さ、本番ですわ。
【民衆】側の役職
『民衆』:特に何も能力のない人
『神官』:『王のしもべ』から、『民衆』を一人守ることが出来る人。
『預言者』。神のお告げにより、怪しいと思った一人が『王のしもべ』かどうかを知れる人。『狂信者』は人間なので『民衆』だとゲームマスターから伝えられる。
【王のしもべ】側の役職
『王のしもべ』:夜になるたびに『民衆』側を生贄に捧げる人外の存在。
『狂信者』:不死なる王を崇めており、『王のしもべ』ではないが『王のしもべ』に協力する人間。
【第三勢力】の役職。
『魔術師』:妖魔ジンとの取引で、追放された者が『王のしもべ』であったかどうかを知れる人。『狂信者』に関しては、『預言者』と同様。
「今日も王国の夜が明け、朝がやって参りました。『王のしもべ』は、昨晩生贄を拐わなかったようです」
ヘジュケに代わりゲームマスターとなったメルフィレスが、微笑みと共に告げる。
「議論時間に移りましょう。今回、多くの『民衆』に怪しいと目された人物は……ウォルフ殿下です」
「オレか!」
流石に少しルールを理解したらしいウォルフは、むん! と肩に力を入れる。
「よし来い!」
「手合わせではなくてよ、ウォルフ殿下」
オーリオのツッコミを聞きながら、ディオーラは周りに目を走らせる。
ーーー今回、おそらくワイルズ殿下は『民衆』ですわね。
表情を努めて隠してはいるけれど、どことなくリラックスしているのがディオーラには分かる。
何らかの役職があれば、殿下は気負う筈。
ちなみに今回、『神官』だけ追加した場合『民衆』側が有利になりすぎるということで、『王のしもべ』側である『狂信者』と、投票で追放された者が白か黒かが分かる『魔術師』も追加されていた。
しかしこの『魔術師』は、少々特殊な立ち位置である。
第三勢力、と呼ばれる『民衆』側でも『王のしもべ』側でもない人物で、『王のしもべ』が追放された時に生き残っていると一人勝ちになる、というルールに則った存在だった。
この人物は一人なので立場が弱いが、追放した者の役職が知れるということは、『王のしもべ』が何人残っているかが分かるので、情報的に有利になれるのである。
追放された『王のしもべ』を事前に庇っていた人が、『王のしもべ』側である可能性も高くなるので、その人物を集中的に詰めることも出来る。
しかし第三勢力である『魔術師』は、それを『民衆』には伝えない。
伝えた段階で、生き残らせたら『魔術師』の勝ちになってしまうので、『王のしもべ』と『民衆』の両方の票が集まってしまうからである。
「ウォルフ殿下を怪しいと目した方、どなたか出られまして?」
オーリオが問いかけると、ヘジュケが手を挙げる。
「私です」
「なるほど。何か理由がございまして?」
「特に深い意味はありませんが、あえて言うなら、他に怪しい人物がいなかった……という点でしょうか。私は最後にゲームマスターと話しましたので、皆様が帰って来られる際の様子を観察しておりましたが、皆様、変わった様子が見受けられなかったので」
ヘジュケは笑みを浮かべて、首を傾げる。
「良くも悪くも、様子の変わらないウォルフ殿下を指名した次第です」
「オレは『王のしもべ』ではないぞ! 怪しんだ方が怪しい気がするぞ!」
「ウォルフ、それ、一つ前にオーリオが言ってたことそのままだな」
何度負けても自信満々なウォルフが口にした言葉に、ワイルズがツッコミを入れる。
つまり、それだけ余裕があるということなので、やはり『民衆』で間違いなさそうである。
ディオーラはそこまで確認すると、口を開く。
「他に、ウォルフ殿下が疑わしいとゲームマスターに伝えた方は?」
「私もですわね」
答えたのはオーリオだった。
他の人々にも問いかけたが、どうやらウォルフを怪しんだのはこの二人だけだったようだ。
ーーーヘジュケとオーリオに繋がりがあり、ウォルフ殿下と対立している、と。
「他に、誰か疑わしいと感じられた方は?」
「わたくしは〜、ディオーラ様のお名前を挙げさせていただきましたわ〜」
ゆっくりゆっくり手を上げたのは、リオノーラだった。
「あら、わたくしに何か、変わった様子がありまして?」
「はい〜。何だか、周りを探るような様子が見受けられましたので〜」
「こうした遊戯で、それは当たり前ではありませんこと?」
何か様子が違ったり、緊張していたり。
そうした要素を拾って話を進めていくのが、こうした遊戯の常套手段である。
「そうですわね〜。これまでの試合でもディオーラ様は〜、皆を均等に眺めておられましたわ〜。けれど今回は〜、より注意深く〜、読みやすい方に視線を留めておられたように、見受けられましたの〜」
ニコニコと口にしたリオノーラに、ディオーラは目を細めて、パラリと扇を広げた。
ーーーこの方は、本当に油断なりませんこと。
思わぬ強敵の出現に、ディオーラは思わず口元が緩む。
「なるほど、わたくしの様子がおかしかった、というお話でよろしくて?」
「そうですわ〜」
【ここまでの関係性】
対立
ヘジュケ・オーリオvsウォルフ
リオノーラvsディオーラ
中立
ワイルズ(民衆?)
メキメル
レイデン




