2.夢じゃなかっただなんて
ん、ん~……。まぶ、しい。
「あーっ!! 遅刻!?」
ん、んん?? どこだここ。私の部屋、うん、それは分かる分かってはいるけれど私の部屋じゃない。頭がおかしくなった訳じゃない、と思うんだけれど……。鉄骨があっちで高熱がこっち、で、今こっちにいるという事は……やっぱり死んだんだわ。こっちが現実なのね。よし、受け入れる事が出来たのならやる事はひとつ、今後の行動ー!! だって、だってだって悪役令嬢リンダはアニメではラスト殺されるのよ!! ゲームでは知らないけれど一番人気のあるルートがアニメ化されたって知ってる。だぁぁぁっ!! 本当にゲームしておけば良かったー!! こんな事になるなんて思わないじゃない。誰が思うの?? 私のせいじゃないでしょう?? そもそも私はゲームあまりやらないのよ……。と、とにかく整理しましょう!! 私は公爵家一人娘、悪役令嬢リンダ・アッカー。一昨日来たらしい義弟エイジ・アッカー。子どもの頃婚約者になりそうになった王子様が三人いたはず……第一王子エヴァン・オールディス、第二王子デレル・オールディス、第三王子リオン・オールディス。なんと三つ子だ。確か魔法属性は……エヴァンが風、デレルが炎、リオンが氷。ついでに義弟エイジが水、私、リンダは闇、今後出てくるヒロインは光……だったわね。レア度はこの順番通り、風、炎、氷、水、闇、だ。あ、光は一番上、つまり一番レアだ。私は一番レア度の低い闇属性。この世界では十五歳から学園に通うことになっている。そこで魔法とはなんとやら、使い方等を習うのだ。ちなみに貴族と平民では通う学園が違うのだが炎以上の属性を持っていれば貴族と同じ学園に通うことになっている。よくある話だ!! ゲームやアニメでは!! ちなみにヒロインは確かミント・イェレン、光属性なので当然私と同じ学園である、そしていじめる……あと四年。私はいじめないけれどどうなるかなんて分からない。んー、そういえば王子達は三つ子なのに性格が全然違うのよねーそこがファン心理を掴んだというかなんというか……私もそうだったし。そうそう、そしてあまりにも性格や評判が悪い公爵令嬢とは婚約までいかなかったのよね、確か~。つまり、私。笑っちゃうわね本当に……。
「あー、もう頭痛くなってきた!!」
そうよ、エイジと遊ぼう!! まだいじめてなかったから遊んでくれるとは思うんだけれど、あ、朝食の時に聞いてみよう。その時ちょうど私の朝の支度をしてくれる為にメイドが二人ノックをしてから入って来た。
「お、お嬢様すみません……あの……桃色のドレスが本日用意出来ませんでした」
そのメイドは泣きそうで震えていた。ああ、そういえば私が言ったのね。明日は必ず桃色を用意『しなさい』と。
「あー、えっと、大丈夫よ。顔を上げて」
「えっ、あの、リンダお嬢様……クビでは……」
まぁ、前のリンダなら確実にそうね!!
「気にしないで。ソレ、用意してくれたの?? ありがとうとっても綺麗なドレスね」
「はい、はい、ありがとうございます」
涙を零したメイドがとっても嬉しそうな笑顔になった。良かった。
準備を終えて朝食の部屋へ向かう時エイジに会った。
「エーイージー!! 朝食が終わったら遊びましょう」
「え、あ、はい……」
うーん。怖がらせているのかしら?? まだ慣れてないだけ??
朝食を終えて義弟エイジに何して遊ぶか聞いてみた。エイジの好きな事知っておきたいものね。
「なんでも……」
「ダーメ!! エイジが決めるの」
「リンダ様は何が好きなんですか」
「エイジー。普通に話して、それに義姉さんでしょう~リンダでもいいのに」
「あ、えっと、な、何が好きなの?? リンダ義姉さん」
「二人で遊ぶのならきっとなんでも楽しいわよ」
「僕も、そう思う」
その時、初めてエイジの笑顔を見た。
「かっ、かっ、かっ、可愛いいいいい!!」
その愛らしさについ抱き締めてしまった。
「リ、リリリリリリンダ義姉さん!?」
「あ、ごめんなさい。可愛くてつい……」
「もう……」
赤くなって頬を膨らませた義弟がまた可愛くて再度抱き締めて怒られるのだった。
前世では一人っ子だったから兄弟姉妹がいるお友達が羨ましいと思う事もあった。ただ親の愛を独り占め出来ていた事は幸せだったのだと思う。一人っ子だからって一人ぼっちな訳じゃないから……でもこうして義弟ができてしまったら、できて、しまったら!!
「エイジ、私の義弟になってくれて、家族になってくれてありがとう」
「ど、どうしたの。改まって……それにお礼を言いたいのは僕の方で……」
「私の事……心から信じてくれるの??」
「あ……」
やっぱり、悪い噂は聞いていたのね。そもそも初日は本当に演技だったし。前世の私は死んでしまったけれどそのおかげで義弟、エイジを守る事ができた。画面の中のエイジを可哀想だと涙して見ていたあの頃とは違う!!
「私はたしかに悪い事もしてきたし良い子ではないわ。でもあなたの事を大切に想う気持ちは本当だから、ゆっくり信じてくれれば嬉しいわ」
「うん……ありがとうリンダ義姉さん」
評価などいただけるととても嬉しいです。




