[5]統括者になる為に……!
お腹もいっぱいになり満足しているとルーファがお会計を終えて戻ってくる
「こういう時はなんて言えばいいのでしょうか?」
「大抵はみんなご馳走様です。とか言うね。まぁ、そのくらいどうってことないから大丈夫だよ」
「いえ!そういう訳には、、、ご、ご馳走様でした」
「ルーファ様ご馳走様でした」
「ルーファお兄ちゃんご馳走様でした」
「お兄ちゃん、、、言われたことのない言葉だ、、うん響きがいいね」
満足そうなルーファを後に私はそろそろ儀式の時間だということに気付く
「そろそろメインの方進めないとね。おいでこっちだから」
…………………………………………………
しばらく歩いていると広々とした空間が広がっていて真ん中には魔法陣が引かれていて、祭壇の様なものが置かれている
私は少し緊張したが肩の力を抜く、その時に後ろから声をかけられビクリと反応した
「君たちだったか。食事の方は、、、うん。とれたみたいだね。あれ?イリヤはどこに居るか知ってる?」
「アレイ様それが、、、」
ルーファが気まずそうに事の経緯を話した
「全くなんてことだ、、。私は召喚儀式があまり得意ではなくてね。イリヤに頼もうとしていたんだけど、お酒を飲んでしまうなんて、リードも何処へ行ってしまったのか」
みんなで頭を悩ませていると後ろから声がかかる
「皆様どうかされましたか?」
その人物は耳が生えていてしっぽが1234…9本も生えている
「ルシアどうしてここに?」
彼女はルシアという名の人らしい
「私の主リード様を探しに来たのですが、リード様とは全く連絡が取れずに歩き回っていたんです。そしたら皆様方が困っているのが見えまして来たしだいです」
「リードとは連絡が取れないのは同じだね。にしてもナイスタイミング!ルシア、君に召喚儀式の手伝いをしてもらえないかな?」
「私に出来ることなら何なりとアレイ様」
ルシアにも事の経緯を話した後ルシアは大きく頷いた。
「そういう事でしたか。ならば私は適任ですね。私たち種族は召喚儀式などを得意とします。それとソフィー様の魔力を底上げする石は何個ありますか?場合によっては主と命を結ぶ契約をすることが出来ます。これをするメリットは他の者に契約を上書きされずにすむという事とアクティブスキルで契約召喚を邪魔されないというメリットがあります。しかもデメリットはありません」
「石は多めに用意して3個ある。けれど魔力を使っても疲労は強く残るから儀式あとは部屋にいることを約束してくれるかな?」
アレイはソフィーを見てそういう
「約束は守ります」
「では儀式の方を始めましょう。注意するのは強大な魔力に引き寄せられた魔物達です。私はソフィー様を守りつつ儀式をします。ルーファ様と黎舞様、アレイ様は戦闘に備えてください。ヒル様は私の妖術で隠しますが、万が一の事があるので私の妖狐に守ってもらいます」
するとルシアのしっぽ2つが狐に変化しヒルの近くに寄り添った
「これで準備は万端ですね。では始めます」
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祭壇を前にソフィーとルシアは向き合った。
魔力を増幅させる石をルシアが手のひらに乗せソフィーはウエルの入った魔法石をルシアがするように同じ姿勢を取った。
ルシアは召喚の為の呪文を唱え始める
「深淵の底に眠る禁断の知識、古の神を呼び覚ます。魔力の力を込め、星々の輝きを導き、神秘の秘密を解き放つ。混沌の渦に身を委ね、畏るべき存在を誘い出さん。手に神の力を求め、その栄光を彼の者に盟約を示せ。」
すると強大な魔力の元からウエルが姿を表す
『我は汝のものとなり全ての力を汝に授けよう』
その瞬間魔法石が赤くなり私のうちに秘める魔力の増幅を感じた
(これが契約というものなのね。ウエルの魔力の流れが私の中に巡っているのが分かる…)
……………………………………………
一方その頃の外にいるもの達は膨大な魔力に引き寄せられた魔物の討伐をしていた
沢山集まる魔物はワープを作り次々と魔力の恩恵を受けようとし、アレイやルーファ、黎舞に襲いかかる
「キリがないね。でも儀式はあと数分で終わるだろうけど魔力が増していってるから押されてしまうかもしれない」
アレイはまとまった魔物を瞬時に葬りながら言う
「中は魔力結界によって守られているかもしれませんがこれ以上の大物が来ると結界が破られてしまいますね」
煙の術で魔物を翻弄し黎舞が斬っていく
だが力のあるアレイでも数が数なだけに少し疲労を見せる
「昨日は“あれ”を使ってしまって本領が発揮出来ないのが苦だね」
「2人もやってしまったのだから仕方がないです。ですが、倒しても数が増えていくばかりですね」
その時空から無数の魔力のこもった矢が飛んできて辺りの敵を一掃した
「英雄は遅れて登場ってやつですか?リード」
リードが空から着地する
「ちょっと南の国に行っていて電波が届かなくって遅くなった。走っている途中で魔物が沢山いたから矢で一掃してやったってわけです」
「うんうん。相変わらずの戦闘スタイルだねリードは」
「アレイ様は無理しすぎです。あの姫さんの妹を守ってあげてください。あとは俺達がなんとかしますから」
「分かった。3人とも無理して怪我しないようにね」
「リード様がいるなら少しは無茶出来ます」
「黎舞、背中は任せた。ルーファ様は魔物共を術で惑わしてください」
「了解!任せたよ2人とも!」
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(戦況は芳しくないね。ヒルに怪我があればソフィーは悲しむだろう。ルシアの妖狐が2匹付いていても守るだけで精一杯なはず)
アレイは戦う2匹に強化魔法をかける
「ありがとうございます。アレイ様、しかし敵が多くて守るのが精一杯でした」
1匹の黒の妖狐が言う
「やはり惑わす術でも魔力感知で察知されているようですわ。我が力では主の命令もまもれなかったかもしれませんわ」
白の妖狐が魔物をなぎ払いながらそう言った
「私たちで戦況を変えよう。魔物を1点に集めるようにするのは出来る?」
「可能です」
「我の旋風で集めますわ」
「期待してるよ。怪我したらすぐ私の元へ戻ってくるんだ」
「「はい!」」
………………………………………………
(これで召喚儀式は終わり次は命約…外の状況はますます酷くなっている。完全にウエル様の力が戻れば魔物も去るはず)
「次は命約を結ぶこの媒体をソフィー様の中に入れ込みます。少し痛みが伴いますが大丈夫ですか?」
『その必要はない。既に命約済みだ』
「手間が省けましたね。そしたらウエル様ここにいる全ての魔物を喰らい俗世に姿を出せるようにしましょう」
『あぁ。ならば結界を解くと良い。我の中の力が騒いでいる』
その瞬間結界は割れ魔物達が核へとなり姿を現したウエルの元に吸収された
皆が私たちの元へと歩み寄る
「なんだ。もっと魔物と対峙したかったんだけど、ま、契約おめでとう」
リードはこちらに向かって歩きながら武器をしまう
「お姉ちゃん契約出来たんだね!おめでとうだよ!」
ヒルは守ってもらった妖狐達を撫でながら言った
「ウエルの姿を久しぶりに見れて嬉しく思う。ソフィー契約おめでとうお疲れ様」
アレイはニコリと笑ってそう言った
ルーファも黎舞も来てそれぞれ祝いの言葉をくれた
「アレイ久しいな。我がこうして俗世にいることこのお嬢さんに感謝しないとだな」
ウエルは姿を小さくしコンパクトサイズになった
ソフィーはウエルを手に乗せ首に巻いた
「人の体温は久しぶりだ」
「ウエル。これからよろしくね」
「あぁ、ソフィー末永くよろしく頼む」
ソフィーとウエルは言葉を交わしてから皆に視線を移した
「皆さんも私たちの儀式に付き合ってくれてありがとうございました」
私はみんなに頭を下げる
「お力になれてよかったです」
ルシアがそう言ったと共に2匹の妖狐はルシアのしっぽへとなる
「皆さんお疲れ様でした。疲労もあるだろうし屋敷に戻りティータイムにしませんか?」
ルーファはそう言い屋敷へと足を進めた
「時間があるならそうしようではないか。お互いに労おう」
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皆で屋敷に戻り談話室のような所でお茶を飲む
「優しい味……」
私はぽつりと呟くとルシアがニッコリと笑って言った
「これは西の国茶葉を取寄せて作ったんです。絶妙な温度で香りと旨味を引き出すんですよ」
「そうなのね。紅茶といったら私たちの国では苦茶だったの。だからどんなのかと身構えていたけどここまで美味しいだなんて」
「うん!わたし何杯でも飲めちゃうよ。リードお兄ちゃんは紅茶飲まないの?」
「ん?あぁ、俺はあまり紅茶は好きじゃない。だからこれでいい」
そういうとコーヒーを1口飲んだ
「ふふ、ただ西の統括者のイリヤ様が嫌いなだけなんですよ」
ルシアはこそっと教えてくれたが、リードには聞こえたのだろうムスッとして言い返してきた
「嫌いじゃない、大嫌いだ。あいつ俺にいちいち構ってきてウザイんだよ。そのくせ酒飲むとすぐ酔って、、、ああ!思い出しただけで寒気がする」
「ああは言っても強く突き放そうとはしないんですよね主様は」
「はあ?!?!」
リードは照れて顔が真っ赤になっている
「これ以上何も言うなルシア!変な誤解生むだろ!」
「その反応で時すでに遅しですよ」
「うるさい!狐鍋にするぞ」
「ソフィー様、私狐鍋にされるそうです」
シクシクと泣き真似をしながらソフィーの後ろに隠れる
「全く君たちは面白いね。私の暇を潰してくれる」
「アレイ様も側近とか作ればいいんじゃないですか?そしたらそんな会話も出来るんじゃないですか」
リードは素っ気なく言う
「私に側近を付けたとしても皆強ばって笑顔のひとつも見せてくれないよ。城のメイド達も私を未だに怖がっていてね。言葉をかけても一言しか帰ってこないんだよ」
「アレイ様が愛嬌ある姿になればいいんじゃないですか?例えば犬とか」
「確かに、、、いいねその案採用だ」
(アレイ様は確かこの国の創造者なのにそんなこと言えるだなんて肝が据わっているのね。私はお父様に歯向かえばすぐ鞭で撃たれてたのに。この国は平和なのかしら)
「どんな犬がいいかな。小型犬?中型犬?大型犬?愛らしい方が良いよね」
「そこら辺の野良より可愛げがあれば良いんじゃないですか」
「だったら異国の国の犬に実態を変えればいいのではないでしょうか?例えば柴犬とか」
ルーファがそう口を開いた
「異国の犬、柴犬、書庫で見てみて真似してみようか。その時は採点しておくれよ」
「もちろんですよ。異国の国ではとても人気らしいですからね。実物ではなくともこの目で見られるのなら歓迎ですよ」
「ルーファお兄ちゃんは目が見えるの?どうやって見てるの?!?!」
ヒルがとんでもないことを口にした
場が凍る音がする
この場にいるルーファとヒル以外が固まった
「うん?目は見えてるよ。ただ普通の見えかたとは違うんだ」
「普通の見えかたと違う?」
「例えばヒル、君は普通に目から物の情報を得ているよね。僕は感覚から情報を得たりしてるんだ」
「でも歩くこともできてるよね?戦ったりも!」
「それはとっておきの方法があるんだよ」
「とっておき?!」
「そう、心の目で見ることだよ」
「普通に目を瞑っていても暗闇しか見えない。でも全身を研ぎ澄ましてから心を目にしてものを見るんだ。すると普段の見え方とは全く異なる。習得はそれほど難しくはないけど常にとなったら難しいから徐々に伸ばしてくって感じになるね」
そう言ってからキセルを一息吸って吐く
「心の目!わたし頑張って習得してみる!」
「分からなくなったらいつでもおいでね」
「うん!ありがとうお兄ちゃん!」
場が少し温まる
「はぁ〜、ヒヤッとした」
と小さくリードは呟いてからコーヒーを一気に飲んで部屋を後にした
そして少し談笑したあとに各自部屋に戻ったり仕事に戻ったりした
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<自室にて>
(今日は色んなことについて学んだな。この国は上がしっかりしてるから争いなんて起きてない。私もそういう統括者になれるのかしら)
部屋の窓から外を眺めていると扉をノックする音が聞こえた
「はい」
振り返って返事をすると扉が開いた。そこにはリードがいて部屋に入ってきた
「リード様。どうされましたか?」
「様はやめてくれ。リードでいい」
「分かりましたリード。ところでどうしたんですか?いいえ聞かなくとも分かります。貴方から伝わる警戒の感情が」
「感情を読まれるなんて隠していたつもりなんだがな」
そう言って椅子に座る
「私は魔族なので自分へ敵意があるものの類は感じ取れるんです」
「待て。お前魔族なのか?」
「はい。そうですよ。魔核を感じませんか?心臓ともうひとつの核」
「はぁ、てっきり俺らと同じ人間でも長命種となる特殊な部類だと思っていた。知ってるやつだとイリヤとかがそうなんだけど」
「魔族と知ってリードあなたはどうしますか?」
「ま、どうこうもしないけど魔族なら色々と辻褄が合う。それにソフィーもそう警戒することはない。ただ教えるだけ教えておこうと思って来た次第」
「教えること?」
「そう。南の統括者になる前に知っておくこと」
そうするとリードは最初居なくなった時の話をしだした
………………………………………………
「俺はイリヤと居たくなくて部屋を後にしたんだ。で、その時に南の状況をふと見てみようと思って赴いた。特に何も無く南の国に着いたんだが前より荒廃していた。それをソフィーが復興役且つ統括者になるのは厳しいんじゃと思ってマレーアから来た人達に話を聞いて回ったんだ。そしたら皆ソフィーたちの事は昔からずっと助けたかったそうだ。それにマレーアを変えようとしていたのも知っていたらしい。だから敵国のチェシーヌに戦争を吹っかけて自国を滅ぼそうとしたらしい。そしてここでは南は統括者がいないというのとはぐれもの達や移民で溢れるここを統治してほしいとマレーア国民がそう言っていたんだ。多分それを初めに聞いたのはあの方が最初なはずさ、そしたら統括者になれなんて言わないし器があるともあの方は一切言わなかったはず。移民は移民で統治する者は誰でもいいらしい。それに君は魔族ときたそしたら歳相応の格好をしてもいいと思ったんだがマレーア元王から核に呪縛をかけられてるね。しかも結構昔にかけられたものだから核の奥にまで侵食している」
「マレーアの民がそんなことを?!今までの態度は王を恐れてのことだったのね。それで自国を滅ぼすことにした。多分民達は簡単にこのことを決断した訳じゃ無さそうね」
ソフィーは考えをまとめるように話す
そして自らの呪縛について語り出した
「私の主(国王)には核に呪縛が物心ついた時からありました。主の命令は絶対歯向かえば痛い目を見ると、王は非人道的かつ横暴な人でした。けれどこの核に刻まれているものは一筋縄ではいかないのです。どんな魔導書を読み漁っても解く方法はなかった。それに魔族の核を呪縛することは魔族にとっては大切な意味を込めることを意味するものでもあるんです。例えば婚姻とか愛するものが死へ向かった時に分かるんです。でもあの人は私の死を知ることで私を生贄に何かをする予定だったのだと推測します」
でも、と言葉を続けようとする彼女の手は震えていた
「その核の呪縛、俺が1回だけ触ってもいいか?」
俺はそう尋ねる。そう俺にはひとつ打開策がある
核を壊し他と同時に新しい核を作ること
これは他の者は到底出来ないもの
けれど俺には解けると確信していた
「分かりました」
そういうと上のボタンを外し始めた
(あーーっ!!そうだった服の上からじゃ触れることは出来ないんだった。なんか俺が変態みたいじゃねーか!)
「リード、大丈夫です。そんな目で見ているとは思ってもいません。それに信じていますから」
俺は覚悟を決める。
「少し違和感があるかもしれないが我慢してくれ」
そう言って手袋を外す
「はい」
俺は胸の中心部分に手を入れた。
ここからは自分の魔力と相手の魔力を十分に感知させながら行う。
(核はあるが触れた感じすぐに壊れてしまいそうなほどボロボロになっている。今解放してやるから)
そう誓い彼女の核を破壊した
「うっ、」
少し呻く彼女
俺はすぐに核を再構成して彼女を呪縛していた呪いから解放した
彼女の胸から手を抜く
「気分はどうだ?それから痛みとか」
手袋をはめながら言う
「特に以上はないです。けれどとても解放された気分です。いつも監視されてるような感覚だったのが誰からの目からも見られてない感覚はとっても久しぶりです。ありがとうございます」
「礼はいい」
……………………………………………
(彼は私を解放してくれた。なにか望みがあっての事ではなさそう。ただの善意が今の私には1番怖いわ)
布団をギュッと握る
「まあ、急に敵国に連れられて俺たちみたいなやつらを信用するのは難しいと思う。けれど敵では無いことは俺がいくらでも証明出来る」
心の内を読んだようにリードはそう言った
「私はこの国に来て少しは希望を持っても良いのかなと思いました。でもここはとっても暖かいです。だから私は行き場を失った者たちを導く者として南の統括者になりたい」
「統括者は名ばかりじゃない。躓くことも多くある。責任も何もかも背負うことになる。それでもなるのか?」
「覚悟は決まってます」
リードの目を見てそういう
「そんなに畏まらなくてもいい俺らは同じ(統括者)だからさ。それに初めは色々な統括者から学んで自分なりに工夫すればいい。決してひとりって訳じゃない」
「リードありがとう」
「まずは好きな国から見学すればいいと思う。早く統括者になるなら俺の国から見て言った方が良いのかも」
「リードの国はどんな感じなの?」
「俺の国は北に位置している。《北 正義の国》って呼ばれている」
「他の国は?」
「他の国は《西 魔法使いの国》、《東 妖の国》、《南 はぐれの国》、《中央 自由の国》って感じそれぞれの特徴からそう呼ばれている。だいたい皆生まれた地に留まるんだけど移住したりとかは自由。縛りはほとんどないけど、国の特徴であれこれ決まったりすることもある。俺の国は正義を謳っているから正義に則って他国の罪人を裁いたりすることがある」
「興味が湧いてきた。早く足が治ったらリード国から順に見ていきたいわ」
「傷ならもう完治しているはず核がボロボロだったから破壊して新しいのを再構成したんだよ」
「あの痛み私の核を破壊していたの?!」
驚きを隠せなくて久しぶりに大きな声を出してしまった
「ごめん。言ったら遠慮されそうだったからあえて言わなかったんだけど、、そうだよな、魔族にとって核は大切な物なのに容易く破壊してごめん」
「驚いただけよ。大丈夫、でも私でさえ破壊出来なかったのに」
「呪縛で核を覆っていたから内部に無理やり俺の魔力を流し込んで内側から破壊した」
(そんなのあり?!私もやったことあるけどただ激痛が走るだけだった。年月が経っていたから?それでも破壊するのは至難の業よ)
リードの顔を見ると何が変なのか分かっていない様子だ
「あの、、、えと、、核は簡単には壊せなくて、、それにボロボロだったとしてもなの、固有魔法か何か持ってるの?」
「これは全く魔法でもない。ただ魔力を流してバーンって壊す」
「あの、そのバーンがおかしいのよ」
「いやバーンなのはバーンなんだけど、何も捻りもなくただバーンって破壊」
私は説明を聞く度に頭に?が浮かんでくるが、リードも不思議そうな顔で見てくる
(私が変なのかな、、)
「まあそんなに気にしなくていいんじゃないか?」
しれっと言うリード
「お主らは面白いのう。我はずーっと聞いておったがこんなに楽しい時間は久方ぶりじゃ」
そう聞こえた途端に宝石がひかり目の前にウエルが姿を現す
「蛇神様」
「そんな風に言うでない。我の事はウエルと呼ぶとよいそれに神と統括者は身分は殆ど同じじゃからな」
「ウエル、、ぜ、全部聞いてたの?」
「良いではないか。主らの会話は我を楽しませてくれたからのう。それにソフィーよソフィーの核についての疑問も我なら分かるぞ」
「そうなの?教えてちょうだい!」
「リードは人だが、特殊部類の人種になる。生命は長く殆ど永遠じゃ。それに統括者となるとステータスというものが大幅に上がるんじゃ
それに見たところによると他の者より鍛え抜かれておる流石は正義の国の統括者と言った所だろう。
本題だが、核が破壊出来たのは単なる力ではない
それに核に魔力を流し込まれた時痛みは感じなかったじゃろう?リードの魔力はそこらの魔力とは違い治癒効果が流れているのを我は感じ取った訳じゃ。つまり治癒効果のある魔力によって破壊されたんじゃよ。そしてソフィー主は気づいてないが主の魔力は治癒と相性の良い豊譜の魔力が微量ながら流れている
つまりはその効果同士が合わさって破壊出来た訳じゃ」
「そうだったのね。それに私に豊譜の魔力が流れているだなんて」
「魔力の相性が良いと将来生まれる子には2つの強力な加護が授けられるんじゃ」
ウエルはしっぽをふよふよと振っていう
「加護の話は伝説かと思っていたがほんとにあるんだな」
「だが、リードよ主からは他にも治癒効果じゃないものも流れておるな?」
「ああ、確かに流れてる。それに俺の魔力は治癒だけじゃなくて相手に合わせる事が出来るし相対させることもできる」
「ほう、それは驚いた。我は長く生きてきたが人でそんなことができる者は初めてじゃ」
「他にも種類があるの?」
「ある。確か5つあって《治癒、豊譜、破滅、存守、無影》がある」
「これが全て揃っているとほぼ最強とも言えるだろう。我は存守の魔力と破壊の相対魔力を保有しておる」
「魔力ってただの魔力な訳じゃないのね」
「魔力とか魔法とか興味があるあればアイツの屋敷に行けばいい。本がたくさんあって興味深い物も多い」
「イリヤ様の御屋敷にはそんなに本があるんですか?」
「各所から集めた本と外に出してはいけない禁書みたいなのもある。魔力を操るには知識と実践が必要だ」
「私生まれてからあまり魔力とか使ったことなくて
戦いなんて出来ない」
「俺は魔力を主体に戦ったりしてないからな使うとしても補助みたいな感じで使っている」
「魔力って補助のように使うことも出来るのね。でも召喚儀式の時は全く使ってるようには見えなかったけど」
「魔力は色々な使い方があるんだ。ステータスを底上げしたりとか一時的に一部分を強化状態にすることか
俺はあまり詳しくないから本を漁った方が早いな」
「我も久方ぶりの外だしのう。それに神力も殆どない。だとすると教えられることも少ないじゃろうな」
「神力?」
「神力というのは神のみが持つ力じゃ。神力を高めるには信仰が必要なんじゃ。じゃが、我の社は参拝者はおろか信仰者もおらんそのうえ廃神社となってしまったんじゃ神力があらばお主を守ることも容易いのだがな」
「ウエルが可哀想だわ。どうにか神力を戻す方法はないの?」
「今は我のような神を信仰するものは居ないと言っても過言ではないぞ。神より統括者を信仰する者が多いからなそれでも信仰されている神は本当の神と言っても良いじゃろ」
「そもそもウエルは神社に縛られる存在では無いから社自体いらないと思うぞ、なんならウエルが復活したと周りに言えば話は早い。
ウエルは少なからず信仰の元だったんだが、社自体マレーアにあって信仰の力が届かなかったんだと俺は思う
だから社をソフィーの統括地に置いたら勝手に力は溜まっていくんじゃないか」
「リードお主は冴えてるのう!じゃが、我のことを信仰するのであればそれなりの恩恵を与えねばならぬ」
「簡単な事じゃないんだね」
「その辺はルーファさん辺りが詳しいよ。あの人ありえないくらい信仰されてるからな」
「そういえばなんじゃが、我は華來とも仲が良くてな。華來とも話したいんじゃが華來はどうしているのかのう?」
「そういえば儀式の時もいなかったな、あいつはともかく華來さんはそんな人じゃないから」
私はあの出来事を思い出し2人に告げた
「あの野郎華來さんに迷惑かけやがって、それに華來さんはお人好しだから酔っ払いの相手は手厚くするからな。あんなの1発殴れば酔いも覚めるだろうし」
「ちょっと荒っぽくない?」
「あいつにはそのくらいがいい。手加減なしでやってやるんだよ。治癒魔法かければ治るんだし」
(なんて荒療治、、)
するとリードはポケットから時計を取り出して見る
「ごめんだけど俺まだ仕事あるからここらで失礼する」
と言って部屋を出ていった
それから私はウエルと沢山の会話をした
…………………………
やがて夜が訪れ夕食の時間になる
/コンコン
「ソフィー。ご飯ここで食べる?それともみんなで食べる?」
アレイがそう声をかけた
「皆さんと御一緒させてください」
広間には大きなテーブルがあり私とアレイ以外はみんな居た
「ルーファ悪いねご飯までご馳走になって」
「良いんですよ。アレイ様それに食事は大勢で食べる方が旨味が増しますから」
テーブルにはルーファ、アレイ、ヒル、ウエル、私と傍には黎舞が居た
「リードは居ないのね」
「リードなら急用の用事で居ないんだ。他にもイリヤと華來も別の場所にいて今は私たちしかここには居ない」
「ご飯は温かいうちに食べましょう皆さん。さあ、手を合わせて生き物に感謝を」
私たちは手を揃えていただきますと言って食事を始めた
(また、見たことの無い食材だわ)
私は訝しげにそれをみてフォークで刺し口に運んだ
(なにこれ!?とっても美味しいまるで口のなかで蕩けているみたい。だけどこれはなんて言う食材なのかしら?)
私がそれをじっと見ているとウエルが察したように教えてくれた
「それはミニマノという魔物の肉じゃな。じっくりと煮込むと肉が柔らかくなってまるで口の中で溶けるような感触をしておる」
「そうなのね。私の国では干し肉が一般的だったからお肉なんて分からなかったわ。それに魔物って食べられるのね」
「倒すとそのまま消える魔物と姿が残る魔物がおるんじゃ。大抵は動物の姿をしたものが残ったりするんじゃけどそれらを食べることで我らは生き抜く事が出来ておるだから手を合わせるんじゃ恵みは永遠ではないからのう」
「そうだったのね。私たちの国では手を合わせるなんてことがなかったから周りに合わせてたけどそんな意味があったのね。色々教えてくれて助かるわありがとうウエル」
「分からぬ時は分かるものに聞く。大切な事じゃよ」
「にしてもウエルあなたは食べなくていいの?」
「我は食事を必要としないのじゃ。お主の魔力を少し分けてもらうことで必要としなくなるが、食べられないわけじゃないが我が今欲っしているものは食材ではないんじゃ」
「ならば昔私と呑んだお酒でもどうかなウエル。美酒を嗜むのも良いが今宵、話に花を咲かせるのならその時に楽しむ事も出来る」
「ほう。あれがまた呑めるとは嬉しい事じゃな、ならば今宵アレイそなたと話をしながら呑もうではないか」
「決まりだね。ふふ、楽しみが増えた事が喜ばしい」
「我も楽しみじゃ」
こうして食事を終えると私はアレイに部屋に連れて行ってもらいついでにウエルをアレイに手渡した
「じゃあまたねウエル」
「うむ。ソフィーいい夜を過ごすのじゃぞ」
「ソフィーまた明日。おやすみ」
部屋を出ていった2人を見送った
静かな部屋で私は少し寂しい気分になる
ベッドに横になり窓から見える星空を眺める
(落ち着いて星を眺めるのは初めてだわ。こんなにも星は綺麗なのね)
そう手を伸ばすと誰かに手を取られた
驚いてその人物を見る
「やあ、ソフィー」
「イリヤ様」
そういうとニコリと笑って口を開いた
「イリヤで良いよ。それに敬語も要らないそして昼はごめんね華來さんにこっぴどく叱られちゃった」
「いえ大丈夫で、、大丈夫。イリヤは下戸だったんだね。私はまだ飲んだことないけど」
「下戸で酔うとオレでも恥ずかしいけどキス魔になるらしい……」
目を逸らしてポリポリと頬をかく
「まぁ、オレがいなくても儀式は出来たみたいで良かったけど、、明日が怖いな」
「明日?」
「あのリードとアレイ様に怒られる。華來さんが上手く隠してくれたらいいけど、、」
あははと笑ってイリヤは近くにあった椅子に腰掛ける
「?上手く隠すってどういうこと?もうみんな知ってることでしょう?キスしそうになっちゃっただけなんだよね?」
「ソフィーは可愛いね」
イリヤはソフィーの髪を愛おしそうに触りソフィーの頬を手に添えた
彼女の唇は艶を放ち誘惑するような色に満ちていた
「イリヤ?」
「まだ早いよね。もっと仲良くなってからにしよう」
「えっと、、どういうことなの?」
頭を疑問符だらけになるソフィーの頭を撫でる
「ソフィー絶対に男とは2人きりになっちゃダメだからね?」
「え、あ、うん」
私はコクリと頷いた
(イリヤどうしたのかしら?)
彼が触れた頬に手を当てた
「そうだ!もう少し遅くなると綺麗な夜景が見れる所があるんだけど見る?」
「綺麗な夜景見てみたいわ」
「じゃ、決まりだね。そしたら暇潰しにオレと話そ」
「ええ、もちろんよ」
するとイリヤはポケットからコインを取り出した
「そのコインで何するの?」
私が問うとイリヤはニヤリと笑いこう言った
「このコインただのコインじゃないんだ。裏と表があるんだけどソフィーは裏表どれにする?」
「ん〜。じゃあ表!」
「そしたらオレが裏ね」
するとコインがピカピカと光った
「これでコイントスすると裏表のどちらかが上になるんだけど見てて」
するとイリヤはコイントスをしコインをキャッチして手を離す
「あっ!表だからソフィーだねコイン持って」
コインを持つと1文だけの文字が浮かび上がってきた
「ここに話す内容が書いてあるんだ。そのコインには何て書いてある?」
「え、えーと、『使ってみたい魔道具は?』って書いてある」
「そしたらその質問を答えるって感じ。どう?わかった?」
「うん。そしたら使ってみたい魔道具だよね。私魔道具詳しくないから、、、あ、でも弓使ってみたい!自分の魔力を込めた矢を放ってみたいな」
「うんうん。なるほどね。そしたらリードに一緒に言ってみようかリードはたくさんの武器を使いこなせるから」
「え、でも二人共仲悪いんじゃ、、、?」
「一方的に嫌われてるだけでオレは嫌いじゃないよ」
「何で嫌われてるのよ、、」
「結構昔の話になるんだけど、若くして統括者になる人がいるってアレイ様に言われて統括者達と挨拶みたいな感じで集まったんだけど緊張してるのか物陰からオレ達を見てるのを見てつい『猫みたいだ』と思って近づいて頭撫でちゃったんだよね。反応可愛くてつい撫で回したら手を噛まれたんだけど、多分あれからな気がする」
「リ、リードを撫でたの?!」
「撫で回しちゃった」
イリヤは反省してるのかしてないのか笑っていいのける
「というかさ、知ってる?ソフィー。リードがオレを殺しにくるっていう話」
「え?!それはアレイ様に許されてるの?」
「こう言うと変な感じなんだけど、オレ、リードの国では指名手配犯みたいな感じに扱われててあの国に行くの少し躊躇しちゃうんだよね。オマケに賞金首並の懸賞金かけられてるし、でも手出しするような奴はそんな居ないんだけど自尊心が高い人とか、手合わせ程度で来る人が多め。けれどリードは自国だとオレを殺る目が本気だし技の精度が凄いんだよね。魔法だと勝てるけど体術は極めてなくて集中してないと避けるのも大変なんだよね」
「イリヤ貴方普通に言ってるけど、そんな可愛いものじゃないわよ。それにそんなに嫌われるのもある意味才能だと私は思うわ。それにリードの体術を少しは見てみたい気もするわ。どんな風に体を使っているのか、いかに早く技を出すのか」
「ソフィーは真面目なんだね。明日リードにちょっかいをかけるからその時にでも研究するといいよ」
「いえ、でも怪我してもダメじゃない」
「あ、言ってなかったね。オレの身に起こったこととかを書き換える事が出来るんだよ」
「どういうこと?魔法か何か?それとも妖術の類かしら?」
「オレは複数の強力な加護を持って生まれたんだけど、産みの親はいなくてアレイ様が言うには誰かに作られた存在なんじゃないかとも言われている。話は戻るけど、魔法とかでも妖術でもなく加護ってことになるんだ」
「待って。話が追いつかないわ。誰かに作られた存在?それに複数の強力な加護って?」
「オレが持つ強力な加護はたくさんあるんだけどその中でも強い5つを簡単に言うと1、『複数体の生成』2、『力の分け与え』3、『上書きされることのない事象』4、『どの状態からでも復活可能』5、『無効化する能力を封じる』って所かな」
私はその加護を聞いて動揺する。
(!?つまり最強ってこと。娯楽小説で読んだことあるわ。これをチートって言うのね)
「つ、つまりは3番目の加護がさっき話したものよね?」
「そう。早い例だと、【オレが殺される→(殺された事なしで)→(OK)→復活】って感じ」
私はそんな話を聞いて戸惑いを隠せない
「ほぼ不老不死じゃないの!」
「あ、まだこの加護には隠された能力があって」
「話したら隠されてもないわよ」
「まあまあ、信じてもらうには、、、」
イリヤは私の顔を見てから布団の方に視線を移した
「そういえば怪我してたよね。ちょっといい?」
「え?まあ全然大丈夫よ」
私は怪我をした足を見せる為に布団を退けた
「包帯取ってもいい?」
「ええ」
丁寧に包帯を取っていくイリヤ。するすると取れる包帯
すると痛々しい傷が露になる
「ごめんなさい。あまりにも痛々しいわよね」
「ううん。そんなことない。よくこの痛みに耐えたね、それじゃ見てて」
すると目を閉じてぶつぶつと何かを言った
途端に傷が無くなる
傷が癒える訳でもなく消えたのだ
「傷がなくなったわ、、、。凄い」
「この加護は他の人にも使えるんだけどね。デメリットはオレの魔力分しか使えないってこと。でもオレの魔力は無限と言っても過言ではないからチェシーヌでたくさんの人が死んだとしてもそれは無かったことになる。」
「サラッととんでも発言はやめてちょうだい」
私はこれこそ魔法なのではないかと思った
「でも全て完璧な訳ではないんだ………」
私は不思議に思いつつもその言葉を聞かなかったことにした
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窓をすっとイリヤが見据えた
「今がいい時間だ。さ、行こうか」
靴を履いたと同時にふわりと身体が浮かぶ
「こっちの方が早いからね」
お姫様だっこされた状態から窓を開け放ち闇夜の城から抜け出す
城から抜け出した瞬間城下の光が煌びやかにひかり全てを魅了するかのようだ。
その瞬間に強い風を感じ目を閉じ風から抜けると恐る恐る目を開ける
「っ!綺麗……」
夜に光る星々に反射された海が大きく映し出される
私は目の前の光景に自然と調和されていくのを感じる
すると小さな光が寄ってきて私に話しかける
『おいでよ。風に乗って』
『翔ぶ想像をしてごらん』
『身を任せて』
私はイリヤを見ると微笑まれる。
するとイリヤの腕から解放されて落とされる
(!落ちちゃう!)
『大丈夫。見てご覧』
『初めてにしては上出来よ』
『ほら、私たちの事が見えるようになったんじゃないかしら』
『私の手を取って』
小さな妖精が私の周りに集まって回る
「翔ぶ感覚ってこんな感じなのね。ありがとう妖精さん」
『そう。私たちは風の妖精よ、風を操り時には阻み、包み込むモノなの』
妖精達は器用に翔び回る
全方向に広がる海と星に私は魅了され続ける
「こんな景色初めてみるわ。いつも窓から見る景色しか知らなかった。綺麗ね」
そして風の妖精の導きで丘へと降り立つ
『悩みも少しは楽になったんじゃないかしら、ふふ』
『風は全てを流してくれるからね』
『また一緒に翔びましょう』
妖精達とお別れをする
「妖精にも愛されるなんて精霊使いにもなれそうな素質だね」
「イリヤ」
私はすっかりイリヤの存在を忘れてしまっていた
「でも魅了されすぎちゃダメだからね。ソフィー君1人だったら妖精に連れていかれてたよ。まぁ、連れていかれても悪い意味ではないんだけどね」
「連れていかれる?」
「妖精達の国がまた別にあるんだけどココとは全く時間の進み方が違うんだよ。向こうに一日いるだけでこっちの世界では5日も過ぎることになるんだ」
「私はここが好きだから向こうには行けないな」
「この場所以外にも綺麗な所はたくさんあるからね。たくさん目にしてこの世界を知れば良いよ」
「うん」
しばらく丘からの景色を楽しんでいるうちに瞼が重くなるのを感じて開けようとするが抵抗は無意味に終わり起きたら自分の部屋のベッドに横になっていた
…………………………………………………
体を起こしボーッとしてると目の端の机が目につき見ると花と共に手紙が置いてあった
『昨日はどうだったかな。城を抜け出したことは2人の秘密にしようね。今度はオレの国を案内するから楽しみにしてて』
私は心が暖かくなるのを感じた。
そして靴を履いて部屋を出た
「やぁ。おはようソフィー」
「おはようございます。アレイ様」
「あれ?ウエルは?」
すると胸元の宝石がパァーッと光る
「我はここにおる。魔力が不安定で出ることが出来ないが話すことはできる」
「魔力が不安定?」
私が尋ねるとアレイが笑っていう
「契約後とかに良く起こる現象なんだ。だからあまり気にしなくていい。お互いの魔力が綺麗に交わるのを待つのみだね」
「………」
(あれ?ヒルが居ないわ。ここにいる訳でもないし何処に行ったのかしら。探知が難しいわね)
私は心配になりアレイに聞いてみることにした
「あの、アレイ様私の妹ヒルの魔力が探知出来ないんです。何処に行ったか分かりますか?」
「ん?ああ、それならイリヤが早朝早くから連れ出していたよ。伝えるのを忘れててすまなかったね」
「早朝からですか?」
「君の妹のヒルは悪魔に憑かれているだろう?あれは制御出来なければ危ないが逆に捉えるとその力で自身を守り相手を守る事も出来るわけさ、そのための制御をイリヤから提案してくれてね。君にも伝えるべきだとおもったんだけど明け方くらいに力が暴走しようとしていたらしくてね。それを止めるのと同時に操ろうと計画したみたいだ」
「私は反対などないけれど、あの子にはもう辛い思いはして欲しくないわ」
「心配する気持ちは分かるけど先生として適しているのはイリヤなんだよ。イリヤも元は悪魔を自ら宿し力を使っていたからね。結局魔力も強くなったイリヤの身体から消滅してしまったけれどね」
「君たちの境遇を考えると私達を信じるのは厳しいのかもしれない。でも今は君を縛るものも凶器になるものもないんだ。この私が誓おう」
「……私この国にきて初めてぐっすり眠れたんです。だからあなた達を信じてみても良いのかなと思ったり、だからこそ私は決心したんです。南の統括者になることに。簡単な事じゃないのは分かり…ます。でも私たちのような人を増やしたくはないのは本当なんです。だから、だから」
「大丈夫。熱意は伝わっている。でも急に統括者になるんじゃ荷が重いだろうから国を回ってみると良いと言ったんだ。真似して見ることもプラスして良くしていくことも出来る。復興作業はこちらに一存すればいい。ソフィー君はまず学び心得を得るといい」
アレイはほう微笑み紅茶を飲む
「さ、そんな硬い話しは終わらして食事にしようじゃないか」
こうして私の統括者になるまでの修行が始まった