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【コミカライズ5巻発売中】うちの王太子殿下は今日も愚かわいい~婚約破棄ですの? もちろん却下しますけれど、理由は聞いて差し上げますわ~  作者: メアリー=ドゥ
第二章

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ワイルズ殿下から見て、どうですの?


「飽きた!」


 ハムナに向かう道中で、大欠伸をしたワイルズ殿下は、またそんな事を言い始めた。


「と言っても、どうしようもないですわ」

「飛べばもっと速いではないか!」

「バンちゃんを置いてきたのは殿下でしょう。だからアトランテを出る時に、飛ばないのですかとお聞き致しましたのに」


 殿下の白い飛竜バンちゃんや、ディオーラの乗騎であるグリちゃんは置いてきてしまっている。

 一応皇帝陛下御一行ということで、馬車ではなく地竜に牽かせている竜車なので、馬車よりは格段に速いのだけれど、飛竜に比べれば遅い。


 護衛の人数の問題で、飛んでしまうと向こうに着いた時のイルフィール陛下の護衛の人数が減ってしまうからである。


 ちなみにハムナに向かっているのは、ディオーラとワイルズ殿下、ヘジュケ殿下、そしてイルフィール陛下(・・)のみ。


 スラーアはついて来れないので、メキメルを引き留めた。

 オーリオは皇国側の縁戚への挨拶回りがあり、それに付き合ってウォルフも皇都に居残っている。


 ウォルフはさらに『海が近い方が良い!』とも言っていたので、多分砂漠の近くで港のないハムナに行くのが嫌だったのだろう。


 帰りにはどうせ皇都に戻るので問題はないのだけれど、話し相手が減って暇になった殿下が駄々を捏ねているのだ。


「いっそ走るぞ!」

「わたくしもイルフィール陛下もヘジュケ殿下も、ワイルズ殿下の足のついていける訳がないでしょう。そもそも皇帝陛下を走らせようとしないで下さいませ」


 ーーー全く、愚かですわねぇ。


 ディオーラはこういうワイルズ殿下が好きなので、特に気にはならないのだけれど、と同乗しているイルフィール陛下とヘジュケに目を向ける。


「申し訳ございません」

「構わない。が、確かに退屈だな」


 イルフィール陛下は、ククッとおかしげに笑った後、ヘジュケ殿下に目を向けた。


「この速度だと、ハムナへの到着はいつ頃だ?」

「そうですね。順調ですので、後三日といったところでしょうか」

「だそうだ。ワイルズ、王には忍耐も必要だぞ」

「む!?」

「どうだ、ディオーラ嬢。今からでも遅くはない。こんな短気な男とは婚約を破棄して、私の側妃にならないか?」


 これは軽口の類いである。

 なので、ディオーラはニッコリと答えた。


「あら、悪くないですわね」

「ディディディ、ディオーラ!?」

「冗談ですわ」


 ワイルズ殿下が本気で焦ったので、即座に発言を撤回する。


「愚かですわねぇ、殿下。わたくしが今更、そんな選択をする訳がございませんわ」


 もしそうするつもりなら、昔イルフィール陛下に誘われた時に受け入れている。


「そ、そうか……じゃない! なら最初から否定したら良いだろう!」

「……殿下が今まで、何度わたくしとの婚約を破棄しようとしたか、覚えておられまして?」

「1回だけだ!!」

「3回ですわ。懐き薬の件も殿下のせいですし、上妃陛下が怒ったのも殿下のせいですわ」

「上妃陛下の件は、どう考えても不可抗力だろう!?」

「殿下がしっかりしていれば済んだ話ですもの。つまりわたくしが婚約破棄を口にするのは、3回までは許される、ということですわ」


 扇を広げて、ディオーラはコロコロと笑うが、ワイルズ殿下は納得しない。

 ぐぬぬぬ……と両手を膝の上で握り締めて、吐き出した言葉は。


「ヤダ!!」

「子どもではないのですから、もう少し違う言い方をなさいませ」


 殿下は本当に、無能ではないのに、こういうところだけはいつまで経っても変わらないのである。


「相変わらず、仲が良いな」

「それはもう。こうして旅行が出来るのも、殿下のおかげですわ」


 と、ディオーラはシャラリと音を鳴らして腕輪を示してみせる。

 少々欠陥のある瞳のせいで、魔力が体調に影響する自分の状態を、瞳の代わりに安定させてくれるものだ。


「知っているとも。その代わりに、グリフォンの養殖技術を公開したこともな」

「それについて、イルフィール陛下はどうお考えですの?」


 ディオーラが微笑んでみせると、イルフィール陛下は肩を竦めた。


「率直に、余計なことをしてくれた」

「おい! 率直すぎるだろう!」

「素直な気持ちだろう。何せアレのせいで、勢力図が変わる可能性があるんだ。うちとしてもそちらに手をつけざるを得ない。皇位を継いだばかりで、難儀なことだ。なぁヘジュケ」


 と彼が問いかけると、ヘジュケ殿下は小さく首を傾げる。


「どこよりも先に運用すれば、むしろ益ともなりましょう」

「それは違いないがな」


 その穏やかなやり取りに、不穏さはどこにもない。

 であれば、リオノーラの発言は気にしなくて良いのだろうか。

 

 ーーーけれど。


 もしヘジュケ殿下が何かを企んでいるのなら、おそらく狙いはイルフィール陛下である。


「ワイルズ殿下」

「何だ」


 足を組み、不貞腐れたように窓の外に目を向けているワイルズ殿下に、ディオーラはさりげなく話のネタの形で問いかける。


「殿下から見て、ヘジュケ殿下はどのように映りまして?」

「ヘジュケ殿の印象……?」 


 ワイルズ殿下は片眉を上げて、チラリと彼を見る。


「剣の腕はさほどでもなさそうだ」

「なるほど、他には?」

「他に……そうだな、あまり自分から喋らんとは思うな!」


 ディオーラは小さく頷き、ヘジュケ殿下に目を向ける。


「どうでしょう、ワイルズ殿下の人物評は?」

「そうですね。実際、あまり剣も喋るのも得意ではありませんね」

「では、何が得意なのだ?」

「そうですね……」


 ヘジュケ殿下は、少し考えてから、こう答えた。


遊戯ゲームは、得意かもしれませんね」

 

 と。

 

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