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1ー4. セル1

 『あと少し、あと少しだけ』と思いつつ、漫画を読みまくって結局徹夜した。テスト後なので2徹だな。

漫画に夢中になって、遅刻スレスレな事にも気が付かなかった。急いで1階にあるリビングに向かうと案の定母さんが朝ごはんを用意して待っていた。

 しかし悠長に朝ごはんなんか食べてる暇はなんかないので朝ごはんを断り、急いで家の外にある自転車に飛び乗った。

自転車をこぎ始めた時点で意識が朦朧としてきた。

 車通りが多く事故が多発するという交差点に差し掛かった。信号が赤である事にも気づかず、突っ込んでしまい『ドッゴォン』という鈍い音と共に横切る車に跳ね飛ばされてしまった。その直後に意識はおろか、命ごと吹き飛んでしまったのであった。


 俺はモブだ。周りにいた奴らはイケメンだった。小1から高1、その10年間回りはイケメン尽くしであった。

何をやっても『2番目』だった。それが嫌だと思ったことは一度もなかった。モブであることを後悔したこともなかった。『モブである事』には。 

 彼女が出いたことはない。女の子に告白された事もない。男に告白されたことはあった。しかも5回。モブなだけなら全然良い。むしろ楽で良い。

 だが、男に好かれる(恋愛的に)スキルなんて要らなかった。そうは思ったものの悪い奴らではなかった。気持ちに応えることは出来なかったけど、友達としては最高な奴らだった。

  

 母さん、父さん、あかり、元気にしてるかなあ。

 母さんはおっちょこちょいだけど、頑張って仕事も家事も疲れた顔ひとつ見せないでこなしていた。俺と妹に愛を込めて育ててくれた。

 父さんは仕事であんまり家に居なかったけど帰ってくる度にお土産をくれた。妹に甘々だったけど、家族を何より大切に考えて、頑張ってくれた。

 あかりとはよく喧嘩した。内容はくだらないけど楽しかったなぁ。落ち込んでる時は真っ先に声をかけてくれて、笑いかけてくれて、すっごい嬉しかったな。

 

 この世に未練がないと言ったら嘘になるかもしれない。

 もっと親孝行したかったし、あかりの結婚式も見たかった。アイツらとももっと一緒にいたかった。

俺にとって大切な人で、大大大好きで、掛け替えのないヒト達だ。まさかこんな事でもう会えなくなるなんて、思いもしなかった。

 母さんと父さんは泣いてるだろうな。あかりは「バッカじゃないの!」って泣き叫んでそうだ。アイツらも悲しんでくれてんのかな。目に見えたように光景が目に浮かぶ。母さんは俺の死を抱え込ま蹴れば良いけど…多分そうはいかないな。

 『拝啓、俺の大大大好きで、かけがえのない人達へこんなに早く居なくなってごめんなさい。

  これからが大切な時期だったというのに。

  すぐに忘れられちゃうのかな。覚えてて欲しいな。引きずってはほしくないけど……

  叶う事なら来世でも母さん達みたいな掛け替えのない人と出会いたいな。

  今までありがとう。永遠に大好きだ。ばいばい!』

と、届くはずのない手紙を、俺は心の中で書き綴った。

 周りに恵まれて、愛されて、幸せな人生だった。その分、何もしてあげられなかった。迷惑もかけてしまった。

思うことは沢山あったが、母さん達に、背中を押された気がした。『前に進んで』と。

 俺は俺の現世での未練断ち切って、現世を後にしたのだった。


 「おい、テメェ答えろ。ここは何処だ!?お前は誰だ?俺は死んだはずだぞ?どーなってんだ!」

気づいたら少女の胸ぐら掴み上げて叫んでいた。すぐに血の気は引いたが、罪悪感はハンパなかった。

 俺は質のいい服、少女はメイド服を着ていた。服装から見るに、俺の方が立場が上のようだ。

だからってホッとなんかするわけがない。か弱い少女の胸ぐらを掴み上げたのだ。幾ら偉くても、していい事と悪いことがあるだろ!?と、そんなことをした自分に問いた。正直今すぐにでも土下座をして謝罪をしたい。

しかし「ごめん」という間もなくメイドだと思わしき人物が駆けつけてきてしまった。俺の叫び声を聞いたからか。

本当に叫びたかったのは突然俺に胸ぐらを掴み上げられた少女の方だろうに。だが、あの状況で声ひとつ出さなかった事には違和感を持った。

 「セルゲル様、ご無事でしょうか?」

無事だ。どっからどう見ても無事ではないのは少女の方だ。お前の目は節穴か?と思ったが、メイドの態度を見るに、俺はこの家のご子息なのだろうから、その態度は妥当だったのだろう。

というか、俺の名はセルゲルというのか。

「ちょ、リティス何事なの?あなたセルゲル様に何かしたの?早く謝罪しなさい!」

メイドの言葉を聞き、自分の状況について考えていたらメイドが少女にそう言った。

「ごめんなさい、セル。もう絶対にしないですわ。」

と少女に謝罪されてしまった。謝りたいのはこちらだというのに。

 俺のことを『セル』と馴れ馴れしく呼んだことからそれなりに仲が良いことがわかる。それを許していた事から『セル』という人物像が見えてくる。

 少女の方に非はないので

「ああ、大丈夫だ」

と答えた。本当にこっちから謝りたい。

「ありがとうございますセルゲル様。娘にはしっかり言い聞かせますので。リティス、来なさい。お説教です。」

え?「ちょ、その子は何も悪くないですよ!」という間もなく、リティスと呼ばれていた少女が近づいてきて、耳元で囁いた。

「あなたも転生者でしょ。少し話がしたい。夜また来るわ」

と。

 その言葉の意味を確かめたかったが、リティスは母だと思われるメイドさんにつて行かれてしまった。夜にまた来てくれる様だったので追いかけはしなかった。少女への謝罪を含めて、聞きたいことはその時に聞く事にして、一旦状況を整理する事にした。



 




 読んでくれてありがとうございます!次話は、長くなるかもしれないし短くなるかもしれません!セルの続きです。よろしければ、次回も読んでくれたらな、と思います!ありがとうございます!

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