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神人類  作者: maow
第二章
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第二十九話 招かれざる来客

マカミ:「誰だ、お前」


 突如マカミの前に現れたぼさぼさ赤髪の女。女は獲物でも見るかのような目で、マカミを下から上に視線を動かし、舌なめずりをした。


スノウ:「誰、この女」

マカミ:「知らん」

スノウ:「…………」

マカミ:「本当だって」


 目の前の女から放たれる身の毛のよだつ熱い視線に身構えていると、まさかすぐ隣から遥かに鋭く冷たい視線を投げ掛けられるとはさすがにマカミも思っていなかった。


 自分の首元にナイフを突きつけられているような感覚に肝を冷やしながら、マカミは赤髪の女と相対した。


ラフな格好の女:「あたしの名前はロック。うちらのリーダーがあんたに用があるってんでね。あんたを探してたんだよ。わりぃけど、ちょっっっとだけあたしに付いてきてくんねえか」

マカミ:「断る」


 マカミの答えをある程度予測していたロックは、そう言うと思ったぜという顔で、やれやれというジェスチャーをした。そして――


ロック:「そうかよ、じゃあ――」


ロックはマカミに獰猛な爪をむき出しにして飛びかかった。


ロック:「力尽くであいつの所に連れてってやるぜ」

マカミ:「――っ、速い」


 ロックの神託はトカゲの神託。


 瞬時に化神化をして、全身ぶよぶよの皮膚をした蜥蜴人間――RPGでよく見るリザードマンに酷似した姿になったロックは一メートルある長い湾曲した鉤爪をマカミに向け、躊躇なく振るった。


マカミ:「あぶねっ」


 猛スピードで突進してくるロックの鉤爪攻撃をマカミは咄嗟に後方に跳んで躱した。スノウもロックの鉤爪に巻き込まれないよう、自身の後方へと跳躍した。


マカミ:「お前、俺をリーダーの元に生きて連れていくんじゃなったのかよ」

ロック:「この程度の攻撃、躱せないわけないだろ。なんせお前は――」


 ロックの攻撃を躱したマカミは、ロックが次にどのような行動に出るのかロックの一挙手一投足に意識を集中させた。すると――


マカミ:「っ――」


 不意にマカミの全身を悪寒が襲った。


 マカミは悪寒の正体を確認することなく、前方に向かって勢いよく前転(ローリング)した。


おっとりとした女の声:「ああん、にげられちゃいました」


 前転(ローリング)した後、背後を確認すると、先ほどマカミが立っていた場所に巨大なタコの怪物が…………


ロック:「なにやってんだよ、オクティ」

オクティ:「うぅ、すみませぇん」


 ロックにオクティと呼ばれたおっとりした声の女はタコの神託を授かった神人類。現在は化神化してタコの怪物に姿を変えている。


マカミ:(仲間がいたのか)

ロック:「たく、相変わらずとろくせぇなお前は」


 前と後ろを蜥蜴女(ロック)蛸女(オクティ)に挟まれ、マカミたちは逃げ道を完全にふさがれてしまった。


マカミ:「(やるしかないか)――いくぞ」

スノウ:「はあ、仕方ないわね」

ロック:「おっ、やる気だな」

オクティ:「できれば穏便に済ませたかったのですがぁ」


 マカミがロック、スノウがオクティの方を向き、互いに背中合わせに――


 四人は臨戦態勢をとった。


マカミ、スノウ、ロック、オクティ:「……………………」

???:「おもしろそうなことをしているな」


 睨み合いをする四人の元へ、ロックの背後から一人の軍服を着た黒髪ロングの女が乱入して来た。


ロック:「エルザっ」

オクティ:「エルザさんっ」


 二人にエルザと呼ばれた軍服の女は、腰に差した計十本の細長い(サーベル)の内二本を抜き取ると、左右の手に一本ずつ持った。


エルザ:「私も混ぜてもらおうか」


 マカミたちが相手どらなくてはならない敵がもう一人、増えた。




★★★




 信正騎士団極島支部――


コンコン


???:「どうぞ」

フユキ:「失礼します…………」


 扉の先――今まで何度も入ったことがあるはずなのに、間違えて別の部屋入ってしまったかのような錯覚に陥ってしまったのは、きっとあの人がいないからだとフユキは思った。


???:「どうしたのフユキ」


 信正騎士団極島支部支部長室。室内の様子を見回し、しばらく呆けるフユキに本部より臨時支部長代理を任命された極島支部の新たな支部長は訝し気に首を傾げた。


フユキ:「あ、すみません支部長」

???:「――っ、いいわよ、いつもの呼び方で。どうせ私なんて事が収まるまでのとってつけ支部長なんだから」

フユキ:「そんなことは…………いえ、ありがとうございます、サイカさん」


 自分の事を支部長と呼ばせないのはサイカなりの気遣いであるとを察したフユキは、素直にサイカの厚意に甘えることにした。


 前・信正騎士団極島支部の支部長にしてフユキの相棒(バディ)――高宮秋(たかみやあき)は先日起こったヨハネの翼との全面戦争で殉職した。胸を鋭い何かで貫かれていたが、誰が、どうして、どのようにしてアキが命を落としたのか、真相は全て闇の中。


サイカ:「で、どうなの街の状況は」


 サイカの問いにフユキは無言で首を横に振った。


 現在、信正騎士団では組織の立て直しが何においても優先される最重要事項となっている。戦争で消耗した街の再興は二の次。


 信正騎士団はヨハネの翼との戦いで多くの者を失ってしまった。


フユキ:「第二次人類大戦後ほどではないですけど、あちこちで避難村(シェルター)に移ることができなかった神人類たちによる窃盗の報告が相次いでいます」

サイカ:「こんな時に…………何やってるのよユウは」


 信正騎士団極島支部支部長――高宮秋、信正騎士団の最高幹部(ラウンズ)序列一位――シムルグ・ウインド。序列五位――アボット。序列六位――エンペラー…………その他多くの極島支部の正騎士たち。


 それだけではない。サイカの相棒兼親友――天使優と序列三位――オーディンの二人はヨハネの翼との大戦後、行方が分からなくなっており、信正騎士団本部ではすでに二人とも死亡扱いにされている。


 当然、サイカはソレを信じていない。


フユキ:「今のところほとんどが食料品の窃盗ですが、やがて――」

サイカ:「(たま)の取り合いになっていくでしょうね」


 (ヨハネの翼との)大戦の全容を解明している時間(暇)は今の信正騎士団にはない。故に信正騎士団の上層部はイエローモンキーの団長――東洋写楽(とうようしゃらく)を今回の事件の首謀者――ヨハネの翼の頭首ということにして、半ば強引にこの事件の幕引きを図った。


 ブルーオルカ、グリーンベアのトップ二人はすでに死亡が確認されており、レッドバイソンの頭(ヘッド―)――一ノ瀬闘也(いちのせとうや)は意識不明の重体。唯一あの場にいた――神人類専用の留置所を襲撃して囚われていた神人類たちを解放させ、極島支部を襲わせようとした――が、唯一現場から死体が見つからなかった(実際シャラクはすでにマカミに殺されており、あの場に現れたのはシャラクの姿に自身の姿を変化させたロキなのだが)シャラクが一番、今回の事件の黒幕に仕立てやすかったのだ。


 後々矛盾が生じても適当に辻褄を合わせやすい。


 本部が公表した、このつぎはぎだらけのちぐはぐな報告書をサイカはすぐさま近くにあったゴミ箱に投げ捨てた。


サイカ:「他に何か情報は――」


 サイカの声音が少し変わった。鋭さが少し、増した。


フユキ:「一つ、気になる情報を手に入れたのですが」

サイカ:「何かしら」


 サイカは支部の立て直しに尽力しつつも、あの大戦の日、何が起こったのか、真実を知るためフユキに調査を依頼していた。


 サイカは今、極島支部支部長としてだけでなく一個人として、二足の草鞋(わらじ)を履きながら正騎士の活動をしている。


フユキ:「どうも今街では信正騎士団(僕たち)に代わってオオカミの仮面をかぶった謎の人物が、暴れている神人類を取り締まっているという噂が流れているようでして…………」

サイカ:「何よ、それ…………都市伝説」


 フユキの報告を聞き、サイカの目から急激に熱が冷えていった。


フユキ:「オオカミの仮面を被った謎の人物の目撃情報はうちだけでなく警察にも数多く報告されているようです。実際、何者かの通報を受けた警察や信正騎士団が現場に向かうと悪事を働いていた神人類が電柱やガードレールに縛られて拘束されているという事例がいくつもあり、巷では先日のヨハネの翼との大戦に終止符を打ったのもそのオオカミの仮面の人物だと噂している人もいるようです」


 フユキの報告を聞き、サイカは勢いよく椅子の背もたれに寄り掛かった。


サイカ:「噂よ、噂。こういう街が不安定な時はそういう変な噂や不審者が街のあちこちで自然発生し始めるのよ」

フユキ:「ですよね」

サイカ:(ユウと関係していそうな情報は、今回もないようね)


 サイカは再び背もたれから体を離して、支部長机に片肘をついた。


サイカ:「何とかして、早く街の治安を元に戻さないとね」


……………………コンコン


 突如、支部長室の扉を誰かがノックした。


フユキ:「来客ですか」

サイカ:「予定はないはずだけど」


 サイカたちがいるのはこの極島支部の支部長室。


 現支部長であるサイカと臨時で相棒登録しているフユキ以外がこの部屋に立ち入ることはまずない。


 以前のユウやサイカのように直接、支部長に指名され呼び出しを受ける場合もあるが、そんなことをした記憶はサイカにはない。


 つまり、これはサイカに無断での訪問。普通の事ではない。


コンコン


 返事がなく、扉の向こうの誰かは再びノックをした。


サイカ:「…………どうぞ」


 サイカは警戒心を高めたまま、扉の先にいる誰かの入室を許可した。


白衣を着た男:「これはこれは極島支部の新・支部長、鬼島彩夏(きじまさいか)殿。お初にお目にかかり光栄です。私はフランシスコ。共和国からの使者でございます」


 扉が開くと同時に、扉の先にいた白衣を着た男はサイカたちに向け、恭しく頭を下げた。



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