1-1.二人の転生者
まだまだ始まったばかりです!是非続きも読んで欲しいです!
真っ白な部屋に囲まれた広い部屋。ベッドの側に生けてある花や、天井に吊るされた豪華なシャンデリアは前世の我が家を思わせた。
忌々しい記憶だ。
『ちょっと待って。記憶?前世?何それ?』
という疑問が浮かび上がってきたが、それはすぐ打ち消された。他でもない自分の前世の記憶だ。
今までに無かった記憶が自然と湧き出てきたのである。一瞬の内で記憶に整理がついたのだ。
9歳の誕生日を境に私、『リティス・アーチャー』は前世の記憶を取り戻したのだった。
リティスの記憶によるとここはローレン侯爵家らしい。因みに今いるこの部屋はローレン侯爵家四男のセルゲルくんの部屋とのことだ。
私はローレン侯爵家のメイド頭の娘でだそうだ。
え?じゃあそのメイド頭の娘が何故大四男たるセルゲルくん部屋に居るかって?
遊びに来てるんだよ。侯爵様の方針で使用人の子で年の近い子を将来の護衛兼、友達として育てるらしいのだ。実にいい方針だと思う。
と、いう訳で私はセルの護衛兼友達なのだ。基本的には男ぼ子が付くらしいのだが、セルに年が近いのが私だけだったそうだ。セルというのは、セルゲルの愛称だ。
本来ならセルと遊んでいてここまで語る余裕などないのだが、、私の記憶が戻ってっからセルは一言も喋っていない。つまりここ3分間はずっと無言だったのだ。その目は現実を見てないように受け取れた。
普段のセルは明るくでお喋り、そんな印象だ。そんなセルがこうも無言なのはおかしい。
そう思った瞬間セルは私の胸ぐらを掴み上げて叫んだ。
『おい、テメェ答えろ。ここは何処だ!?お前は誰だ?俺は死んだはずだぞ?どーなってんだ!』
と。
この言葉を聞く限りコイツもおそらく転生者なのだろう。
「ねぇ」、と声をかける前に、その声を聞きつけた使用人たちが駆けつけてきてしまった。
この状況は流石にまずい。いくら護衛兼友達という立場でも使用人という立場上、セルを怒らせるのは問題なるのだ。
「セルゲル様、ご無事でしょうか?」
そう言って駆けつけてきたのは私の母のメイド頭、セレスだった。
「ちょ、リティス何事なの?あなたセルゲル様に何かしたの?早く謝罪しなさい!」
胸ぐらを掴み上げられた私を見て母も流石にまずいと思ったのか、私に謝罪を促してきた。まぁ、大事にはしたくないので素直に謝るとしよう。
「ごめんなさい、セル。もう絶対にしないですわ。」
ぶっちゃけ何もしてないがこう言っておけば間違い無いだろう。
当然セルの方も状況を流かめていないみたいで
「ああ、大丈夫だ」
とだけ答えた。
それを聞いた母は安堵の表情をしてからこう述べた
「ありがとうございますセルゲル様。娘にはしっかり言い聞かせますので。リティス、来なさい。お説教です。」
え。マジで?今からセルに問いただす予定だったのに。このまま着いて行ったらセルとしばらく話せない。せめてこれだけでもと、母を一旦無視して私はセルに駆け寄って耳元で囁いた。
「あなたも転生者でしょ。少し話がしたい。夜また来るわ。」
と。それだけ告げて私は母に向き直り、大人しく着いて行ったのだ。
2時間に渡る説教を耐え抜いた私は使用人の暮らす、使用人棟の自分の部屋で考え事をしていた。
前世で願った通り転生することはできた。が、リティスの状況からして愛されているかというと『別に』、という感じだ。
ローレン侯爵家の使用人に転生したことは幸いだった。もう一度令嬢として生きることにならなかっただけマシである。
転生したら旅に出たい。だから、セルを旅仲間にできないかと目論んでいた。喋り方からして一般人だろうから、貴族として生きるのは難しいだろう。本人が貴族として生きたいのなら無理強いをするつもりはないんだけどね。
母の説教が長かったせいか、そのようなことを考えていたらセルとの待ち合わせの時間になってしまっていた。余計なことを考えるのはやめにして、急いでセルの所に向かうとしたのだった。
『コンコンッ』
セルの部屋の扉を軽くノックして私は部屋に入った。
セルは私に座れと促した。とりあえず、セルの正面に腰を下ろすことにした。
先に口を開いたのは他でもないセルだ。
「転生者か?だったよな。お前のいう通り俺は多分転生者だと思う」
よっしゃあ!!と心の中で叫んだ。同じ状況の者がいると安心するというのは正にこういう事だろう。
「やっぱり。発言からしてそうだろうなと思ったよ。テンパるのは分かるけどいきなり人の胸ぐらみ掴みかかるのはどうかと思うけどね。」
「それに関してはマジごめん!つーか話し方変わりすぎじゃね」
「ごもっとも。本当はこの話し方なのだが、あの場で取り敢えず取り付くってみたんだ。」
「すげーな。」
本当は逆なんだけどね。前世に後退感があったから、この口調に変えてみたのだ、
「ってか何で分かったんだ?普通転生なんてもん信じないだろ?」
「ああ、それね。私も転生者だからだよ。」
「え、マジ?」
「ん、マジ」
「カーー、マジなヤツかよ。でも俺貴族とか無理だわ。」
それには同意だ。むしろこう言ってくれたコトで冒険者とやらに誘えるのだからね。それにコイツ馬鹿そうだし。
「だろうね。私もこの窮屈な立場はごめんだよ。」
「お、だよなー。いっそ2人でこの家出て冒険者でもやるか?」
「!?」
驚くことに向こうが誘ってくれた。こんな好機逃す手はない。
「あ、無理だよな、流石に」
「、、く。絶対行く。」
「え、マジ?そりゃ俺もそう言ってくれてうれしいけど無理強いは、、」
無駄な気遣いだよ。
「お前が言ってなかったら私から言ってたよ。それに金持ちには前世の怨みがあるから、ここに居たくなんかないんだ。」
と、素直な気持ちを述べてみた。ローレン侯爵家何も悪くないけど。
「やったー!この世界には魔物とかもいるみたいだし、よろしくな!えっと、、」
「リティスだよ、今世の名前はね。」
こうして軽い気持ちで冒険者になろぜ同盟を組んだ訳だが、そもそも侯爵様が許してくれるわけがない。そんなことぐらい2人は気づいていたが、今は異界での生き方を見つけたのだからそれで良いだろう。
リティスとセル、この2人が冒険に出られるのはいつの日だろうか。
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