1ー5. セル2
少女を目にした時から、なんらかの違和感を感じていた。少女と目線は近いし、メイドは大きいし。
少女の言葉のお陰で現状を少してかめてきたものの……転生先の個体の記憶は一切残されていない。というか覚えててなかった。
少女のいう通り『転生者』というヤツで間違いないだろう。
部屋にある金縁の鏡で確認したところ、体はやっぱり小さかった。8、9歳くらいに見える。
サラサラな銀髪に翡翠色の目。顔立ちも整っていて前世のザ・モブ顔とは程遠い、美しい顔立ちをしていた。少女ゲームの攻略対象になれそうな程には。
自分の外見を賞賛していたら不意に左腕が動いた。勝手に動いたのだ。腕が頭上にきた時、鼻と耳の上に何かが乗っかった。外してみるとやはりかという感じだが眼鏡だった。
意識が戻った時には既に握られていたようだ。リティスを掴み上げたのは右腕だけど今までずっと気づかなかったのならば相当テンパっていたのだろう。
しかし動く眼鏡があるとは……不可思議な世界だな。
そもそも眼鏡自体はじめて掛ける。前世は視力が良かったし。今世の俺視力は良いみたいだし。そうなるとさらによく分からない。
俺がそう心で疑問に思っていたら、それに応えるように眼鏡は再び俺の鼻の上に掛かって話し始めた。
『はじめまして、鑑定眼のスキルを物理化したメガネだよ!唯一無二の君の味方だよ!必要な時にかけてね!ずっとかけてても良いんだよ!』
話すというより眼鏡に表示されたものを自分で読んだ。というか質問の答えにさえなっていない。ずっと掛けるって。怪我もしていないのに包帯を巻いている厨二病と同じではないか。断固お断りだ。
『えー、なんでよぅ。これでも上位魔具なんだよ?役に立つよ!』
うるさい奴だな。自分で必要な時って言ってたくせに。
『ひっど〜い!眼鏡傷ついちゃう!前言撤回!』
撤回って……ってか心読まれてね?
『読めるよ!』
最悪だよ!全部筒抜けとか……。ってそんなこと今はどーでも良いわ!(よくはないけど)読めるならとっとと質問に答えろ!
『はいはい冷たいご主人様ですねぇ〜。まぁなんなりとおき聞くだせぇ』
ホント何キャラだよ!?まぁ教えてくれるならばそれでいい。取り敢えず1番気になった事をぶつけてみた。
「俺は転生したんだよな。それなら俺はどこの誰だ?」
『そうだよん!ご主人様はローレン侯爵家の坊ちゃん!6人兄妹の末っ子で第4男、名前はセルゲルだよ!』
転生に関してはやっぱりか〜って感じだけど侯爵家かー。ヘー。すごーい!お金持ちぃ!道理で部屋がキラっキラなんー!っじゃないわい!!?ふざけんな!なんの冗談だよ!?
『冗談じゃないよ!初仕事だもん。信用して貰いたいんだから!』
冗談じゃないのか……。なら尚更だ。元・平民に貴族をやれと!口調下町の兄ちゃんだぞ!『キミは家に相応しくないね。出て行くが良い』とか言われちゃうんだ。あー。二回目の人生即終了のお知らせだわ。仮に何とかなってもこんな不自由な生活ごめんだ。
『落ち着いていきましょうご主人様!そうなると予想したので私が派遣されたんだ!全力でサポートするから諦めないで!』
そうなのか。派遣って何処からだよ。まあ頼りにはならなそうだが……
「わぁーったよ!ここで人生捨てるのも違うよな」
『ご主人様!考え直してくれたんね!』
「まあ。だが侯爵家の人間として生きてくのは普通に厳しいな」
人生捨てるという考えを捨てたものの。貴族として生きてくのは難しいと素直な感想を述べてみた。
『それなら冒険者にでもなれば?』
意外な答えが返ってきた。というかこの世界はそんなジョブがあるのか。普通に楽しそうだ。
『でしょでしょ!私もぶっちゃけ貴族のサポートよりも冒険者のサポートの方がしてみたいしさ!』
お前が行きたいのか。まあ、悪くない提案だ。素直にそう思えた。
『じゃあ決まりだね!この世界いろいろヤバいけど、ご主人様と冒険に行けるなんて最高なの!』
ん?ヤバい?何が?と聞きたかったが知らない方がいい事もあると思ったから聞かない事にした。
「約束、な!」
『うん!』
ただの魔具との会話だったが、この人生がなんだか楽しみになってきた。
「てゆーかそのご主人様ってのやめろ!むず痒い、セルでいい」
『でもご主人様はご主人様だからぁ……』
「セルでいい!めっちゃタメ口だし、なんのこだわりだよ!」
『分かった、セル、セルって呼ぶから!』
「それでいい。お前は……『メガネ』でいいよな!まんまだけど、いつか心を込めて付けるから!」
『くっふふ、楽しみにしてるよ!』
ただメガネだけど、そいつの人物像が思い浮かんだ。
俺の記憶がない代わりにメガネを手に入れた。俺はそう考えた。
話が一段落ついたので俺はメガネを外した。明るい奴だからちょっとだけ寂しいな。
【この世界での目標が定まって、仲間ができた】それだけだけど、俺はこの世界が楽しみになった。
その後メガネによって衝撃な事実を知る事になり、新しい中間も加わることとなる。
そして、とんでもない役割を押し付けられ、あの悪夢が始まる事を俺はまだ知らない。
読んでくれてありがとうございます!初ブクマ感謝!ありがとう!つけてくれた人!ここまでは内容が地味というかつまらなかったと思いますが、次の次の次の話くらいから本命が始まります!
次話もよろしくお願いします!