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神人類  作者: maow
番外編 少女A
42/50

過去編5 初めてのお泊り

│─\│/─│


時は流れ――


 この世に生を受けた日から数えて今のところ、誰とも交際したことがない、生粋の箱入り娘である天使優(あまつかゆう)はつい先ほど運命というにはあまりにも突飛な偶然的な出会いを果たした黒髪の少年、真上英次(まかみえいじ)と、たまたま近くにあったビジネスホテルに一緒にチェックインしていた。


ユウ:「…………」


 ちなみに二人がとった部屋は一人に一台ベッドが用意されているツイン、ではなく二人仲良く一台の大きなベッドで寝ることのできるダブル。


 たまたま今日空いている部屋が、この一部屋しかなかったのだ。


ユウ:(どうして、こうなった)


 下校途中、見ず知らずの男たちに誘拐されかけたユウは偶然誘拐現場に居合わせた信正騎士団の正騎士――マカミに助けられ、桜の木が一本ある公園で生まれて初めての事情聴取をされた。


 誘拐される覚えのないユウからは当然、今回の誘拐事件について大した情報は得られなかったのだが…………


 このまま家に帰っても誘拐犯の仲間たちがユウの家の周囲に隠れ潜み、再びユウを誘拐する機会(チャンス)を伺っている…………その可能性が高いと考えたマカミはユウの身の安全が保証されるまでユウの護衛役をすることを決めた。


 ちなみに、ユウの意見は全くといっていいほど反映されていない(聞かれてもいない)。


マカミ:「ユウ――」

ユウ:「は、はい」


 突然マカミに名前を呼ばれ、思わずユウは自身の背筋をピンッと伸ばした。


ユウ:(いきなり呼び捨て。しかも下の名前で)

マカミ:「俺は外で食糧を調達してくる。お前はここでゆっくり休んでろ」

ユウ:「わ、わかり、ました」


 そう言ってマカミはユウを部屋に残して出ていった。


ユウ:「…………」


 ここでようやくユウは部屋に一人となった。


ユウ:「はぁあああああ」


 一人部屋に残されたユウは二人用の広いベッドに思いっ切り、仰向けで倒れ込んだ。


ユウ:「なにがどうして、こうなっちゃったんだろ」


 いつも通り学校から家に帰ろうとしただけなのに…………


 あれよあれよという間に話が進んでいき、半ば強引に近くにあったビジネスホテル――実はもう一つ近くにホテルがあったのだが、明らかに今のユウたちが入ってはいけない、いかがわし……大人のホテルであったので、ユウが全力で拒否した――に連れ込まれたユウは状況が飲み込めないまま、部屋の天井にある小さいシミをボーッと見つめていた。


ユウ:(私がこの(神託)能力に目覚めたのって、いつだったっけ)


 確か…………


 物心ついた時に、すでにユウはこの神託(能力)に目覚めていた。


ユウ(三歳):(何だろう、これ)


 最初ソレを見た時、ユウはとてもきれいなモノを見た時のように目をキラキラ輝かせていた。


 自分を見る大人たちの周囲を黄色や桃色の薄いカーテンレースのようなナニかがユラユラと揺らめいていた。


 時々、赤や黒といった、見てて嫌な気持ちになる色の人もいたけど、幼いユウは極力、そういう人には近づかないようにしていた。


 ユウのその行動は結果的には、正解だった。


 次第にユウはこのカーテンレースのようなナニかが、その人の心の色(感情)を表しているモノなのだと、理解し始めた。


ユウの母:「ねえ、ユウ。お姉さん、とってもキレイよね」

ユウ(五歳):「う、うん…………」


 この時、ユウの母の前にいたのはユウの母の同級生。昔から付き合いのある、ユウの家より低い家柄のご令嬢。


 最近とある有名資産家との結婚が決まったと富裕層(お金持ちたち)の間で話題となっていた。


 ユウたちが出席していたのはそんな二人の結婚を祝した、婚前パーティ。


ユウ(五歳):「ねえ、お母さん」

ユウの母:「なぁに、ユウ」


 いつも見ている、いつもみんなに見せている母の太陽のような笑顔。だがユウには――


ユウ(五歳):「どうしてそんなに怒ってるの」

ユウの母:「っ――」


 その奥底、仮面の奥にある燃え上がるような赤い怒りの色(炎)がはっきりと視えてしまっていた。


ユウの母:「な、なに言ってるのよ、この子は。お母さん何も怒ってないでしょ。おほほほほ」


 ギロッ――


ユウ:「ひっ――」


 母は仮面を貼り付けたまま、娘を睨みつけた。仮面の奥にある怒りの炎(色)をさらに濃くして…………


 最初は小さい子特有の不思議ちゃん発言ということで微笑ましく見ていた周囲も徐々にユウの、自分の心の奥底を直接覗き込んだかのような発言を気持ち悪く思うようになっていった。


 自然と周囲の人間はユウを無意識に避けるようになった。


 この頃からユウは自身の能力が普通ではないこと(異質であること)を察し、自分が視た色(他人の感情)について、誰かに話すことはなくなった。


ユウ:「…………シャワー浴びよ」


 ユウはマカミがいない隙に、鬱屈した気持ちとしっとりとかいた汗を流すため、備え付けのバスルームへと向かった。




★★★




 一方その頃――


マカミ:(近くのコンビニで弁当でも買ってくるか。何が好きなんだ…………あいつ)


 これからユウを誘拐しようとした組織の正体を突き止めるまで、ホテルに長期滞在することを考えれば食料だけでなく日用品や着替えといった生活必需品も一緒に調達する必要があるのだが、マカミにその発想はなかった。


 食料(飢え)と飲料(渇き)さえ満たせればよいという考えがマカミの根本にあった。


マカミ:(まあ、食えれば何でもいいか)


 ホテルを出たマカミは、ユウを狙った誘拐犯たちの仲間がいないか辺りを警戒した。


マカミ:「っ――」


 周囲を注意深く観察していたマカミは、向かいの道路で車から降りる、よく見知った金色の髪の男を見て、一瞬思考を停止させた。


マカミ:(あいつがどうしてここに)

金髪男:「…………」


 目に見えない何かに引かれるように、金髪男はマカミの方へ振り向いた。


マカミ:(っ、マズイ)


 慌てて身を隠したマカミだが、金髪男の視界の端にはっきりマカミの姿が映ってしまった。


 直後、マカミと金髪男は同時に一歩、踏み出した。




│─\│/─│




ユウ:「ふー、ふふん、ふーん」


 何も知らず呑気に鼻歌を歌いながらシャワーを浴びるユウ。


 そこに――


マカミ:「ユウッ」


 ホテルを出てすぐ近くのところで金髪男の姿を目撃したマカミが急いで自分たちの部屋へと引き返してきた。


 部屋に戻るとそこには、ついさっきほどまでいたはずのユウの姿がない。


マカミ:「っ――」


 一瞬、さっきの誘拐犯の仲間たちに連れ去られたのではと脳裏をよぎったマカミだが、バスルームの扉からかすかに聞こえるシャワー音でホッと胸を撫で下ろした。


 だが今、二人に悠長にしている時間(暇)はない。


 今は一刻も早くこの部屋から出て、ここに向かっているであろう、あの金髪男から離れなければならない。


マカミ:「ユウッ」


 マカミは勢いよくバスルームの扉を開いた。


ユウ:「ヒャッ…………」


 マカミの突然の乱入に、身を隠すユウ。


 当然と言えば、当然だが扉の先にいたユウは一糸纏わぬ生まれたままの姿で――


マカミ:「っ――」


 突然バスルームに突撃され、身を竦ませるユウ。


 対して、マカミはソレを見て、驚き、目を見開いた。


 ユウの真っ白な、透き通るように美しい白髪に、マカミは一瞬、心を奪われた。


マカミ:「まずいことになった。急いでここを離れるから、早く服を着ろ」


 すぐに、我(自分の心)を取り戻したマカミは、端的にユウに用件を伝え、バスルームを出た。


ユウ:「…………」


 生まれて初めて、家族以外の異性(男の子)に自分の裸を見られ、呆然とするユウ。


マカミ:「早くしろ」

ユウ:「っ――」


 そんなユウをマカミは無理やり、動かし、二人は金髪男たちが来る前に、この部屋を出た。




★★★




 バンッ


屈強な男?:「動かないで」


 つい先ほどまで二人がいた部屋に、フロントからマスターキーを借りた一人の屈強な青髪の男?が、突入した。


 青髪の男?が突入したのは、マカミたちが部屋を後にしてからほんの十数秒後のことだった。


屈強な青髪の男?:「部屋には誰もいないわ。もう逃げた後みたい」

金髪男:「そうか」


 懐から通信機器を取り出した青髪の男?は、マカミが先ほどホテルの外で見た金髪男に部屋の状況を報告した。


 金髪男は仲間の青髪の男?にマカミのいる部屋に向かうよう指示を出し、自分は別の所へ向かっていた。


 金髪男はマカミという人間を、良く知る人物だった。




★★★




ユウ:「まずいことって」

マカミ:「…………」

ユウ:「私を狙ってる人たちにここの場所がばれたの」

マカミ:「…………」

ユウ:「ねえ、何か答えてよっ」


 ユウの質問にマカミは一切答えず、少しでも早く、少しでもここから遠くに離れることを優先した。


マカミ:「…………今は、ここから離れるのが最優先だ」


 二人が向かっているのは、フロントへ行くためのエレベーター、ではなく緊急避難用の非常口。


 ホテルのフロントと入口には金髪男の仲間が待ち伏せしているであろうとマカミは考えたのだ。


 実際、マカミのこの予想は当たっていた。


マカミ:(このホテルの非常口は、フロントと反対の建物の裏側に配置されている。建物を全方位取り囲む時間はあいつらにはなかったはず――あいつらの隙を突いて、この建物から出られさえすれば、あいつらを撒くのはそう難しくない)


 マカミは金髪男たちよりもこの辺りの土地に精通していた。人目の届きにくい、裏道には特に――


マカミ:「あの扉を抜ければ、この建物の外に出られる」


 マカミたちは誰にも気づかれることなく、ホテルの非常口の扉を潜り抜けることに成功した。


金髪男:「問題ない」

マカミ:「っ――」


 非常口の扉を潜り抜けた瞬間、マカミの鼓膜を聞きなれた声がノックした。


金髪男:「標的(ターゲット)はちょうど俺の目の前にいる」


 非常口を出たその先に金髪男はいた。


 金髪男はマカミの思考を読み、先回りしてマカミたちを待ち伏せしていた。


マカミ:(遅かったか)

金髪男:「そんなに慌ててどこに行くんだ――」


 金髪男は仲間の青髪の男?からの電話を切り、読み通りにノコノコと目の前に現れたマヌケ(マカミ)を見下ろした。


マカミ:「ヒカル…………」


 マカミが口にしたのは目の前にいる金髪の男――自分と同じ信正騎士団の正騎士の名前だった。


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