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神人類  作者: maow
番外編 少女A
41/50

過去編4 出会いは突然に

│─\│/─│


 桜の木が一本ある、近くの公園。


 学校からの帰り道に突然、謎の男たちに誘拐されそうになった少女は男たちに黒い(バン)に乗せられ、どこかに連れていかれそうになったところ、偶然、少女が誘拐される現場に居合わせた謎の黒髪の少年に救出された。


 少年に助け出された後、今回の件について話が聞きたいと言われた少女は、少年と共に近くの公園へ行くことに――


 公園内にあるベンチに少女を座らせた後、少年は用があると言って少女の元を離れていってしまった。


少女A:(話が聞きたいって言われても、私は何も…………)


 しばらくして少女の元へ、両手にクレープを持った少年が戻って来た。


少女A:(何、あれ…………)


 少年は両手にクレープを持ったまま、少女の隣、一メートルぐらい間隔をあけて座った。


少年A:「――食うか」

少女A:「…………いりません」


 少女は、少年が差し出したクレープをほんの一瞬だけジッと見つめると、すぐに首を横に振った。


少年A:「甘い物、嫌いなのか」

少女A:「…………」


 少年の問いに、少女は答えず。


少女A:「あんなもの見て、よくクレープなんて食べられますね」

少年A:「…………生きるためだからな」


 少年は、少女の問いに平然と答えた。




│─/│\─│




時は遡り、誘拐された少女を少年が助けたすぐ後


少女A:「あ、ありがとうございます」


 少年に拘束を解かれた少女は、差し伸べられた少年の手を取り、誘拐犯たちの車から外に出た。


 車の外では自分を誘拐した誘拐犯たちが全員、道の上で意識を失って倒れていた。


少女A:(これ全部、この人が…………)

少年A:「何者なんだこいつら」

少女A:「…………」


 当然、誘拐犯たちの顔に少女は見覚えがない。


 自分を誘拐しようとした男たちは全員、成人済みの大の大人。


 男の中でもかなり屈強な部類。


 対して、少女を助け出した少年はどう見ても、自分とそれほど変わらない、まだ十代の未成年。体つきも目の前で気絶している男たちより一回り以上小さい。


 とても少年一人で男たち全員を()したとは思えないが、現実は少女の目の前にありありと転がされている。


少女A:(ていうことは、この人も私と同じ――)


 少女の視線が気絶する男たちから隣に立つ少年に向けられた瞬間、誘拐犯たちの体から一枚の紙が顕現した。


少女A:「え、なに、これ」

少年A:「神の御業か」


 男たちの体から出現した羊皮紙のような見た目をした紙には、それぞれ同じ『依頼内容:写真の少女を誘拐して、目的の場所に連れてくる 報酬:一千万 対価:命』という文言と同じ人物の名前――


少年A:(男の名前――こいつらに誘拐を依頼した奴の名前か)


 とその下にはそれぞれ別の男の名前、誘拐男たちの本名(本当の名前)が記載されていた。


少女A:「これって」

少女A:「さしずめ、契約書みたいなものだろうな。お前を誘拐することがこいつらと依頼主の交わした契約(約束)ってことだな」

男D:「う、うう」

少年A、少女A:「――つ」


 誘拐犯のリーダー格らしき男が、意識を取り戻した。


 咄嗟に少年は少女を庇い、警戒態勢をとった。


 意識は取り戻したが、少年にあばらを折られ動けない男Dは目の前に浮かぶ羊皮紙のような契約書を見て、


誘拐男D:「ま、待て、待ってくれ――」


 恐怖で顔を歪めた。


 直後、羊皮紙の全体が血のように赤黒く染まり――


バンッ


 男Dの体が突然、爆散した。


少年A、少女A:「っ――」


 続けて気絶したままの他の誘拐男たちの体も――


バンッ、バンッ、バンッ


 跡形もなく爆散。血溜まりだけを残し、男たちの体は跡形もなく消滅した。


 男たちの体から現れた謎の契約書も、赤黒く染まった直後に空中に霧散していった。




│─\│/─│




時は戻り、現在


モグモグ、パクッ


 片方のクレープを食べ終え、少年はもう片方のクレープを食べ進めながら、少女に質問を始めた。


少年A:「お前を狙う組織、もしくは個人に心当たりは」

少女A:「ありません」

少年A:「だよな――じゃあ、誘拐される心当たりは」

少女A:「ありません」

少年A:「…………だよな」


 半ば予想はしていたが、少女に誘拐犯の心当たりはない。


 もう一個のクレープも口の中に頬張り、少年はしばし考え込んだ…………そして再び、口を開いた。


少年A:「じゃあ、どうしてあの道を歩いていたんだ」

少女A:「っ――」


 少年の問いを聞き、少女の纏う空気が一変した。


少女A「どういう、意味ですか」

少年A:「なんでわざわざ、あんな人通りの少ない狭い道を歩いてたんだ。すぐ近くにもっと人通りの多い大きな道があっただろう」


 少年の言う通り、少女の歩いていた道の近くには人通りの多い大通りもあった。少女と同じ方角の帰り道の生徒はほとんどがそっちの大通りを通って帰宅している。


 少女だけが、あの道を通って帰宅していた。


少女A:「そんなの、私の勝手でしょ」


 尻すぼみになる少女の言葉に、少年は彼女が日頃抱えている問題(苦しみ)について、察しがついた。


少年A:「お前の神託が関係してるのか」

少女A:「っ――」


 どうしてそれを、と言う顔で少女は少年の顔を見上げた。


 少年は、少女が自分と同じ神人類であるとすでに看破していた。


少女A:「あなたが、信正騎士団の正騎士だからですか」

少年A:「っ――」


 少女の言葉に、今度は少年が目を見開いた。


 少年は自分が信正騎士団の正騎士であると言っていない。言うつもりもなかった。


 だが、少女は少年が信正騎士団の正騎士であることを知っていた。


少年A:「どうして――」

少女A:「さっき、私を庇ってくれた時に信正騎士団のバッジがチラッとですけど見えました」


 少女を連れ去ろうとした誘拐犯たちが爆散する直前、少女を庇った少年の襟の裏側にしていた信正騎士団の象徴(エンブレム)を模した翼を生やした少女――天使を模した信正騎士団のバッジを少女に見られていたのだ。


少年A:「…………そうか」


 普段ニュースをあまり見ない少女でも信正騎士団のことは知っている。


新しい次世代型の人類――神人類至上主義を掲げる帝国対()その他世界全土(すべて)の構図で繰り広げられている大戦、第二次人類大戦。


 世界は、多くの神人類兵士を擁する帝国に為すすべなく蹂躙されていた。


 そんな帝国に抗う、世界側(帝国を除く)の唯一の対抗手段が民間の神人類組織、信正騎士団。


 信正騎士団という組織がなければ、第二次人類大戦はすでに帝国の勝利で終演を迎えていただろう。


 今、世界は信正騎士団の力を多分に借りて世界の在り様を大きく変えようとしている帝国に対抗している。


少女A:(どうして、信正騎士団の正騎士がここに)


 信正騎士団について、表面的な事しか知らない少女は信正騎士団の正騎士を、普段戦場を住処としている蛮族か狂戦士のような人々だと勘違いしていた。


 そこへ――


???:「あれれれれ」

少女A:「げっ」


 今日の昼休み、少女に絡んできたヤンキー二人組が現れた。


不良生徒A:「あーしらとの約束破って、男と逢引」

不良生徒B:「きゃー、やらしー」

少女A:「…………そんなんじゃ」


 ヤンキー二人組の姿を見て、少女は視線を落とした。


 そんな少女にヤンキー二人組の内の一人、不良生徒Aが肩に腕を回して、少年と少女の間に入る形で隣に勢いよく腰を下ろした。


不良生徒A:「んなことはどうだっていいや、それより約束の金はどうしたんだよ」

少女A:「…………持ってきてません」

不良生徒A:「ああん」

少女A:「っ――」


 少女の答えを聞き、不良生徒Aは(少女の)肩を掴む腕に力を込めた。


不良生徒B:「ちょっとちょっと、話が違うじゃん。あたしら友達でしょ。友達との約束は守らなきゃ」


 不良生徒Bを不良生徒Aと少女を挟む形で少女の隣にサッと腰を下ろした。


少女A:「あなたたちみたいな人にあげるお金はびた一文、ありません」

不良生徒A:「んだと、てめえ」


 空いた腕で少女の胸ぐらを掴む、不良生徒A。


少年A:「ちょっといいか」


 明らかに穏やかではない雰囲気にここまで傍観をしていた少年が話に割り込んだ。


不良生徒A:「部外者が割り込んでんじゃねえよ」

不良生徒B:「これは私たちとこの子の問題ですから、お兄さんはあっちいってて。しっ、しっ」


 ヤンキー二人組の話を少年は、完全に無視した。


少年A:「こいつら、お前の友達なのか」


少年の言葉に少女は首を振った。


不良生徒B:「なんならお兄さんがこの子の代わりに、私たちにお金を恵んでくれてもいいんですよ。対価はこの子のカ・ラ・ダで」

不良生徒A:「ぎゃははは、そいつはいいな。ま、こいつの貧相な体じゃ、十万にもなんねえだろうけど」

少女A:「…………」


ヤンキー二人組に好き放題言われ、無言で耐える少女。その様子に、少年はイラッとした。


不良生徒A:「がっ――」


 少年はベンチから腰を上げると少女の肩に腕を回し、大笑いする不良生徒Aの胸ぐらを掴み、無理やりベンチから立たせ、その顔を思いっきり、殴り飛ばした。


不良生徒B:「ちょ」


 慌てて、殴り飛ばされ地面に倒れる不良生徒Aに不良生徒Bは駆け寄った。


不良生徒B:「あんた何してんのよ。相手は女なのよ」

少年A:「だから…………それがどうかしたのか」

不良生徒B:「っ――」


パンッ


 冷たい眼でヤンキー二人組を見下ろす少年の頬を不良生徒Bは力いっぱい、ビンタした。


少年:「…………」


パンッ


 不良生徒Bにビンタされた少年は間髪入れずに不良生徒Bの頬を平手打ちして、やりかえした。


不良生徒B:「っ――このっ」


パンッ


 再び、少年をビンタする不良生徒B。


パンッ


 間髪いれず、再度、不良生徒Bの頬を平手打ちする少年。


パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ


 しばらく二人のビンタの応酬が続いたのだが、やがて…………


不良生徒B:「や、もうやめ――」


 いつまでも続くビンタの応酬に不良生徒Bの心が折れた。だが、それでも――


パンッ、パンッ、パンッ


 少年は不良生徒Bの頬を叩き続けた。


少女A:「も、もうやめて」


 少女に止められ、少年は不良生徒Bを叩くのをやめた。


 少年は地べたに座り込むヤンキー二人組を見下ろし、言った。


少年A:「もう二度とこいつに近づくな。もし、近づいたら――どうなるか、わかっているだろうな」

不良生徒A、B:「ひっ――」


 そう言われ、ヤンキー二人組はそそくさとその場から逃げ出した。


少年A、少女A:「…………」


 取り残された二人の間に気まずい空気が流れるが、そんなことはどこ吹く風で少年は少女にまだ、大事なあることを聞いていないことに気づいた。


少年A:「そういえばまだ名前を聞いていなかったな――俺の名前は真上英次(まかみえいじ)。お前は――」

少女A:「わ、私…………私は――」


 少年――信正騎士団の正騎士、真上英次(まかみえいじ)は少女に名前を聞いた。


少女A:「私の名前は、天使優(あまつかゆう)です」


 これが天使優(あまつかゆう)真上英次(まかみえいじ)の正真正銘、最初の、出会いの物語である。



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