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1.不運な終わり、そして始まり。

読んで下さりありがとうございます。


 あーあ、大好きなアニメ『王子様は愛したい』の限定グッズ買えなかったー!! まぁ?? 私が赤点とって補習していたからなんだけどー。はぁーっ、せっかく17歳のお誕生日におこずか……い、えっ!? 嘘!!ヤバッ!!


「危ない!!」


 突然目の前にボールが転がってきたと思ったら子どもが駆けて来て……工事中の現場に置いてあった鉄骨が倒れてきたのだ。きっともともと不安定だった所に運悪くボールが当たってしまったのだろう。助けなきゃとかそんな事を考えている間もなく身体は動いていた。あんなに小さな子、下敷きになんてなったら!! 私が覚えているのはそこまでだ……。

 あの子……大丈夫……ん?? 何だか身体が……だるい、暑い……いや、熱い。ということは私は生きているのね。鉄骨の下敷きになって怪我をしたのかしら。


「リンダ、リンダ!! 返事をして……目を覚まして」

「ミーシャ、お医者様にも診てもらったんだから絶対に大丈夫だ」


 何……リンダ?? ミーシャ?? 外国の人が近くにいるのかな……。アレぇ?? でも私英語とか苦手なんだけれど、なんで分かるの?? なんだか身体に違和感……と思った瞬間波のように押し寄せてきた記憶。リンダ!! ガバリと起き上がった私はベッドにいた、そしてその傍らには流れてきた記憶によると母、ミーシャ、そして父ブレナン、義弟エイジ……そしてそして私は公爵家一人娘リンダ!! えーと何だ何だぁ、落ち着くのよ私ー。


「リンダ!! 良かった!!」

「お、父さ、ま……」


 なんだか頭がふわふわするわ。でも分かる、ここは私が大好きだったアニメ『王子様は愛したい』の世界なんだ!! 伊達に異世界ものばかり観ていた訳じゃないのよ。え、でも流石に夢よね?? おかしいじゃない、本当にそんな事がある訳ないじゃない。でもぎゅっと握られている手の感触、温かさにここは現実なんじゃないかとだんだん思えてくる、私、死んだ?? 高校生で死んだー!?


「リンダ、分かる?? あなたすごい高熱にうなされていたのよ」

「ああ、でもまだ熱いな……」


 父、ブレナンが私、リンダのおでこに触れて心配そうに呟く。あれ……何だか、手が小さい?? 私今何歳なのかしら。不思議に思いエイジに目をやる。エイジは義弟とはいえ同い年だからだ。この感じは……エイジが養子に来たばかりの頃!! じゃあ今私は十一歳……の可能性が高いわね。っていうか私って悪役令嬢!! どうせならヒロインかいっそモブに転生しなさいよ!! ハッ!! でも義弟への意地悪行為は防げている!! 私はそんな事しない。アニメでは相当酷くいじめていた……大人しくて可愛い義弟エイジ。たしか……えっと……メインキャラなのにすっごく地味で全然しゃべらないキャラだったわね。私のいじめのせいで!! でもヒロインと出会って変わっていくのよね~。そういえばあのアニメって乙女ゲームがアニメ化したものなのよねー……ああー……やってしまっているわね。詰んだ?? いや!! アニメの知識さえあれば乗り越えられる!! よね。


「大丈夫ですわ、お父様、お母様」

「良かったわ、ううっ……」

「エイジもそんな所にいないでこっち来て、ほら、お顔を見せて」


 まだイジメてませんようにと祈りながら隅っこにいる義弟エイジに話しかけてみた。すると遠慮気味にだけれど私の所へ来てくれた。よ、良かった!! これ公爵家に来たばっかりだわ。


「だ、大丈夫ですか、そ、その、リンダ様……」

「ええ、クスッ」

「どうされましたか!?」

「義姉弟でしょう、リンダでいいわ」

「えっ、いえっ、そんな」


 な、な、なにこの子!! 可愛いーっ!! リンダは何故こんなに可愛い子をイジメていたの!?


「ね、エイジ」

「あ、は、はい……」

「呼んでみて!!」

「えっ、と、その、リン、ダ……義姉さん」

「ふふっ。可愛い。リンダでいいのに」

「かっからかわれているのですか……」

「あ、気分を悪くしたのならごめんなさい。そんなつもりはないの本当に可愛くてつい、ね」

「そう、ですか……」


 真っ赤な顔でもじもじしている。本当に可愛すぎて違う意味でイジメちゃいそうだわ!!


「昨日の今日でもう仲良くなったのかい??」


 昨日!? あっぶなーい。初日は仲良くするフリ……をしていたものね、リンダ……。


「ええ、お父様、仲良しになれればと思っておりますわ」

「あ、ありがとう、ございます」

「それは良かった。でもリンダ、今日はもう寝なさい。まだ熱があるのだから」


 そういわれてみれば座っているのもやっとだわ。もう限界かも。起きたら……全部……夢……なんだろうなぁ。


「おやすみなさい、お父様、お母様、エイジ」


 私はベッドに潜り込んで聞こえたのか分からない挨拶をしてからすぐに意識を手放した。

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