婚約破棄の裏側では
後継者変更に伴い、兄は領地へ。
嫡女となった私は婚約解消。
皇女様との婚約解消により、侯爵家へのお咎めはなかった。だが、人の口は閉じられない。
内容までは分からなくとも、兄の失態による婚約解消であることは明白である。
そんな家に近づきたいわけもなく。
父にも母にも社交シーズンになっても、招待状が届かない。あったとしても、儀礼的なもののみ。
私も後継者教育の詰め込みで忙しく、時間もない。
我が侯爵家は社交界からずいぶん遠ざかっていた。
もちろん、ただの婚約解消であれば母も頑張ったのであろうが相手は皇女様である。大人しくするしかなかったのだ。
そんな私に新しい縁談などあろう筈がない。
あったとしても、格下の家からさも偉そうな申し入れのみ。
そこまでするつもりもない。
領地経営が落ち着いてから考えよう。そう思って四年。四年経ってしまった。
そして、未だに婚約することができていない。
そのことにようやく兄は気がついたのだろう。
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「泣かないで、お兄様。」
こんなに反省している兄にこれ以上、何が言えるのだろう。この日は、できあがったパンを持ってお祖父様の別邸へ兄と向かった。
別邸へ向かう途中、これまでの話を兄とした。
兄は相当お祖父様に鍛えられたようで、心だけでなく身体までガッシリとしていた。
良かった。
お兄様、変わってくれて………
マジで、良かったよ。また何かやらかしたら今度こそ庇えないからさぁ。
いくら仲良くしてこなかったとはいえ、家族、だからね。これ以上、ツライの嫌だからさあ。
お兄様の顔見たら。
うん。
もう、いろいろ良いからって
そう思えたよ。
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