29.想いは目に見えない
僕の義姉さんは鈍感だと思う。鈍感……すぎると思う。僕だけじゃない、リンダ義姉さんを愛しているのは。エヴァン様にデレル様……それに一番怖いリオン様。リオン様は自分の気持ちが分かっているだけじゃなくしっかりリンダ義姉さんに伝えている。でもどうしてだろう……リンダ義姉さんは自分をオモチャだと思って皆が遊んでいると思い込んでいる。どうして……どうしてそう思うのだろうか。
「エイジっ」
「リンダ義姉さん!!」
「今日は王子様方は忙しいみたいなの。お休みだし……一緒に遊びましょう!!」
やった、久しぶりすぎる……義姉さんと二人きりなんて。
「ミントも用事があるんですって」
「そう……」
イェレンさんか。彼女もリンダ義姉さんの事すごく好き、だよね。気を付けないと!!
「それでリンダ義姉さん、今日は何するの??」
「んー、特に考えてはいなかったけれど、エイジ何かしたい事ある??」
リンダ義姉さんとなら何でも楽しい。しかも二人きり。
「じゃあお茶にしない??」
「いいけれど、お茶でいいの??」
「いいんだ、リンダ義姉さんと二人なんて久しぶりだし二人でお茶したいなって」
「分かったわ!! ベルに準備してもらいましょう」
お茶会が始まってリンダ義姉さんはすっごく楽しそうに話をしたり聞いたりしてくれた。その笑顔を見るだけで元気が出る。
「ねぇ、エイジ」
「うん??」
「エイジはミントの事どう思っているの??」
「イェレンさん……良い子だなって思うけれど、どうして」
「いえね、ミントって本当に性格も良くっておまけに美少女じゃない!? 皆はどう思っているのかしらって」
「リンダ義姉さんは自分がどう思われているかは気にならないの??」
またイェレンさんの話、リンダ義姉さんはイェレンさんの事、というか皆の気持ちをよく確認している。ただ、嫉妬しているとかそんなんじゃなく知っておかなければいけないとリンダ義姉さんは考えているように見える。他の女性の話はあまりしないのにどうして皆がイェレンさんの事好きになるって思っているんだろう。好きといっても愛しているという意味の好き、だ。
「私ー?? 私は皆のオモチャだから、あまり気にならないかしらね」
違う、オモチャだなんて思っている人はいない。でもリンダ義姉さんはいろんな意味で面白いから……皆を楽しませるからそう思うのかな。リンダ義姉さんが話すだけで、笑うだけで皆元気をもらえているんだ、僕もその一人。
「リンダ義姉さんはオモチャ、だなんて嫌じゃないの??」
「えー、まぁ初めは面倒臭い事もあったから嫌だったなぁ、なんでこんなに気に入られたのかしら、オモチャとして。って思っていた時期もあるわね」
「へぇ、リンダ義姉さんが……」
「だってエヴァン様もデレル様もリオン様も皆『婚約しよ~』ってかるーーーく言ってくるのよ。一応王子だし返事に困るじゃない。あ、リオン様は結構ちゃんとしていたけれど、まぁ遊んでいるんでしょ」
「い、一応って……。でも誰も婚約者いないからね……本気、だったらどうするの。誰かを選ぶの??」
「えー……考えた事なかったわ」
とぼけている様子もないし……本気で言っているんだろうな……はぁ。
「もしも、もしも僕が婚約者だったらリンダ義姉さんはどう思う」
「えー……ずっとエイジといられるなら嬉しいわ」
それは恋なんかじゃあない。それくらい分かるよ。リンダ義姉さんはずっと僕を大切にしてくれているから……でも僕の気持ちはリンダ義姉さんのソレとは違う。
「そう、ありがとうリンダ義姉さん」
「エイジも嬉しい??」
「そりゃあそうだよ。リンダ義姉さんとずっと一緒なんて」
僕等を見ても皆微笑ましい義姉弟だって目をしている。何故だか分からないけれどリンダ義姉さんには物凄く悪い噂があった。使用人達も初めはリンダ義姉さんに怯えている様子だったし、僕が公爵家に来てしばらく経ってからかなだんだん屋敷の空気が変わり始めたのは……初対面の時のリンダ義姉さんとは違うんだ、きっと。自分でも変な事考えているって分かっているけれど噂の酷さから、なくはないかなって思ってしまうんだ。
「エイジは本当に可愛いわね~大好きよエイジ」
分かっている!! でも!! 愛する人に大好き何て言われたら嬉しくて、でも悲しくて……
「この歳になって可愛いはないでしょ、リンダ義姉さん」
「へへっ、ごめんなさいエイジ」
「リンダ義姉さんはいつも僕を子ども扱いするけれど同い年だからね??」
「私のお誕生日は四月四日!! エイジのお誕生日は一月二十日!! 私の方が年上だわ」
「そんな事言ったらエヴァン様もデレル様もリオン様も年下じゃないか……」
「ま、まぁそうなるわね……駄目かしら??」
真剣に考えている……可愛いのはリンダ義姉さんの方だ。でも例えそんな事を言っても周りにもリンダ義姉さんを愛おしいと思っている人はたくさんいる。恋し、愛し、可愛く思い……誰の気持ちも届かない。リンダ義姉さんには、届かないんだ。
想いは目に見えない……。




