記憶の整理
あの、朝
流れ込んでくるたくさんの記憶。
幼少期
私には父がいなかった。
母と二人、貧しい生活を送っていた。
母はいつも忙しく働き、同じアパートに住むおばちゃんやおじいちゃんたちが私と遊んでくれていた。本当に優しくて厳しい、そんな田舎だった。
それでも、母との思い出はある。
母の匂い、抱きしめてくれた感触、作ってくれたちょっと不格好なお菓子。
高校生になり、はじめたバイト。初めてのバイト代で母には財布を、近所の人たちにはパンを買って配った。
母も近所の人たちも、笑いながら泣いていた。
小さな、とても小さな幸せがそこにはあった。
高校を卒業して就職が決まり、母が忙しく働かなくて良くなった。二人で、料理を作ったり買い物に行ったりそんな生活をしていた。
もちろん初めての給料では母に鞄を、近所のおばちゃんたちには菓子折を配って回った。でも、その頃には近所のおじいちゃんたちはもういなかった。
貧乏アパートに空室が増えていく。
私はそこまで賢くはないけど、真面目に努力するとの評価を受けて少しずつ就職先での立場はあがっていった。
学ぶこと、知るとこは嫌いではなかった。
そして、生きることに精一杯で、恋愛には興味なかった。
それでもこれから、もっと生きていれば 違ったのかもしれない。
❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁
ある、朝方
下から突き上げるような衝撃を感じた。
そのままアパートが激しく揺れて、母に声をかける間もなく、私の意識は途切れている。
嗚呼、古いアパートだったから…
もう少し親孝行、すれば良かった
ごめんなさい、お母さん




