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はじまりは、婚約破棄

とても優しい婚約者でした。

「貴方との婚約を解消します。」

そう、告げたとき私の身体を突然衝撃がおそった。まるで頭を後ろからハンマーで殴られたよう…

え、待って

ハンマーって何？

その衝撃で、私の瞳から涙が一筋流れた。これは哀しみの涙ではない。そう、冷静に判断した。

そして、急な衝撃と脳裏に襲いかかる記憶に圧倒されながらも私は今の状況を収めるために頭をフル回転させはじめた。

今、私は二年前に結んだ婚約を解消すべく婚約者との話し合いを行っている。

侯爵家の娘にふさわしい公爵家嫡男である私の婚約者。まだ、恋をしていたわけではない。でも二年間同じ道先へ向かって努力していたのだ。

それがこんな形で終わってしまうなんて。

本当に涙を流しても不思議ではない状況だ。

目の前の彼も沈痛な面持ちで座っている。

この、絶望のために私の記憶が戻ってきたのかもしれない。

「本当に申し訳ありません。こちらの一方的な事情により婚約の継続ができません。詳しくは…」

そこで、彼が手を挙げて私の発言を遮ってくれた。

そして、私を見て哀しく微笑んだ。

「いいんだ。もう、分かっている。」

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