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【コミカライズ4巻発売中】うちの王太子殿下は今日も愚かわいい~婚約破棄ですの? もちろん却下しますけれど、理由は聞いて差し上げますわ~  作者: メアリー=ドゥ
第二章

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怪しいのは、あなたですわ。


「面白そうな〜、遊戯ですわね〜?」

「ご一緒させていただきます」


 ワイルズに連れて来られたリオノーラは相変わらずホワホワと笑っており、レイデンは律儀に頭を下げた。


「では、まずカードを配ります。皆様目を瞑って下さい。……配り終えました。お互いに見えないように確認して下さい」


 ヘジュケの言葉に従って、目を開いた面々はそれぞれにカードを手に取る。

 ディオーラ自身は、『民衆』だった。


「私は、全員の役職を確認致しました。今回は『しもべ』のカードが2枚、『民衆』のカードが4枚『預言者』のカードが1枚入っております」

「つまり、『しもべ』を二人見つけるのですわね?」

「その通りです、ディオーラ様」


 ヘジュケはにこやかに頷いた。


「これから、少し離れたところに一人一人呼びますので、『しもべ』と『民衆』の方はそれぞれ怪しいと思う人を一人、口にして席に戻って下さい。『預言者』の方も同様ですが、その怪しいと思った人が『民衆』であるかどうかを、私が告げます」


 そうしてヘジュケが離れると、ディオーラは素早く他の面々を見回した。

 『狼と羊』では、それぞれの表情や緊張から、誰が『狼』であるかを探る、というのは、ディオーラが得意とするところだ。


「ワイルズ殿下がたは、客船を降りた後、フェンジェフ皇国の皇都に向かれるのですよね?」

「あ、ああ。レイデン達は、ハムナの観光に向かうのだろう?」

「ええ。リオノーラが、ピラミッドの実物を見たいと言うので」


 レイデンは落ち着いているようだった。

 ワイルズは少し緊張しているので、おそらく『しもべ』か『預言者』の役職持ちなのだろう。


 ーーー殿下は、相変わらず分かりやすいですわねぇ。


 彼がこうした遊戯が苦手なのは、単純にすぐに顔に出て見抜かれるからである。


「どのくらい、ハムナには滞在なさいますの?」


 オーリオが扇を広げて顔を隠しながら、話の輪に入っていく。

 元々、淑女として表情から感情を悟らせないのが得意な彼女なので、特に役職は読めない。


「以降の予定は決まっておりません。数日間は滞在する予定ですが、ピラミッドを見学した後は、皇都に向かうか、別の繁華街に赴く予定です。ライオネル王国に向かう別の客船が一ヶ月後の出立ですので、その辺りで港町に戻ろうかと」

「ピラミッドは〜、とっても不思議だと聞いていますわ〜。黄金比の巨大な正三角錐の建築物が〜、宙に浮いていると〜」


 リオノーラが、手を胸の前で組みながら笑みを深める。

 この仕草が演技なのか、あるいは受ける印象通りにのんびりとした人柄なのか、彼女もオーリオとは別の意味で読めなかった。


「建物が浮いている!? それは凄い!!」

「ウォルフ、なんで知らねーんだよ。家庭教師の魔術史学で習ってる筈だろうが」

「忘れた!!」

「堂々と言うようなことじゃねぇからな!?」


 ウォルフはそもそも緊張とは無縁な性格をしており、メキメルも同様。

 結局、表情から多少なりとも読み取れたのは殿下だけだった。


 ーーーちょっと楽しいですわね。


 少しは手応えがありそうである。

 ディオーラは、この手の遊戯に関しては、情報的にフラットで推測で進める『民衆』が一番面白い、と思っているタイプである。


「ピラミッドは、世界魔術七不思議の一つですものね」


 フェンジェフ皇国やハムナ建国以前の古代に存在したという『バルア』という国の代には既に存在していたというそれは、逆三角錐の巨大な穴の中に浮いているのだ。


 上から見ると、下向き三角の中に上向き三角が収まっているような形である。


 ピラミッドの頂点だけが穴にギリギリ触れる形で存在している為、中に入れるようになっているのだが……それを王墓として利用し始めたのは、ハムナ建国以後だという話である。


 『大地を流れる魔力を利用して永久的に、内蔵された魔導術式が浮遊の魔術を行使し続けているのだ』と言われているが、ピラミッドの正体も、本来の目的も、実際は謎に包まれている。


 そうこう話すうちにディオーラがヘジュケに呼ばれる番が回ってきた。

 これで最後である。


「では、ディオーラ様。怪しい人物を一人、指定していただけますか?」

「そうですわね……ヘジュケ様が怪しいですわ」


 ディオーラが少し茶目っ気を見せて答えると、彼は僅かに目を見開いた。

 しかし、すぐに面白そうな表情になると、彼は小首を傾げる。


「さて。私はディオーラ様に何か、怪しまれるようなことをしましたか?」

「ふふ……そうですわねぇ」


 ぱらりと扇を広げたディオーラは、彼の目をジッと覗き込む。


「ハムナは、海に面した港を有する属国ではございませんわね。そして、赴く先は皇国直轄領の港町ですわ。なのに、出迎えを任されたのはヘジュケ様……これは、少々おかしな話ではないでしょうか?」


 旅行先の属国で案内役に適任とはいえ、もし出迎えの為だけに長期旅行を命じられたのであれば、仮にも次期国王である筈の彼にとっては、理不尽極まりない話である。


 皇都で初対面でも良いはずなのだから。


 なのに彼は、わざわざアトランテ王国まで出向いた。

 イルフィールが意味もなく、そうした真似を命じるとも思えない。


 基本的には、彼はワイルズやディオーラに好意的なので、ヘジュケはイルフィールの信任が厚い、と取っているのだけれど。


「なるほど。『ハムナは皇国に翻意あり』として、その忠心を試されている……ディオーラ様はそのように捉えておられる?」

「そのような畏れ多いこと、考えてはおりませんわ。単純に、おかしな話と思っただけでしてよ」


 こちらの含みを悟った彼は、真正面から問い返してくるが、動揺は見られない。


 ディオーラとしても、本気ではなかったのだけれど。

 彼もまた、本心を隠すのが上手い。


「出来れば、貴方ともこの遊戯をしてみたいですわね。ゲームマスターとしてではなく、プレイヤーとして」

「他にマスターを務めていただける方がいれば、喜んで」

「ふふ。本当に怪しいのは、ワイルズ殿下ですわ」

「承りました」


 そうしてディオーラは、彼と連れ立って皆の元へと戻った。

 

ゲーム開始ぃいいいい!!


正直、成り立ちは本編に全然関係ないですが描きたかった『ピラミッド』の件。

古代皇国の、魔術に優れた第三代皇帝が、単なる永久機関の実験で戯れに作っただけの『箱』です。


周りの大地が砂漠なのは、これが地の気を吸い上げているからですね。

ちなみに、副産物としてオアシスを生み出したりスフィンクスに長寿を与えたりしてますので、一長一短の代物です。


元々中身は空洞だった上に、ピラミッドを壊そうとしなければスフィンクスも襲って来ないので、ハムナの祖先が盗掘者対策に王墓として利用し始めた、という感じです。


以上、設定語りでした〜。

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