだせるように一人でこっそり森へと毎日足を運んだ。何度も魔法をだしてやっぱりとは思ったけれどこれは転生した時にもらえるボーナス的なもの……どうして魔法なの!? 乙女ゲームなんですけれど!? メインは恋愛でしょう!? あ、待って、でももし死にそうになったら魔法を使って逃げ……られる!! もしかしてその為のボーナス……なるほど、それなら少しは納得できるわ。という事は……やっぱり私って死ぬキャラのままって事ね。


「ひっどーーーい!!」


 それにしてもこの強すぎる魔法は問題だわ。いや、知られると、ってだけでこの能力自体は必要だと気付いたので大切にしていこう。虹色の魔法はやっぱり全属性、闇魔法だけを出せるようになっておかないと学園に入った時困るのは私。実験体にされてあんな事こんな事……


「あわわわわわわ」


 焦った私はしょっちゅう門限を破り何度も叱られた。


「リンダ義姉さん」

「どうしたの、エイジ」

「お昼まで僕と遊んだ後いつも何処へいっているの??」

「え、あ……寂しい??」

「ちっ、違うよ。寂しくなんて!!」


 あー、なんて事リンダ。可愛い義弟にこんな寂しそうな顔させるなんて。許されないわ。

 それからの私は森へ行く時間をかなり短くした事は言うまでもない。

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