第五話 声にならない助けて
ユウたちが裏口を使い巨大迷路から脱出した後、ユウたちがすでに迷路内から脱出していることを知らないマカミは投影実像で具現化させた自分の影を鳥に変え、迷路内に放った。
三十分経過――鳥がマカミの元へ帰って来た。
マカミは影から創りだした鳥にユウ――正しくはユウの神意を発見次第、後を追跡するよう命令を出して放った。その鳥が戻って来たということはつまり、ユウの神意を発見できなかったということ。それが意味することは――
マカミ:「どうやらユウはもうこの迷路の中にはいないみたいだな。すでに脱出していたのか………………信じられないな」
事実を受け入れられないマカミ。だが、どんなに受け入れがたいことであったとしても、それが真実であれば受け入れなくてはいけない。
衝撃の事実にしばし、目の前の現実を受け入れるのに時間がかかっているマカミの背後より一人の白髪の女が声を掛けた。
白髪の女:「まだそんなおままごとを続けているの」
マカミ:「………………来てたのか」
女の声を聞き、マカミは一瞬眉をひそめた。ヒールの音を反響させながら近寄って来る白髪の女をマカミは知っていた。
マカミ:「俺に何か用か。用がないならとっとと――」
白髪の女:「用ならあるわ」
白髪の女――名前はスノウ。記憶を失う前のマカミを知る人物のようなのだが、よく覚えていない。それでも記憶を失ったマカミの数少ない知人の一人である。
スノウ:「戻ってくる気はないの」
マカミ:「ない、少なくとも今は」
マカミに残存しているスノウとの記憶は極島に来てしばらく共に生活していたこと、それだけである。
スノウ:「そう………………まだこんなごっこ遊びを続ける気なのね」
表情は一切変えず、話を続けるスノウ。声音だけ、若干トーンダウンしたのだが、マカミは気づいていない。スノウはマカミが今一番知りたがっている情報を伝えた。
スノウ:「あの子なら、小さな女の子を連れて非常用の出口から出て行ったわよ」
つまらなそうにユウの居場所をスノウはマカミに教えた。
マカミ:「小さな女の子」
対照的にマカミはその話題に食いついた。
スノウ:「迷子じゃない、たぶん」
マカミ:「そうか」
ユウの居場所が分かるとマカミはそそくさと迷路の出口を目指して歩いていった。迷路内部の構造はすでにユウとあちこち歩き回って概ね把握している。
出口のある場所にも目星がついている。
スノウ:「気を付けて」
少年は薄暗い迷路の中を振り返らず進んでいった。その背に、投げ掛けられた少女の儚げな声が少年に届くことはなかった。
│─\│/─│
???:「………………」
音もなくユウに忍び寄る一人の人影。手には刃渡り十センチほどのナイフが握られている。
常時、神依で全身を覆っているユウに傷をつけることはたとえ相手が戦車であってもできない。重さで動きを封じることはできても、重みで圧殺することはできない。
どこぞのネコ型ロボットが少しだけ地面から浮いているように体と戦車の間に若干の隙間ができる。
神人類以外の人類からすれば不死身に見える神人類だが、あくまでそれは相手が神人類ではない――神意を武器に纏わせることができない場合の話である。
背後からユウに近づく人影が握るナイフにはしっかり、神意が纏わされている。
神依では防御不可。神人類といえど所詮は人、生物――首に後ろからナイフを突きたてられれば当然、死ぬ。
ユウ:「動かないで」
???:「っ――」
人影がナイフを振り上げた瞬間、あとは白い華奢な首筋に握ったナイフを振り下ろすだけで目の前で無防備な背中を晒す暗殺対象を殺せるという状況で、人影はユウに声だけで制せられた。
ユウ:「それ以上近づいたら斬るよ………………シズカちゃん」
ユウは振り返ることなく、ナイフを持って近づいてくる人物――ユウの命を狙う三人目の刺客を言い当てた。
シズカ:「どうして」
振り返ると怯えながらもしっかりと両手でナイフを握るシズカの姿があった。
ユウ:「類は友を呼ぶってやつかな。私よく迷子の子を見かけて近くの交番とかに連れていくことがあるんだけど、そういう子たちは大抵辺りをきょろきょろ見回して自分の親を必死に探そうとするんだよ。心細いのとはぐれた親のことを心配して」
シズカ:「………………」
シズカが言った「どうして」は、どうして音の神託で自身が発する音をすべて消せる自分の接近に気づくことが出来たのかという意味だったのだが、ユウは違う応えを示した。
ユウ:「でも君は違った。ずっと私の顔を見て、私の表情を伺ってた。今も自分を探して心配している家族がいるはずなのに、君は全然心配している様子がなかった。まるで最初から自分を探す家族なんていないと知っているみたいに」
ユウは途中からシズカが偽の迷子であることを看破していた。それでもなおユウはシズカの、迷子のお芝居に付き合い、シズカを本気で励まそうとした。
時折見せるシズカの暗い表情は演技でできるものとは到底思えなかったから………………
ユウ:「何があったの、お姉ちゃんに教えて」
シズカ:「………………無理だよ」
自分を殺そうとした相手を本気で心配するユウ。その言葉に嘘偽りはない。それはユウの瞳を見ればシズカにだってわかる。
だが、シズカは首を横に振った。無気力に。すべてを諦めたように。
ユウ:「無理なんかじゃない。お姉ちゃんが何とかしてあげるから、だから――」
サイト:「何をやってるんだ、木偶の坊」
ユウの言葉を無慈悲に斬り捨てる、言葉の刃。
シズカ:「ひっ………………」
声の主を見て、シズカの瞳が一層小刻みに揺れ始めた。
シズカ:「サイト、様」
シズカの声は恐怖で震えていた。
サイト:「暗殺に失敗したらすぐさまナイフを自分の喉に突き立てて自害しろと、あれほど教えただろう。まだ教育が足らなかったみたいだな」
シズカを冷たい眼で見下ろす、眼鏡の男――サイト。
仕立ての良いスーツを着こなし、どこかの政治家か弁護士のように見える品の良い身なりの中年男はシズカをまるで人形かロボットを見るような瞳でジッと見下ろしていた。
ユウ:「君は」
ユウは咄嗟に怯えるシズカを庇うようにしてサイトと相対した。
サイト:「保護者みたいなものですよ、その子の」
ユウに尋ねられた途端、誰がどう見ても偽物とわかる軽薄なビジネススマイルを浮かべるサイト。ユウはより一層目の前の男を警戒した。
ユウの神託は――感情の神託。相手の、自分に向けられる相手の想いを色として見ることができる。赤なら怒り、青なら哀しみ、黄色なら喜び………………
ユウ:「とてもそうには見えないけど。むしろ逆」
サイトの自身に向ける感情は黒。黒は――嫌悪の色。それが徐々にどす黒い赤色へと変化していった。
お前を絶対許さない。必ず報いを受けさせる。殺す。
サイト:「…………ふぅ」
重たいため息と共にサイトの感情の色が黒から怒りや敵意を示す赤に完全に塗り替わってしまった。
サイト:「部外者はすっこんでいてもらえませんか。これは私とその子の問題ですので」
ユウ:「シズカちゃん、怯えてる」
シズカ:「……お姉ちゃん」
これ以上続けても話は平行線。状況的に目の前の男は間違いなく神人類、おまけに自分に明らかな敵意と憎悪を抱いている危険人物。
先手必勝。戦闘は避けられないと判断したユウは顕現させたままの剣(神器)をすぐさま振るった。
サイト:「おっと」
致命傷には届かないが戦意を喪失させるには十分な深い傷を負わせようとしたユウの攻撃をサイトは軽々と躱してみせた。
サイト:「危ない、危ない。話している最中に攻撃してくるとはなんて野蛮な騎士様だ。こんな暴力女を好く物好きがいるとは。ぜひ、その哀れな男の顔が見てみたい」
ユウ:「うるさいっ」
間髪入れず、立て続けに追撃の刃を振るおうとしたユウだが、その前にサイトは手に平を前につっぱり、ユウを静止させた。
サイト:「おっと、動くなよ天使優、お前が動けばシズカの頭が内側から盛大に爆ぜることになるぞ」
シズカ:「う、あ゛あ゛」
シズカが突然頭を押さえながら苦しみ始めた。
サイトの神託は寄生の神託。シズカの体内にはサイトが神の御業で生み出した寄生虫がシズカの神意を糧に潜んでいる。
ユウ:「シズカちゃんっ」
シズカ:「お姉、ちゃん」
寄生虫はサイトの意思に呼応する。
頭蓋を外から強く締め付けられる痛みがしばらく続いた後、突然現れたシズカの頭の痛みが突然、消失した。
サイト:「これでよくわかっただろう。シズカ、お前にもう一度チャンスをやる。そのナイフで天使優の腹を刺せ」
シズカ:「っ」
小柄といえど小学三年生と同じ年のシズカでは立ったままユウの胸を刺すことはできない。だが、わざわざ心臓を刺す必要はない。腹であっても根元までナイフを刺しこめば、十分。ユウは死ぬ。
サイト:「何を躊躇っている」
シズカ:「………………」
サイトの命令に戸惑う、シズカ。その場で立ち尽くすシズカにサイトは――
サイト:「そいつは俺の、弟の仇だ。やれっ、やるんだ、シズカっ」
シズカ:「っ………………」
再びシズカの中の寄生虫を暴れさせ始めた。
サイト:「路上で汚いぼろ雑巾のように行き倒れていた貴様を拾ってやったのは誰だと思ってるっ」
頭の中を寄生虫が暴れまわり、激痛に顔を歪ませながらシズカは………………
シズカが五歳の頃、シズカの親は神人類に殺された。シズカの親を殺した神人類は後に、正騎士により討たれたのだが、親を失ったシズカは一人路上を彷徨うことになった。誰もシズカに手を差し伸べる者はいない。五歳の少女が浮浪者の真似事などできるわけもなく、行き倒れしかけたシズカをサイトが拾い、殺しの道具に仕立て上げた。
シズカはただずっと痛みに耐えていた。
ユウを殺すために渡されたナイフを握りしめながら、苦痛に耐え忍ぶにシズカに向かいユウは優しく笑いかけた。
ユウ:「大丈夫だよ、シズカちゃん」
シズカ:「お、お姉、ちゃん」
ユウ:「来て」
腕を広げ、ユウはそっとシズカを引き寄せた。同時にシズカの握ったナイフがユウのお腹に深々と呑み込まれていった。
シズカ:「お、姉ちゃん」
ユウの腹に根元までナイフが呑み込まれたのを見て、サイトは声を上げて笑った。
サイト:「ふ、ふふ、あはははははははははは、やったぞ、やりましたぞ、ラドン、カラード見ているか、お前たちの兄はやり遂げたぞ――がっ」
勝利を確信して高笑いするサイトの脳天に向け、ユウは、腹に刺さったはずのナイフを投擲した。
シズカ:「お姉ちゃんっ」
ユウの投げたナイフはサイトの額、中央に直撃。ユウが投げたナイフは神意を纏っていない。神意は自分と自身が触れている物、神器などのように神の御業で具現化、変容、創造したモノ以外に纏わせることはできない。
ユウはサイトの息の根を止めるため、追想剣(神器)を手に、一気に距離を詰めた。
サイト:「このあまぁああああああああああ」
サイトは、ユウの投げたナイフを真剣白刃取りの要領で体内に飼っている寄生虫に受け止めさせた。
サイトの神の御業――寄生誕。自身の体の一部を供物に捧げ、目のないチンアナゴのような寄生神虫という神の蟲を生み出す。サイトは神の御業で生み出した寄生神虫を一匹、自身の体内で飼い、他者の攻撃から自身を護らせている。
宿主に刃を向けてきたユウを敵とみなし、寄生神虫は口でキャッチしたナイフをかみ砕くと、剣を手に迫り来るユウに向かって襲い掛かった――
結末は一瞬だった。
自身に向かい口に生えた無数の小さいのこぎりのような歯ををむき出しに迫るチンアナゴの怪物を紙一重で躱したユウは流れるような動きで炎湧き出る剣で寄生神虫の首を切断。斬り口から炎が勢いよく燃えだし、寄生神虫を跡形もなく灰にした。
サイト:「や、やめ――」
ユウ:「っ――」
そのままユウはスピードを一切落とすことなくサイトの懐へ飛び込むと、真一文字に胸を斬り裂いた。
サイト:「うああああああああああああああああああああああああ」
ユウの炎の出る剣で斬られ、全身炎に包まれるサイト。
ユウの神の御業の一つ――怒髪衝天。刀身だけではなく、剣で斬ったモノをも発火させる。
サイト:「た、助けてくれ、頼む」
サイトに救いの手を差し伸べる者は誰もいない。ユウに冷ややかな眼で見下ろされながら、焼かれるサイト。視界の端ではシズカが、自身の傀儡だった少女が憐れんだ目で自分を見ていた。
サイト:「ふざけるな。お前も道連れだ」
サイトは最後の足掻きに、シズカの中にいる寄生神虫を暴れさせた。
シズカ:「うあああああああああああああああああああ」
再び、激痛に苦しみ始めるシズカ。
ユウ:「シズカちゃんっ、どうしたの」
シズカ:「お、お姉ちゃん………………」
サイトの命に従い、内側から体を破壊するため所かまわず無秩序に暴走を始める寄生神虫。
シズカ:「お姉ちゃん、私、死ぬのかな。お父さんとお母さんみたいに」
今は内骨格に阻まれ致命に至る傷は負っていないシズカだが、寄生神虫がシズカの骨を砕き、内臓をぐちゃぐちゃにするのも時間の問題だった。
ユウ:「シズカちゃん、じっとしてて」
ユウは苦しむシズカの数歩手前まで近づくと、己の神器――追想剣を構えた。
ユウの神託は、感情の神託。ユウの神器、追想剣はユウの感情に呼応してその色を、使える神の御業を変える。
刀身の色が燃えるような赤から果てしなく深い黒へと変わった。
ユウ:「一撃、確絶」
ユウは剣を振った。
シズカ:「………………あ、れ」
直後、シズカを苦しめていた痛みが嘘のように消失。
シズカ:「お姉ちゃん、頭の痛いのが治った」
ユウ:「よかったね、シズカちゃん」
同時に、シズカの体内を蹂躙していた寄生神虫がその生命活動を終えた。
サイト:(馬鹿な……俺の寄生神虫がやられただと。一体何が起こったんだ)
唯一、シズカの体内に寄生させた虫がやられたことを認識できるサイト。だが、どのようにしてやられたのか、全く理解できなかった。
わかるのは、目の前にいる正騎士は自分たちの大いなる計画を遂行する上で一番の脅威になる可能性を秘めているということだった。
マカミ:「……ユウ」
ユウ:「――ダーリン」
名前を呼ばれ振り返るとそこには迷路で離れ離れになったマカミの姿が――迷路の中にユウがいないと知り、すぐに正規の出口から迷路を出たマカミはユウとラドンの戦闘でパニックになっていると知り、避難する人々とは逆の方へ向かい走った。そして、ようやく離れ離れになったユウとマカミは合流することができた。
マカミ:「無事か」
ユウ:「うん、私もシズカちゃんも無事。五体満足」
ユウの無事を確認し、ホッと胸をなでおろすマカミ。次に一緒にいる幼い少女――迷路の中でスノウから聞いた幼い少女へと視線を動かした。
シズカ:「ど、どうも」
何を考えているのかわからない、もしかしたら何も考えていないのかもしれない霧の中にいる錯覚を覚えてしまうようなマカミの灰色の瞳に見つめられ、シズカはユウの裾をキュッと握った。
そんなシズカの反応を見ていたマカミはすぐに興味がなくなったようにユウへ視線を戻した。
ユウ:「あれ――」
ここでようやくユウは気づいた。重傷を負わせたはずのサイトがどこかにいなくなっていることに――
マカミ:「どうした」
ユウ:「う、ううん何でもない」
逃げたサイトを追うことも考えたユウだが、あの傷ではそう遠くまで逃げることはできない。今は深追いせず、恐慌状態の現場を少しでも早く落ち着かせることが優先であると判断した。とりあえずシズカ、マカミと一緒に安全な場所へ避難、サイトの事は後から来る正騎士に任せることにした。
しばらくして通報を受けた正騎士たちが現場に到着。謹慎中の身にも関わらず遊園地デートをしていたユウの処分は死傷者を一人も出さずに敵の襲撃を退けた功績と相殺になった。アキには二日連続でお説教をされる羽目となったが………………
その後、駆けつけた正騎士たちが園内を隈なく捜索したのだが結局、逃げたサイトを見つけ出すことはできなかった。
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サイト:「くそ、くそ」
先ほどまでユウたちがいた巨大迷路を当てもなく奔走するサイト。サイトは居もしない追跡者の幻影に駆り立てられながら、入り組んだ迷路の中を全力で走り回っていた。
サイト:(しくじった、まさか天使優の強さがこれほどまでとは)
ユウに斬られ、サイトの全身を包んだ炎は、ユウが追想剣の色を変化させた瞬間に勢いを弱め、今では鎮火している。
といっても全身をこんがり焼かれた事実がなくなることはなく、サイトは全身隈なく大火傷。ユウに斬られた胸からは今も血が滴り落ちている。
サイト:「早くあの方に知らせなければ」
這う這うの体でありながら、サイトはある人物と連絡を取るため、通信機器を取り出した。
逃げることよりも、サイトはある人物に作戦の失敗とユウに感じた秘めた脅威性を伝えることを優先した。
手元の通信機器に視線を集中させていたサイトは床に転がる、ある物の存在に気づかず、躓き盛大にこけてしまった。
サイト:「ぐわっ」
薄暗い室内で、段差か何かに躓いたと思ったサイトだったが、違った。勢いよく床に膝を打ち付けたサイトが目を凝らして見ると――それは人だった
サイト:「誰だこんなところで寝てるマヌケは――はっ」
自身を躓かせ、足を止めさせた正体に気づきサイトは目を見開いた。それはサイトの良く知る人物だった。
サイト:「カラード………………」
サイトが躓いたのはマカミに敗れ、床に無造作に転がされていた弟――カラードの死体。
予想はしていたが、実際にカラードの死体を前に言葉を失うサイトの元へ、コツコツと甲高いヒールの音が近づいてきた。
サイト:「お前は」
スノウ:「………………」
心底興味なさそうな顔でサイト見下ろすスノウ。対し、サイトはスノウを怒り満ち満ちた顔でスノウを睨みつけた。
サイト:「お前がやったのか、お前が、お前が」
恐怖よりも怒りで全身を震わせるサイト。下手に絡まず、すぐさまこの場から立ち去れば見逃そうと思っていたスノウも静かに秘めていた苛立ちを捻出させた。
スノウ:「何のことかしら。そこの死体なら私が来る前にそこに転がってたわよ」
スノウのぞんざいな言葉にサイトは怒りを爆発させた。
サイト:「くそあまぁああああああああああああああ」
右腕全てを寄生神虫に変え、スノウを攻撃するサイト。先ほどユウを襲った個体とは比べ物にならないほど巨大な寄生神虫がスノウに襲い掛かる――
サイト:「がっ………………」
サイトは襲い掛からせた寄生神虫ごと、胴体を真一文字に切断された。
意識を失う寸前、サイトは最後の力を振り絞り、左手に持っていた通信機器を操作して、ある人物へ向けメッセージを送った。
スノウ:「………………これは」
その後、物言わぬ死体と成り果てたサイトへ近づいたスノウは壁の端に投げ捨てられた通信機器を見つけた。
電源を入れると、液晶にはスノウも知る、ある人物の名前が映し出されていた。