母の犯した罪
週刊誌の取材班がクリスティーナに近付きます。そして写真を撮るだけでなく、マイクを近づけました。
「クリスティーナさん、どうして娘がいるのにも関わらず、
王子様を殺そうとしたのですか?」
「クリスティーナさん、お答えください。」
クリスティーナはマスコミの質問に答えることはできませんでした。逮捕される直前にミルクがクリスティーナに近づきました。
クリスティーナにミルクは近づきます。そしてミルクを抱きしめるのでした。クリスティーナは、ミルクに言います。
「ミルク、ごめんね。私は待ってるから。」
「ママ行かないで、ママが行っちゃうなんて、私寂しいよ。」
「大丈夫、ママはきっと戻ってくるから、だから、待ってて。ミルク。」
ミルクは逮捕されパトカーに連れて行かれるクリスティーナを見て泣き続けました。自分が大好きでした。母親が居なくなってしまう。
それも罪を犯した母親であってもミルクにとって大好きな母なのです。クリスティーナはそのままダイスーン警察署へと連れて行かれました。ミルクはルドルフへ詰め寄りました。
「王子様なんでしょう!魔法使いなんでしょ!ねえ、ママを連れて行かないで!ママを返してよ!!うわぁぁぁぁ!!!」
ミルクは泣き続けました。そんなミルクにルドルフは慰めの言葉を掛けてあげようとしましたが、彼の口から出たのは冷気を混ぜたような冷たくも苦しい言葉だったのです。
「いくら私が魔法使いでも、罪を犯したものを法は許さない。クリスティーナは法を犯した。」
叔母のネコのラウラに連れられてミルクは家に帰りました。
クリスティーナに代わり、ラウラがクリスティーナの面倒を見なければいけません。ラウラはミルクに声をかけました。
「まさか、お姉さんが逮捕されちゃうなんてね。最低だよ。娘を置いて、居なくなって。これから私はどうすれば良いんだい?」
「ママはいつ戻ってくるの?」
「ミルク、ママは、きっとそのうち戻って来るわよ。」
家には、既に病気で死亡したミルクの父の写真がありました。ネコの父こそオペラ座の怪人でファントムを演じたルードヴィヒだったのです。ルードヴィヒはファントム役でブレイクをしました。ミルクは2年前にルードヴィヒとクリスティーナの演技を見てきました。
2人は舞台俳優として共演した舞台仲間でした。
ミルクは初めて見た演技は、母親のクリスティーヌの迫真迫る演技でした。クリスティーヌとクリスティーナ、似ているようで似ていない。ルードヴィヒに抱っこされ観客席で見た母親の美しい歌声を聴き何でこんなに凄いのだろうと感動。
ルードヴィヒは言いました。
「ミルク、ママの歌声は美しいだろう。歌声だけじゃない、クリスティーヌはオペラ座の怪人が恋をしてしまう歌姫なんだ。いつかミルクはママのようなそんな歌手になりたいと思わないかい?」
「ファントムが恋をしちゃうほど美して魅力のあるヒロインなのに、どうしてその声は悲しそうなの?ママが歌っている歌はとても悲しい。」
「悲しい?ミルクにはそう聞こえるかい?ミルクは豊かな感性を持っているね。きっとパパを愛してやまないのかな?」
別の公演日にルードヴィヒの演技を聴いたクリスティーナはその演技を見てこう言いました。ルードヴィヒの低い歌声がとても
「ファントムを演じる事の出来る演者は、ルードヴィヒだけ。他の役者の演じるファントムに魅力は感じられない。
私が選んだ最高の役者なのよ。」
ミルクはベッドで泣いていました。その時ミルクの家に祖母がやって来たのです。祖母のバーベルティーナは、ミルクが寝ているベッドの方にやって来ると、ミルクに声を掛けました。
「ミルクちゃん、大変だったね!おばあちゃんがいるから、ミルクちゃんは1人じゃないよ。」
「おばあちゃん、ママが逮捕されちゃった。ママは、きっと戻ってくるよね。」
一方その頃、取り調べ室でクリスティーナは聞き込みをされています。ダイスーン警察のアザラシの刑事が、クリスティーナを問い詰めます。
「何故、ルドルフ王子に毒を持ったのです?ルドルフ王子は死ぬ寸前だったのですよ。」
「あの王子は私を愛の場に誘おうとした。私には既に亡き夫がいました。その夫への未練を捨てきれず、私を求めようとしたルドルフ王子を邪魔に感じてしまったのです。」
「クリスティーナは犯罪者ですよ。あの者を許す訳には!」
「私の命令です。ミルクにはクリスティーナが必要なんだ。」
朝、ミルクが幼稚園に行くためにドアを開けると雪が降る中クリスティーナが立っていました。
「ママ!!!!」
「ミルク、ごめんね!!私が悪かったの!私が、ずっと側にいてあげるから!!」
しかしそれは幻想でした。ミルクの前にクリスティーナの姿はありませんでした。ラウラはミルクを車に乗せてダイスーン幼稚園まで送りに向かいます。幼稚園にはいつも通り変わりなく通いますがミルクの表情には活気がなかったのです。
園児達が登校してきます。デルフィーネ先生は挨拶をしました。
「おはようミルクちゃん!ママは一緒じゃないのね?」
「おはよう先生。うん、ママは今旅行に行っちゃったんだよ。」
何気なく普段と変わらない日常が繰り広げられます。いつも通り幼稚園の授業があり、休み時間になると、ミルクはいつも通り子供達と遊び始めます。
ダイスーン幼稚園の園児100人近くが集まると園庭で雪合戦をし始めました。その中には沢山の友達に囲まれながら遊ぶミルクとルーナの姿がありました。だがルーナはミルクが元気がないことに気がつきました。
「ミルクちゃん、元気がないね。何かあった。」
「ううん、何でもないよ。」
クリスティーナがいなくなってもいつもと変わらない日常が続きます。ミルクは母親の帰りを待ち続けなければいけません。
ダイスーンを後にしたルドルフは心残りでした。母親を失ったミルクの事が心配であったのですが、だが母の犯した罪にミルクら家族は向き合っていかなければならないという現実が待っていました。
「ルドルフ様、クリスティーナを待ち続けなければならない、あの娘は何とも可哀想というか。」
「大丈夫だ。私は死んだわけじゃない。いずれクリスティーナは解放される。その時が来るまでじっと待ち続けるさ。」
芸術の街ダイスーンで起きた騒動。ルドルフにとってはこれも旅の一部に過ぎません。次の街で起きる新たな試練に向けて。そんな中、ルドルフを乗せた馬車の前にあの王女が現れたのです。
「ルドルフ様、あのお方、ルドルフ様の命を助けてくれたクルース様ですよ。」
「クルース様、一体どうされたのですか?」
イイズナの姫であるクルースはルドルフに声をかけます。
彼女の声は活気に溢れています。
「ルドルフ様、私を旅に連れて行ってくださいますか?」
「私の旅についてくると?良いですけど!
クルース様も旅がお好きなのですね。どこまで?」
「ネーデルランドまで!」
これがクルースとの出会いでした。
次は風車の街であるネーデルランドを目指します。




