前を向いて
先へと
ここにきて、前世の記憶を活かすことができた。
私は高校卒業後、地方の小さな金融機関で働いていた。大したことはできないが、お金の流れを把握して無駄を省くことはできる。
領地経営の学習の実地訓練として、早速領地に関する資料を取り寄せた。
資料の説明のため、領地を任せている官吏も呼びよせ話を聞いた。オランジェット家の主な農地で作られているのは小麦。案の定、収穫量は落ちている。
これを何とかするため、土壌の改善を提案。
また、連作障害を回避するために合間にクローバーを植える農地を作るように話をした。
クローバーならばそのまま農地にすき込んでしまえば良かったはず。これくらいの手間ならば問題ないそうだ。
この時、私は15歳。
ここからがはじまりである。
オランジェット家の小麦はそのまま輸出されている。これも領地で加工して、輸出していきたい。
日持ちするものはまだ難しいかもしれないので、はじめは自領のみを対象に。そして、隣の領地へと広げたい。
そして、土壌改良とクローバーによる連作障害改善が認められ、これによりこの先の小麦の収穫量が安定する。
ここまでで、三年かかった。
長かった。本当に。
これから、やっと加工の提案のはじまりである。
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この間に領地経営の基礎を学び、嫡女としての後継教育を受け、小麦をパンにするための酵母作りを行ってきた。
私は、18歳になっていた。
酵母作りに関しては、貧乏生活で良かったと言うしかない。果物からの酵母作りを覚えていて良かった。
もちろん、苦労したが…
だって、美味しいパンが食べたいんだもん。
チートはないです




