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同情か侮辱か

いきなり侮辱を向けてきたパメラ。

しかし、彼女に対してエメリーヌは言い返すことはできない。


相手は格上の公爵令嬢だ。

無視して立ち去るのも無礼というもので、彼女は黙して俯いていた。


「ヴィクトル公はどう?

 どうせあなた方のことだから、碌に会話もしていないかもしれないわね。ヴィクトル公は本当に仕事熱心なお方で……あなたに構っている余裕なんてないでしょうし」

「いえ……いいえ!

 ヴィクトル様は私を大切に想い、接してくれていますわ!」

「あら、そう? そう思い込んで現実逃避しているといいわね。

 令嬢魔法の使えない貴族を愛する人なんているのかしら」


露骨に嘲笑するパメラ。

ヴィクトルの本質を知らないからこそ、こんなことが言えるのだろう。


「でも驚いたわ。あなたがクロード殿下の夜会にいらしているなんて……

 ヴィクトル公もいらしているの?」

「はい。パメラ様は招待客のリストになかったはずですが……」

「アンドレ様についてきたのよ。

 いつもこんな感じで、目についた夜会に参加しているわ。

 滅多にお呼ばれしないエメリーヌ嬢は知らないでしょうけれど」


アンドレが遊び回っていることは知っていた。

婚約者のときも常にアンドレは不在で、他の令嬢と遊んでいたから。

エメリーヌに構ってくれることなどなかった。

誕生日も、聖祭の日も……放置されていた。


「パメラ様は寂しくないのですか?」

「は……?」

「アンドレ様はいつもお遊びになっていて、構ってくれないのでは?

 元婚約者である私だからわかります。パメラ様も手持ち無沙汰で歩き回っていたのではないですか?」


エメリーヌの問いにパメラは硬直した。

一瞬、エメリーヌに何を言われたのか理解できなかったのだ。

しばし時を置いて彼女の顔が紅潮する。


「あなた……私がアンドレ様に愛されていないとでも!?

 エメリーヌ嬢のような無才と違って、私には才能があるのです!

 令嬢として価値のないあなたが愛されないのは当然で、価値のある私が愛されるのは当然! 私に自己投影するのはやめなさい!」 


急に大声を張り上げたパメラに、エメリーヌの肩は震える。

純粋に疑問をぶつけただけだった。

だが、ここまで激怒されるとは。


パメラの怒りは収まらない。

彼女は勢いに任せてエメリーヌの腕を掴んだ。


「きゃっ!?」

「そこをどいてちょうだい! 目障りよ!」


そのまま腕を引き、乱暴にエメリーヌを突き放す。

力任せに投げられたエメリーヌの足元は揺らぎ、体勢を崩して壁の方へ飛んだ。


だが、彼女が怪我をすることはない。

何か温かいものに受け止められ、何とか衝撃は免れたようだ。


「──無事か、エメリーヌ」


「あれ……ヴィクトル様……?」


いつしかエメリーヌを抱きとめていたヴィクトル。

彼は少し息切れしていた。

どうやら急いで駆けつけたらしい。


急いで離れようとしたエメリーヌ。

だが、ヴィクトルの抱擁は彼女を離さない。


「俺の婚約者に対してこの横暴……パメラ嬢、許されると思うのか?」

「っ……ヴィクトル公?

 いえ、これは……先に不敬を働いたのはエメリーヌ嬢ですので」


急に現れたヴィクトルにパメラは驚いた様子だったが、

エメリーヌに責任をなすりつけて言い繕う。


依然として抱きとめられたままのエメリーヌ。

彼女をそっと背後に隠してヴィクトルは怒気を発した。


「黙れ。この俺自身が目撃者として、問題にさせてもらうぞ。

 俺の愛する婚約者を傷付けようとしたこと……看過できん」


愛する婚約者。

あくまでパメラを糾弾するための嘘かもしれないが、

初めて自分を愛していると言ってもらった。


ここまで自分のためにヴィクトルが怒ってくれるとは思わなかった。

エメリーヌの頬は朱に染まる。

パメラは狼狽した様子で抵抗を続ける。


「先に手を出してきたのはエメリーヌ嬢ですわ。

 私は正当な防衛をしたまでです」

「いいえ、私は何もしていません! ヴィクトル様……」

「わかっている。俺はエメリーヌを全面的に信じよう。

 お前は嘘を吐くような人間ではない」


だが、エメリーヌが手を出していないという確証もない。

第三者の目線で見れば、この件は平行線をたどるだろう。

つまりパメラを糾弾することはできない。


「あらあら……喧嘩はおよしなさいな」


だが、さらなる人物の登場によって状況は変わる。

騒ぎを聞きつけてやってきたのはベルナデット王女だった。

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