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【コミカライズ4巻発売中】うちの王太子殿下は今日も愚かわいい~婚約破棄ですの? もちろん却下しますけれど、理由は聞いて差し上げますわ~  作者: メアリー=ドゥ
第四章

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そなたは心が弱い。

 

「『禍ツ星』、ですの?」


 無事に祝賀祭も終えてしばらく。

 ワイルズと共に呼び出されたディオーラは、ベルベリーチェ上妃陛下の言葉にパチパチと瞬きした。


「そうじゃ。このアトランテに住んでいた多くの『ヌシ』やハムナのピラミッドに封じられていた『不死の王』よりも、さらに強大な魔性が、天より降り来るらしいの。それが太古に封じられていた存在なのか、天を巡っている魔性のモノが気まぐれに降り来るのか、それは分からぬが」


 するとワイルズも、キョトンとした顔で首を傾げる。


「それが降ってくると、何か問題があるのですか?」

「さての。まず『禍ツ星』と呼ばれているだけで、それが石の塊なのか、魔獣のようなものなのか、あるいは全く別のモノなのか、その辺りも分かってはおらぬ」


 上妃陛下はそう言いながらも、パシリと扇で軽く掌を打って、言葉を重ねた。


「が、それが【災厄】と言われている以上、何らかの危険と見て対策するのが重要じゃ」


 ディオーラは、そんな上妃陛下に質問を投げかける。


「その『禍ツ星』は、確実に降ってくるものなのでしょうか?」

「【魔獣大侵攻スタンピード】の前に訪れた遠く西にある大公国でも、その頃に【災厄】が起こるという予言があっての。少々剣呑であった故に、備えておる。杞憂に終われば問題ない。違うかの?」

「確かに、仰る通りですわね」


 そう言いながらも、ディオーラ自身には分かり切ったことである。

 今のは、ワイルズにも同じように思って欲しいと考えての質問だった。


「わたくしがハムナに赴いた際に、リオノーラ夫人の助言を受け入れたのも、万一に備えてのことでしたし」

「そうなのか?」

「ええ。危機管理というのは、そういうものなのです。『何も起こらなければそれが一番良い』と考えた上で、備えるのが大切ですわ。だって誰も傷つかないのは、良いことでしょう?」

「なるほど、確かにそうだな」


 ―――万一の備え、にしては、少々上妃陛下の口数は多いように思われますけれど。


 言っていることは正しく、疑う余地もないけれど、あえて気を抜かせない為に『疑う余地をなくしている』ようにも感じられた。

 ので、そういう方向で殿下に説明してみたのだけれど、ディオーラの予想は当たっていたようだ。


「ホワホワールが、『禍ツ星』が降り来る時、ワーワイルズを災難が襲う、というような予知をもたらした」

「え、お祖母様が?」


 ワイルズが目を丸くするのに、上妃陛下はジロリと彼に目を向けた。


「わ、私は災難に襲われるような悪いことは何もしてませんよ!?」

「……ご自覚がないのであれば、己の日頃の行いを振り返られては? つい最近も、【飛竜草】の件で災難に襲われておられたと記憶しておりますが」

「ディ・ディオーラの言う通りじゃ。しょっちゅう人に迷惑を掛けておるから、我が身に返るのであろう」


 いつもならこの辺で黙り込むのだけれど、今日のワイルズは黙らなかった。


「そ、それでも、災難に見舞われるほど悪いことなどしておりませんが!?」

「しとるじゃろうが! 【飛竜草】の件以外にも、ディ・ディオーラに対する婚約破棄騒動に始まり、【懐き薬】の件も、グリフォンの卵の件も、皇太子留学の時の件も、廃嫡絡みの件も、ハムナ王国への旅行の件も、祝賀祭の魔獣園の件も! ぜっんっぶ、そなたの振る舞いで迷惑を掛けておったじゃろうが!?」

「いや廃嫡は言い出したの上妃陛下ですし、イルフィールのとハムナのは私のせいじゃないですよ!?」

「そもそも、そなたが最初からしっかりしておれば騒動が大きくなることもなかったわ!」

「そんな訳ないでしょう!?」

 

 ギャンギャンと言い合う上妃陛下とワイルズに、ディオーラは扇を広げて袖をクイクイと引き、口を挟む。


「殿下、殿下。愚かな振る舞いがファインプレイだったのはハムナの件だけで、それ以外は上妃陛下の仰る通りですわ」

「愚かって言うな!」

「とにかくじゃ! そなたは、しばらくディ・ディオーラの側に居れ。くれぐれも……く・れ・ぐ・れ・も、『禍ツ星』が降るまでは、余計なことをせず、大人しくしておれよ?」

「わ、分かりました」

「いいか、本当に、余計なことをせず、大人しくしておれよ?」

「何で二回も同じこと言うんですか!?」

「耳が聞こえているかどうかすら信用出来んからに決まっておろうが!! くれっぐれも! 余計なことをせず! 大人しく! しておれよ!!」

「3回目ぇ!?」

「もし起こるとすれば、それ程の【災厄】が起こるのですね? そして、殿下の身に危険が迫る、と」


 しつこいくらいの念押しを聞いて、ディオーラはやはりそれが確実に起こることなのだろう、と確信する。


「そうじゃ」

「殿下が災難に襲われる理由に関して、推測はついておられますか?」

「……いいや。ホワホワールの予知に過ぎぬのでな」


 珍しく、上妃陛下の歯切れが悪い気がした。

 こちらに向ける視線にも、どこか含みを感じる。


「ワイルズ、そなたは心が弱い。サボる、逃げる、面倒くさがる、好奇心に勝てぬ……そういう『弱さ』に、今回ばかりは負けることは許さぬぞ。ディ・ディオーラの側で、大人しくしておれよ!」

「ちょっとしつこ過ぎるのでは!? 分かりましたよ!!」

「これまでの18年間で!! 一度でも!! 言うことを聞いて『大人しく』していたことがあれば!! わらわとてここまでしつこく言わんわ、この馬鹿者が!」


 またギャンギャンと言い合いが始まる横で、ディオーラは考える。

 どういう理由があるかは今のところ分からないけれど、災難に襲われるワイルズの側にディオーラを置いておく、というのがアトランテ首脳部の決定なのだろう。

 多分、皆様方の中で推測は立っている。

 ワイルズが危険と言われて、皆様方が何も調べず考えない、ということはあり得ないからだ。


 ―――心が弱い……。


 ディオーラ自身は必ずしもワイルズの行動や内面をそうは思わないけれど、先ほどの歯切れの悪さを含めて、上妃陛下ご自身もあえてそういう言い方をしている気がした。

 

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