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神凪の鳥  作者: 紫焔
遠出の依頼
43/112

幕間

カズヤがこちらの世界に来てからの経緯と、現状に対する心境を語ってもらいました。

なんか、急に一人称ッぽい何かになってますが箸休め程度と言う事で読んでくださると大変嬉しいです。

また、文章が短くてすいません。

 気が付くと、学生服を着たままで草原に立っていた。

 それが、この世界での始まりの記憶だった。

 来年から受験だと言う事で勉強漬けの毎日だったのに、ある日突然言葉も通じない世界に放り出されたのだ。

 最初こそ、映画やアニメ、小説とかで見た異世界に召喚された勇者や王様と言う設定が浮かびはしゃいでいた。

 だが、いつまで経っても誰一人迎えに来なかった。

 草原の真ん中で、食べ物も飲み物も持っていない状態。

 直ぐに死んでしまうと悟り、迎えが来たら文句を言ってやろうと思い移動を始めた。

 しかし、いくら歩いても人っ子ひとりいなかった。

 遠くに見えるのは森の木で、反対側には果ての無い草原。

 食べ物を求めて森に入り、そこで初めて命の危機に出くわした。

 沢山の狼に囲まれ、足が委縮して動けなくなる。

 それが普通の人間だ。

 しかし、この時運よく魔法使いの爺さんに助けられた。

 それが、オレがこの世界の言葉を知るようになったきっかけだった。

 そして運が良いっていうのは、この時だけのことじゃないのも爺さんの所にいて知った。

 異世界人が時折この世界に現れるらしい。

 そして、大半の異世界人は言葉が分からないまま魔物や獣に襲われて殺されるか、奴隷商人に捕まって売り飛ばされるらしい。

 翻訳の魔法をかけてもらい、話をした際にそう聞かされた。

 夢見がちだったオレは愕然として、そして現実を突き付けられて暫く腐っていたんだ。

 だけど、そんなオレを見かねた爺さんがまず言葉を教えようとしてくれた。

 翻訳の魔法って、結構疲れるらしいからな。

 それで、渋々言葉を習い、字を習い、ついでに共通語だけじゃなく各国の言葉を習って行った。

 何せ、自称目が悪い魔法使いの爺さんだ、手紙を俺に読ませて手伝わせるとか言い出すんだもんな。

 まぁ、あの時は多分、爺さんなりの優しさだったんだろう。

 今はそう思う。

 外の人間に触れて、立ち直って欲しかったんだろうな。

 爺さんはオレが狼に襲われた森の近くにある村の先生をやっていたらしく、文字の読み書きや簡単な計算とかを教えていたらしい。

 素質のある子を見つけたら魔法の基礎を教え、推薦状を持たせて塔の学院に行かせていたらしい。

 その時に、オレには魔法の才能がないとはっきり言われたのが結構きつかったな。

 戦士の素養を見るとか言うので練習用の剣も振って見たけど、その時は全然ダメで、持ち上げて二回か三回振るだけで精いっぱいだった。

 そりゃそうだよな、甘やかされた十五のガキが直ぐ振れる訳ねぇっての。

 爺さんの友人の精霊使いとかにも会って、ちょっと瞑想とかその辺をしたけど全然だめだった。

 まぁ、そもそも魔力が殆ど感じられなかったらしいけどな。

 だから、オレが盗賊になったのは必然だったんだ。

 この時は魔法使いの爺さんから読み書きや計算の方は合格を貰っていたからよ、きちんと書物を読んで役人になるのも道だと言われていた。

 でもなぁ、オレはそう言うのはなんか違うって思っちまったんだ。

 まぁ、相変わらず夢見がちだけどよ。

 だからまぁ、オレは冒険者を目指しちまった。

 爺さんが昔、金の冒険者だって聞いてたのも利いたな。

 この事を爺さんに言ったら、爺さんから師匠を紹介された。

 辛かったら何時でも帰って来いって、まるで孫に言うかのような事言ってくれたのは正直嬉しかったのを覚えてるな。

 でも、オレも意地になってたからよ……絶対に帰らないって返しちまった。

 あの時の爺さんの顔、今でも忘れらんねぇなぁ……一回、暇見て顔見せに行こうと思う。

 うるせぇ、笑うな! 続きはなさねぇぞ!

 ……うし、それなら話してやる。

 んでまぁ、師匠の所で三年盗賊として修業した。

 爺さんの所で一年過ごして、師匠の所で三年。

 まぁ、師匠にはすげぇしごかれてよぉ……何とか独り立ちの許可を貰ったら、今度はイザークと暫く組めって言われて正直腐った。

 オレはそんなに頼りないのか!? ってな。

 まぁ、この通り童顔だし、あん時もまだあんまり筋肉付いて無くて師匠も不安だったんだろうなぁ。

 爺さんからよろしく言われてるのも、多分あったんだろうな。

 それ以上に、オレが人や動物を傷つけるのに躊躇いがあったのが原因だったんだと思う。

 今考えれば、だけどな。

 その時の俺は分かんなくて、だから腐ってやる気があんまりなかったんだよなぁ。

 イザークもそれが分かっていたからか、最初すげぇ扱いがぞんざいだった。

 ああ、当たり前だよなぁ。

 イザークってよ、やる気無い奴に対して徹底的に冷たいからな。

 んで、オレはオレで甘えた奴だったから、師匠に頼まれたくせになんも教えねぇ! って思って、話もしなかった。

 んで、その転機があれだ。イザークと二人で受けた、魔物討伐。

 オレ、正直言って自信無かったんだよ。

 さっき言ったけど、人や動物に傷を負わせるとか言うのに躊躇ってたからな。

 だが、そのせいでイザークが大きな怪我をして、オレがどうにかしなくちゃって思ったんだよ。

 どんなに嫌な奴だって思っても、オレを守ろうとして怪我を負ったのを見ちまったから……見捨てて逃げろって言われても、聞かなかったんだ。

 今思えば、すんげぇ無謀だよな。

 まぁ、この時にやっとオレはオレを庇護していた世界に決別できたんだけどな。

 元の世界に戻るのはもう無理だ、動物を殺せるようなオレはいつか人をも殺すってな。

 極論だけどよ。

 んで、この時点でオレはずーっと昔からあった世界を救う勇者とか、そう言う夢見がちなモノも捨てられた。

 自分の命の危機にならないと出来ないっつーのがまた、オレも悟るの遅いとしか思えないけどな。

 その時にイザークがまぁ、家宝の大剣を使ってオレを助けてくれたわけなんだけどよ……その後、ぶっ倒れちまったんだ。

 必死こいてイザークとその大剣を背負って、街に逃げ帰ったな。

 その後、目覚めたイザークに懇願して戦闘訓練を受けさせてもらって、気が付いたらこんなに長く組んでいたっつー話。

 まぁ、端的に言えば今のオレが居るのは、イザークのおかげだな。

 だからよ、シキも色々と不安かもしんねぇけど心配すんな。

 イザークほどじゃねぇけど、オレもお前の事守ってやっから。

 あぁ? 何でそこで、アリアとミリアが出るんだよ。

 いや、もちろんあの二人も守るぞ? オレ達、仲間じゃねぇか。

 まぁ……シキの言うのが本当だったら、ヴァンパイアロードと戦う事になるんだろうけどよ、何とかなるんじゃねぇ?

 まぁ、確実に言えるのはオレが一番役立たず……。

 嫌だって、そうだろ?

 イザークはあの家宝の大剣があるし、それ以上にアレだけの戦闘技術がある。

 シキ、お前はまぁ『神凪の鳥』っつー種族で、すげぇ力がある。

 ミリアは聖女で、アリアは天才児。

 このへんどう見ても、オレだけが平凡で役立たずだろ?

 まぁ、その分戦闘技術に磨きをかけて足手纏いにはならねぇ様にはするつもりだけどな。

 オレが崩されて、全滅とかになったら目も当てらんねぇ。

 ん? ……ばっか! オレが今さらこのパーティから離脱する訳ねぇだろ!

 アリアとミリアの話もそうだけどよ、お前の秘密も知っちまった。その上で、知らないふりをして普通に戻るのは無理だっつーの。

 まぁ……今だオレが夢見がち、ってやつなんだろうけどな。

 でもよ、あんな苦しそうな表情をするミリアやアリアを見捨てるのは、オレには無理だ。

 命あっての物だねだからこそ、オレ達も色々と鍛えて行くしかねぇだろ。

 それこそ、遺跡とかですげぇお宝発掘して武器とか防具を手に入れるとか、そう言う事もしていかねぇとダメだろ?

 それ考えたら、盗賊技能のねぇお前らについて行って、これで貢献する以外ねぇじゃねぇ?

 まぁ、今までみたいにちんたらした鍛錬じゃなくて、前のスパルタ方式に戻してイザークと訓練もしないとな。

 騎士って柄じゃねぇけど、本当にアリアとミリアを守ってやんなきゃいけねぇとおもう。

 うっせ、笑うな!

 くそ……前言撤回だ、シキは守ってやんねぇ!

 イザーク、御者変われ!

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