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神人類  作者: maow
第一章 
10/47

第十話 秘策

 包囲網の最前線より少し先――作戦決行現場でオフィスデスクを囲み、アリサたちは作戦の最終確認を行った。


アリサ:「私の秘策は先ほど伝えた通りです。良くも悪くも勝負は一瞬――準備はいいですね」

ユウ、サイカ、アキ:「はい」


 アキの秘策は時間が勝負の短期決戦。


 アキは作戦の実働部隊にユウとサイカ、そして自分自身を指名した。理由は単純、この三人が現在の極島支部の最高戦力だからだ。


アリサ:「マーリンたちはアキさんたちの作戦が無事完遂するまで私の護衛をお願いします」

マーリン:「オッケー、お姉さんにまっかせなさい」

シスター:「あんまり必要なさそうですけど」

フユキ:「何があってもいいように極島支部の正騎士が周囲を警戒していますので、安心してください」

アリサ:「ありがとうございます」


 作戦の確認が終わると、アリサは神器――細い刀身の根元に時計をモチーフにした装飾が付けられた時を司る剣――Ex(エクス)カリバーを顕現させた。


アリサ:「では――いきますっ」


 アリサは顕現させた神器を地面に突き刺し、カウントダウンを始めた。


アリサ:「さん」


 カウントダウンが始まると同時にユウ、サイカ、アキの三人はオフィスデスクの上に飛び乗った。


アリサ:「に」


 そして、アキと同じ風の神託を授かったフユキが周囲の空気をかき集め、圧縮。圧縮した空気の塊――空気爆弾(エアーボム)を机の下に設置した。


アリサ:「いちっ――」


 ゼロの掛け声の直前、フユキは机の下のセットした空気爆弾(エアーボム)を爆発。オフィスデスクに乗った三人はデスクごと垂直に吹き飛んだ。




│─\│/─│




 地上三十メートル下で発生した甲高い破裂音はオフィスビル最上階のフロアにいる人質たちの耳にも届いていた。


人質A:「な、なんだ」

人質B:「爆発」

人質C:「こんなオフィス街の真ん中で、ウソだろ」

人質D:「私たちどうなっちゃうの」


 騒然とする室内。


ブルーオルカ構成員A:「お前らうるせえぞ、ぶっ殺されてぇのか」


 人質たちの不安や焦燥は、彼らより優位な立場にいるはずのブルーオルカ構成員たちにも伝播した。


カイジ:「一体何が起きてるんだ」


 人質たちの動揺に当てられ、落ち着きを失う部下たちを余所目にカイジは外の状況を確かめるため、ガラス張りの壁に近づいた。すると、カイジの目の前を下から上に猛スピードで何かが通り過ぎていった。


カイジ:「奴らは」


 通り過ぎた何かの残像を目で追いかけていくと、その先にはオフィスデスクに載り、空中から自分たちを見下ろす標的――ユウ、アキ、そしてもう一人赤毛の正騎士の姿が――カイジは取引が決裂したことを瞬時に察した。


カイジ:「それがお前たちの選択か――なら」


 取引決裂を知ったカイジはすぐさま手に持った起爆装置のスイッチを入れようと視線を下に移した。だが――


カイジ:(か、体が――)


 スイッチを押す直前、カイジの体が突然充電の切れたロボットのように思い通りに動かなくなった。


 時の神託を授かったアリサの神の御業――時間停止(タイムストップ)である。


 突然体に起こった異変に今まで努めて冷静さを保っていたカイジだったがここで初めて動揺を露にさせてしまった。ほんの一瞬だが、カイジの思考が完全に停止した。


ユウ:「一撃――確絶」


 その隙を見逃すことなく、ユウは神の御業を発動。ユウ必殺の一撃がカイジの持つ、爆弾の起爆装置を斬り裂いた。




│─\│/─│




 フユキの神の御業――空気爆発(エアーボム)でユウたちは立て籠もり犯たちのいるビル最上階よりも五メートルほど高い位置まで飛び上がった。


ユウ:「高さばっちり――」


 ガラス張りの壁から、外の様子を伺うため壁近くに立っていたカイジをユウは視認した。手にはリモコンの形をした爆弾の起爆装置――ユウはすぐさま顕現させたままの神器、追想剣の刀身を黒色に変化させた。


ユウ:「一撃(いちげき)――隔絶(かくぜつ)


 ユウ必殺の神の御業、一撃隔絶。極限まで集中した状態、いわゆる全集中(ゾーン)の状態で放てる、距離も空間もあらゆる障害物を超越した神意の斬撃。


 ユウが剣を振り抜いた瞬間、カイジの手にある起爆装置が真っ二つに切断された。


カイジ:(っ――)


 カイジたちを圧倒的優位に立たせていた、ある意味カイジたち唯一の生命線である爆弾の起爆装置。ソレを目の前で切り裂かれた。常人ならパニックに陥り、このまま思考停止になってもおかしくない状況だが、日々命のやり取りを強いられるカイジの日常で培われた強い生存本能が停止しかけるカイジの脳を無理やり動かした。


カイジ:(この状況、アリサの、時の神託の力か)


 自身の体に起きた異変をアリサの神の御業と看破したカイジは自身を覆う神意の量を平時よりもさらに多く、厚くした。


 通常、神依で纏う神意は薄ければ薄いほど良いとされている。理由は単純、神意はわずかでも纏っていれば、神意を纏っていない、全ての自身を物理的に害する攻撃を防ぐことが出来るからだ。逆に言えばいくら厚い神意で自身を覆っても、神意を纏ったナイフを防ぐことはできない。薄い布をいくら重ねても容易にハサミで切断できるのと同じ理屈である。


 よって熟練者であればあるほど、戦闘経験が豊富な神人類ほど纏う神意は薄く均一である。


 だが例外もある。


 神意を介した直接的干渉、神意による直接的攻撃は纏う神意を厚くすることで影響を最小限に抑えることが出来る。


カイジ:「アリサの神の御業だっ。お前ら、いつも以上に神依を厚くしろ」


 神意を厚くして体を動かせるようになったカイジ。若干のぎこちなさは残るが、アリサの時間停止(タイムストップ)の影響は限りなく軽度となった。


 爆弾の起爆装置を破壊された以上、人質解放のためビル内に正騎士たちが押し寄せてくるのは時間の問題。カイジは間もなく開戦するであろう戦闘に備えるため部下たちに指示を出した。しかし――


バリィィン


 溝口海溝が特注で作らせた、超極厚の防弾ガラス。戦車の大砲ですら弾き返すが謳い文句の強固な極厚ガラスも神器の前では豆腐と同じ。いとも容易く砕け散った。


 カイジたちが体勢を整えるよりも早く、アキとサイカがビル内へ侵入を果たした。


ブルーオルカ構成員D:「正騎士だ」

ブルーオルカ構成員E:「構わねえ、人質ごとやっちまえ」


 突然目の前に現れた敵(正騎士)たちにブルーオルカの構成員たちは慌てふためき、手近な武器を手当たり次第に振り回した。


ブルーオルカ構成員B:「な、何だ」

ブルーオルカ構成員C:「弾が――人質にはじかれた」


 ブルーオルカ構成員たちがビル内へ持ち込んだ武器は主に二つ。一つは速射連射可能な機関銃。もう一つは柄の長いハンマー。機関銃をが旧人類、ハンマーが神人類用の武器である。


 神意で自身を守っている神人類に神意を纏っていない武具による攻撃は意味を為さない。だが、人質の旧人類は別。


 ビルの速やかな制圧ともしもの時は人質を盾にするため持ち込んだ武器だったが、機関銃の弾はおろか神意を纏わせたハンマーですら巨岩を思いっきり叩いたように時間(動き)を止めた人質たちに弾かれた。


アキ:「アリサ殿の言った通りのようだな」


 事前にアリサから聞いた時間停止(タイムストップ)という神の御業の仕様。アリサが剣を突き刺した場所を中心にドーム状にアリサの時間停止空間が広がっていき、その空間の中ではすべての物質が時間を停止させる。空間が展開されている間、何人たりも時が止まっているモノは傷つけることはできない。


 ユウやアキたちが今、時の止まった空間内で動けているのはカイジたちと同じく神依を厚くしてアリサの神の御業の影響を最小限にしているからである。


 先に乗り込んだアキたちに続いて、ユウもビル最上階へ突入した。


ユウ:「シュタッ――着地成功」


 ユウはサイカたちが割った大穴を潜り、ビル内部へ侵入。着地後、体操選手のように両手を上げた。


サイカ:「大げさな登場の仕方ね」

アキ:「時間がない。作戦通りいくぞ」

ユウ、サイカ:「了解」


 いつまでもこの空間が続くわけではない。アリサから聞いた話では空間の規模に比例して空間を維持できる時間も短くなる。この規模だと、アリサの見立てでは長くても五分が限度だと。


 時間停止空間が崩壊する前に速やかに立て籠もり犯たちを制圧するため、サイカとアキは互いに背中合わせに、ユウだけが下の階へ向かって走った。


ブルーオルカ構成員A:「これもアリサの神の御業の影響か……怯むな、相手はたったの三人だ。数で押し殺せ」


 ユウたちが行動を開始した後、数瞬遅れてハンマーを持った構成員たちが一斉にアキたちに向かって群がっていった。


アキ:「構射太刀(かまいたち)


 風の神託で極限まで加速されたアキの居合切りは、屋外であれば岩をも切り裂く風の斬撃を敵に向かって飛ばすが室内では周囲を巻き込む超局地的な台風を発生させる。


ブルーオルカ構成員たち:「うわあああああああああああああああああああああ」


 為す術もなくアキが起こした風の渦に巻き上げられるブルーオルカ構成員たち。


サイカ:「はあああああああああああ」


 反対方向ではサイカが神器(金棒)で群がってくるブルーオルカ構成員たちを次々となぎ倒していった。


ブルーオルカ構成員E:「何だこいつら」

ブルーオルカ構成員D:「強、すぎる」


 ビル八階はまさにサイカとアキの独壇場だった。


 一方、その頃ユウは――


ブルーオルカ構成員F:「上が騒がしいな」

ブルーオルカ構成員G:「様子でも見てくるか」


 上階でのアキたちの大立ち回りは、下の階で門番をしているブルーオルカ構成員たちにも伝わっていた。


ユウ:「やっほぉ」

ブルーオルカ構成員F:「な、なんだお前――っ」

ユウ:「ちょっっっとお昼寝しててね」


 突然、目の前に現れた正騎士に驚いている間に刀身の色を黒から黄色に変化させたユウは構成員たちの急所を柄で突き、意識を刈り取っていった。


ユウ:「起きたらぜーんぶ、終わってるから、いい夢見てね」


 起爆装置は破壊し無力化したが、爆弾自体は破壊能力を残したまま。強い衝撃を受ければ起爆装置なしでも誤爆する可能性がある。ユウの任務は速やかに下の階にいる構成員を制圧し仕掛けられた爆弾を回収すること。


ユウ:「時間もあんまりないし、じゃんじゃんいっちゃおうか」


 ユウの己の感情に呼応して刀身の色を変える神器――追想剣。喜びやワクワク、好奇心に彩られた歓喜の剣はユウに光のような速度で動く神の御業、光速移動を可能にする。


 ユウは光のような速さで下の階を駆け巡っていった………………


 戻って、サイカとアキに蹂躙される最上階。


ブルーオルカ構成員A:「す、すみません、カイジさん」

カイジ:(正騎士が強いのは百も承知だったが、まさかここまでとは)


 ついに最後の、この時が止まった空間で動ける神人類(構成員)がサイカに殴り飛ばされ、壁に激突。意識を失い、残されたのは――


サイカ:「下っ端はそいつで最後みたいね」

アキ:「ブルーオルカナンバーツー鮫肌海次(さめはだかいじ)。部下は全員無力化した。大人しく、投降しろ」

カイジ:(……………………これが俺たちの結末。俺に出来ることは、もう、何もない)


 カイジは懐からルビーのように赤く輝く宝石のような謎の果実を取り出し、口に入れた。


カイジ:「後はただ運命に身を委ねるだけ――ルオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

サイカ:「な、何」


 この戦いに、初めからカイジたちに勝ち目など用意されていない。そもそもブルーオルカが信正騎士団に勝てるなら他の組織と手を組むなんてこと最初からしているわけがない。


 だが、それでいい。


 これは勝つための戦いではない。


 咆哮を上げながら、カイジは人生で初めての化神化を行った。体は何倍にも巨大化し、顔も平べったく長方形の形に変形した。


 ハンマーヘッドシャーク。


 それがカイジの受けた神託。両腕にはギザギザの刃が無数に腕の先から肩までノコギリのように並んで付いていた。カイジの身に起きた異変はそれだけではない。


アキ:(神意の量が突然跳ね上がった、だと)


 個々の神人類が体内に保有しておける神意の量は生まれながらにしてほぼ決まっている。成長や訓練によりある程度ならば増やすこともできるが、極めて短時間の間に神意の量が二倍近くまで跳ね上がるなど通常はあり得ない。


カイジ:「ウオオオオオオオオオオ」

サイカ:「危なっ」


 横なぎに振られたカイジのチェーンソーのような腕をかわし、サイカはアキの隣まで距離を取った。


アキ:「一体何が起きてるんだ」


 事態が呑み込めず困惑するアキ。


サイカ:「あいつ、何か見境がなくなってるわよ」


 それ以上に突然のパワーアップを果たしたカイジは我を忘れて、凶器と化した両腕を所構わず辺り一体に振り回していた。


 今はアリサの時間停止(神の御業)の影響でいくら神意量が増したカイジが暴れようと時を止められている人質たちに被害がでることはない。だがそれも、アリサの神の御業が発動している間の話。いずれアリサの神の御業は解ける。そうすれば間違いなく人質の中から死傷者が出る。


アキ:「(考えるのは後だ。今は人質の身の安全が最優先――)行くぞ、サイカ」

サイカ:「オッケー」


 アキは地面を踏み抜く勢いで一歩足を前に出すとそのままま深く肩と腰を降ろし鞘に眠る刀を勢いよく振り抜いた。


アキ:「構射太刀」


 アキの全身全霊の神の御業は周囲にあるガラス張りの壁をその余波で全て粉々に破壊するほどの竜巻を発生させたが、それでもカイジに致命傷は与えられず。わずかに掠り傷を与えたのみ。


アキ:「浅い――だが」


 アキの狙いは、カイジに大きな(ダメージ)を負わせることではない。アキの本当の狙いは派手な大技を使ってカイジの注意を自分に向けさせること。


 アキが神の御業を放ったと同時にカイジの視界から外れたサイカはカイジの視覚に入らないように遠回りな回り道を急いで走破し、カイジの背後を取った。


サイカ:「隙ありっ」


 サイカは大リーグのスラッガー並みに腰を入れたスイングでカイジの頭を力一杯殴り飛ばした。


カイジ:「ガッ――」

サイカ:「良いの入った」


 まともな相手ならこれで頭蓋骨陥没、はしなくても脳震盪で意識消失、勝負ありなのだが――


カイジ:「ガアッ」

サイカ:「くっ」


 サイカ渾身の一撃を受けてもカイジが倒れることはなかった。カイジの意識はすでに失われている。カイジは自身の内、奥深くに根付く防衛本能に従いサイカに反撃した。金棒でノコギリの腕を防ぎ、直撃はならなかったサイカだがそのまま壁に全身を叩きつけられた。


アキ:「サイカっ」

サイカ:(やばっ、腰抜けたかも)


 神依で全身隈なく防御しているサイカならば、例え時速千キロで壁に叩きつけられても骨一本折れることはない。だが、衝撃はまた別。


 強い衝撃を受け、サイカは一時的に動けなくなってしまった。


 自我を失くしたカイジは理性のない獣と同じ。このまま何もしなければ、カイジは目の前にぶら下がるニンジン――動けなくなったサイカに飛びつく。


 アキはカイジの意識がサイカに向く前に、死地といって差し支えないカイジの懐に飛び込んでいった。


アキ:「構、射太刀」


今までと違い、風を介さない刀による直接の斬撃。


 アキ渾身の居合切りはカイジのノコギリの腕を切断………………だが、人間の腕は全部で二本ある。両方の腕を一刀で狙ったのだが、アキの最速の居合はスピードと威力に極振りしている分、精密性に欠けた。アキが最速の居合で斬り飛ばしたのはカイジの右腕一本のみ。


アキ:「無念」


残った腕がアキの頭上から迫る。


ユウ:「一撃、確絶」


 カイジのノコギリ状の腕がアキの体を肩から斜めに両断しようと迫る中、ユウの必殺の神の御業が無防備だったカイジの背中を真一文字に切り裂いた。


カイジ:「グアッ」

アキ:「構射太刀」


突然意識の外側からの攻撃を背中に深々と受け、思わず仰け反るカイジ。その隙を見逃すことなくアキは最速の居合で残ったもう一本の方の腕を斬り捨てた。


カイジ:「がはっ……」


 両腕を切断され、背中にも深い傷を負ったカイジは、そこで力尽きた。


アキ:「ユウ……」


 てっきり下の階の制圧を終えたユウが自分たちを心配して急いで最上階まで駆け上がって来たと思ったアキだが、周囲を見渡してもユウの姿は見当たらない。


 それもそのはず、下の階にいたブルーオルカ構成員たちの制圧はそれほど時間をかけず終えたユウだが、オフィスビル内に仕掛けられた爆弾を探すのに手間取った挙句現在絶賛迷子中である。


 今ユウがいるのはビルの真ん中、四階。アキたちのいる最上階(八階)ではない。


アキ:「…………」

サイカ:「ちょっとは私の心配もしなさいよ」


 ユウの姿が見えず戸惑うアキの元に、衝撃から回復したサイカが通信機器を片手に歩いてきた。


ユウ:「大丈夫、アキアキ」


 サイカの手に持つ通信機器の液晶画面にはビル四階にいるユウの姿が――


 壁に打ち付けられ腰を抜かされたサイカは片手で通信機器を操作し、今まさにアキをずたずたに引きされようとするカイジの姿を映像として送った。サイカからの通信を受けたユウは画面越しに神の御業、一撃隔絶を放ったのだ。


アキ:(やっぱりお前は大した奴だな)


 これでオフィスビル立てこもり事件は解決。同時に裏組織、ブルーオルカはトップ溝口海溝、ナンバーツー鮫肌海次を失い壊滅した。


 アキたちにのされたブルーオルカ構成員たちはしばらく意識を失ったまま。アキたちはとりあえず、ブルーオルカ構成員たちが持ち込んだ機関銃とハンマーを全て回収。回収した武器はサイカが預かった。


サイカ:「さっ、後の事はフユキたちに任せて、私たちは下に降りて疲れた体を休めましょ」

ユウ:「さんせーい」

アキ:「私は念のためここ残る、残った(旧人類の)ブルーオルカ構成員たちが何をやらかすかわからんからな」


 回収した武器を抱えながらサイカは一階を目指し、降りる途中で迷子のユウと合流した。


サイカ:「なんで迷路でもないのに道に迷うのよ」

ユウ:「だってぇえ」


 実は外部からの襲撃に備えてカイコウがわざと入り組んだ設計にしていたのだが、そのことを知る者はこの場に誰もいない。


 気づけば、アリサの神の御業が解かれていた。


 ユウと合流した後、二人はアリサの時止め空間が解除されたことで使えるようになったエレベーターを使い一階へ直行した。


 今頃、ビル最上階では何の脈絡もなく床に倒れている立て籠もり犯たちを見て人質たちがパニックを起こしてるだろうが、作戦は無事成功した。人質サイドの死傷者はゼロ。


 十分すぎる戦果を挙げ、外に出たユウたちが見たモノは――


ユウ:「なに……これ」

サイカ:「私たちがいない間に何があったっていうのよ」


ビルに乗り込む直前に見た光景とは似ても似つかない破壊されつくした街並みだった。

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