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【コミカライズ4巻発売中】うちの王太子殿下は今日も愚かわいい~婚約破棄ですの? もちろん却下しますけれど、理由は聞いて差し上げますわ~  作者: メアリー=ドゥ
第二章

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『預言者』と『魔導師』。


「リオノーラ夫人、あなた方もここに用があったのですわね」

「そうですわ〜。間に合って良かったですわね〜」


 ピラミッドの中に入ろうとしたディオーラ達のところに訪れたのは、レイデンとリオノーラだった。


 レイデンがリオノーラを降ろした後に、そのままピラミッドの中に突っ込んでいった。

 どうやら神獣が入り口を開いたら、誰でも出入り出来るようになるらしい。


「『預言者』は、どの辺りからこの状況になることを見抜いておられましたの?」


 あの船で一緒になったのも、もしかしたら偶然ではないのかもしれない、と、流石にディオーラでも気づいている。


 するとリオノーラは、相変わらずニコニコのほほんとした様子で、ゆっくりゆっくり人差し指を立てた。

 そのまま目を閉じて、トン、トン、トン、と3回こめかみを叩く。


 彼女が再び目を開いた時、少々様子が変わっていた。


「あまり時間がありませんので、手短に説明致しますわ。『魔導師』様」

「そちらが貴女の本性ですの?」


 のほほんとした様子から一転、深い知性を感じさせる眼の色と淑女らしい立ち振る舞いに変化したリオノーラは、小さく首を横に振る。


「いえ、ちょっとした特技ですわ。疲れるので、あまりやりたくはないのですけれど」

「失礼、ディオーラ嬢。リオノーラ夫人。少々話が読めないのだが」


 イルフィール陛下が申し訳なさそうな様子で口を挟んでくるのに、ディオーラは小さく頷いた。


「少々お待ちを。……〝行きなさい〟」


 魔力を込めた発声で命じると、神獣らが素早く立ち上がってピラミッドの入口に順番に身を躍らせる。


 中から漏れ出る瘴気の気配を感じていたので、話をする間の時間稼ぎである。

 ワイルズ殿下、レイデンに神獣を加えれば、さほど危ないということもないだろう。


「リオノーラ夫人は、この状況を想定して動かれていた、ということですわ」


 ディオーラにヒントを出したのは彼女である。

 しかもリオノーラは『王のしもべ』を遊ぶ前から、ハムナに向かうことを口にしていた。


「少し前に、災厄が起こりましたわね。その際に、この地に魔人王や魔王獣に類する存在が封じられているのではないかと、文献や知識から読み解きましたの。懸念で済めば良かったのですけれど」


 リオノーラの言葉に、イルフィール陛下は眉根を寄せる。


「文献から? そのようなことが記されているものがあるのか?」

「直接的な記述ではございませんけれど、各国の成り立ちと複数の文献から、あり得ること、とは考えておりましたわ」


 先ほどヘジュケ殿下が話されていたような事実を、推察したということなのだろう。


 もしそれが事実であれば、リオノーラは驚異的である。

 今まで一度も、学会等に参加なさっている方々から、その名を聞いたことがないのが不思議な程の博識であり、頭脳明晰な人物だ。


「ヘジュケ殿下。一応確認致しますけれど、貴方の差金ではないのでしょうか?」

「はい。リオノーラ夫人とは、あの船で行った遊戯の時が初対面ですね」


 彼も、少々驚きを滲ませながらリオノーラを見ていた。


「はっきりと明言なさらなかったのは、何か事情が?」

「あの時点では、まだ憶測に過ぎなかったからですわ。ヘジュケ殿下の立ち位置も不明でしたから」


 リオノーラは薄く微笑み、小さく首を傾げる。


「最悪、レイデン一人で対処可能でなければ、〝光の騎士〟やディオーラ様方に応援を要請するつもりだったのですけれど……その前に、ハムナ王とワイルズ殿下が動かれたので。少し様子を見ておりましたの」

「貴女は何者なのです?」


 他国の、それも王族に関わる話である。

 それを一人対処しようという目的が分からなかったのだけれど。


「わたくしは、ただのライオネル南部辺境伯騎士団長夫人ですわ。」

「それで納得すると?」

「本当に、これを何かに利用しようというつもりはないのです。理由があるとすれば、今後の平和の為に憂いを断っておこう、という程度ですわ」


 リオノーラは、ディオーラが睨むように目を向けても揺るがなかった。


「災厄に各国が協力して対処したことと、特に差はございませんわ」

「無私である、と? 高潔な考え方ですわね」

「人は助け合うものですわ。英傑揃いのアトランテは独立独歩ですけれど。他の国と違い、被害0と聞いた時は流石に呆気に取られましたわ」


 ベルベリーチェ上妃陛下指揮の下、国から離れていたワイルズ殿下以外の直系王族総出で対処した件のことだろう。

 元々、国土が防御結界に覆われているのみならず、アトランテ王族は他国と比べても突出した能力を持っているのである。


「リオノーラ夫人は、戦闘の方は?」

「申し訳ございませんけれど。貴族学校を一年で中退しておりますので、基礎的な魔術くらいしか扱えませんの。知識はあれど、実践の方は全く」


 彼女自身は万能、というわけではないらしい。

 

「では、ここで陛下がたと共にお待ちくださいませ。始末をつけて参りますわ」


 ディオーラはヘジュケ殿下を含む三人の周りを覆う防御結界を発動し、ピラミッドの中に向かった。


 床の中央が神獣が通れる程度に大きく開いており、そこから未だ断続的な戦闘音が響いている。

 が、瘴気の気配そのものは、随分弱まっているようだ。


 蛇腹刀ウルミィを手にしたまま、ディオーラはその中に身を躍らせた。

 

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