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【コミカライズ4巻発売中】うちの王太子殿下は今日も愚かわいい~婚約破棄ですの? もちろん却下しますけれど、理由は聞いて差し上げますわ~  作者: メアリー=ドゥ
第二章

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フェンジェフの源流、ですの?


 ーーーフェンジェフ皇国、皇都。


 港から、他の王族やお祝いの物品、旅の荷物、護衛兵等と共に南大門から入ったディオーラ達は、鮮烈な赤を基調とした皇宮の美しさに感心しながらイルフィール殿下とスラーア殿下にご挨拶に赴いた。


「久しぶりだな」


 イルフィール殿下のご挨拶に、ディオーラは淑女の礼(カーテシー)の姿勢を取る。


「またのお目通り叶い、誠に光栄でございますわ」

「この度の皇位継承、祝いに来た」


 ワイルズ殿下の言葉に、イルフィール殿下は目を細める。


「ああ、ありがとう」


 横では、スラーア殿下がピュン! とメキメル様に近づき、キラキラとした目で彼を見つめながら両手の握り拳を口に当てている。


「メキメル様〜!! お久しぶりですー! 相変わらず尊大でカッコいいですわ〜!!」

「お前も相変わらず良い女だな」


 メキメル様は基本的に尊大だけれど、どうやらスラーア殿下の前ではいつもより格好をつけているようだ。


「ヘジュケも、ご苦労だった」


 イルフィール殿下が声を掛けると、柔らかい微笑みを浮かべてひっそりと控えていたヘジュケ殿下は、静かに頭を下げる。


「とんでもございません。此度(こたび)の件において重要な使節をお任せいただけたこと、誠に嬉しく思っております」

「ああ」


 ディオーラが見る限り、少しイルフィール殿下の表情が固いようだ。


 皇位継承前に既に婚姻自体は済ませているらしいイルフィール殿下は、継承の儀を終えて祝賀を終えるとすぐにハムナに旅立つのだ。

 彼にワイルズ殿下と共に旅行に誘われた先の国ではあるけれど、リオノーラの発言が真であれば、何か起こりそうな気配はする。

 

「ハムナへの旅行は、何か意味がございますの?」


 ディオーラが尋ねると、イルフィール殿下は軽く片眉を上げて、ヘジュケ殿下は表情を変えなかった。


 『王のしもべ』を遊んだ時もそうだけれど、彼は表情を隠すのが上手い。

 イルフィール殿下への問いかけの体でカマを掛けてみたのだけれど、どうやら失敗したようだった。


「む。単なる観光ではないのか?」


 ーーー愚かですわねぇ……と言って差し上げるのは、この場合少々可哀想ですわね。


 彼はリオノーラから耳打ちをされた訳ではないからだ。

 ディオーラは、ワイルズ殿下の疑問に微笑みと共に答える。


「単なる観光であれば、ご婚姻の際の旅行でも宜しかったではないですの。皇位継承後の忙しい時期にわざわざ重ねる必要はないのでは、と思ったのですけれど」


 随分な強行軍だと、お誘いを受けた時から思ってはいたけれど。

 彼女の発言を受けて、そこにどんな意味があるのかを探っておく必要があったのだ。


 するとイルフィール殿下は何故かヘジュケ殿下に目を向けた。


「特に秘しているわけではございませんので、説明はご随意に。もし面倒なようであれば、私の方から説明しておきますが」

「いや、そういう訳ではない」


 イルフィール殿下は軽く肩をすくめた。


「聖地巡礼だ」

「聖地、ですの?」

「ああ。我がフェンジェフは、系譜を遡ればハムナより分たれた血統なのだ。厳密には、ハムナが現在存在している大河の辺りにあった王朝から、だな」


 それは、ピラミッドを作った古代の国の話だろう。

 古代文明、と呼ばれ、現在は滅んでいるけれど、その文明が滅んだ理由は不明ということだった。


 一説によると、その文明は東の大陸だけでなく中央大陸までも支配していたといい、それぞれから同じ文明の魔導具が出土することもあるという。

 

 フェンジェフとアトランテにある防御結界の魔導陣も、研究の結果同一のものであるらしいので『アトランテにも同じ文明があった』とする説もあった。


 もしかしたらアトランテ王族も同様の源流を持つのかもしれないけれど、そこに関しては記録がないか、秘されている。

 アトランテの発祥は、最初に現れた魔獣を操る王が大島を征服したところから始まっている、というのが正式な記録だからであり、何処から現れたのかは不明だからだ。


「ハムナの王朝より血筋が分かたれ、フェンジェフを興した。そして時代が下るにつれて力関係が逆転し、属国として支配下に置いた。皇国の神話ではピラミッドのあるハムナの王都の辺りを『聖地』としており、そこに詣でる為に過去の皇帝が攻めたのだろう、とする説が有力だな。実際、その後に現在の慣習が生まれている」

「なるほど……」


 ヘジュケ殿下は、特にその話に思うところはなさそうに思えた。

 ということは、敗北し属国となったことに対する遺恨、という線ではないのかもしれない。


 けれどそうでなければ、イルフィール殿下の硬い表情と、ヘジュケ殿下が『狂信者』であるという話は、どこにどう繋がってくるのだろう。


 疑問は解消されないまま面会は終わり、ディオーラ達は式典に参加した後にハムナへと旅立った。

 

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