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フロンティア in the Frontier ~ブレテ島とマノミの狩人~  作者: よっしー
ブレテ島の狂気
34/49

10

「でかっ!」


はやっ、蹴りっ、避けろ。間一髪、受け身を取って、見る。こいつらは、強敵だ。3m近い巨体に、あの素早さ、氛もなかなか大きい。ユウジとナプーは、大丈夫そうだ。


「お前の戦った敵か?」

「違うよ!」


来た、速い蹴り、でも単調だ。右に飛んでかわし、下っ端の顔面に着地、飛び上がって回転、巨体の後頭部へ、蹴り、重、だが手ごたえ、あり!敵は顔面から壁に激突、顔がめり込んだ。


「はっ!」


あっちもユウジが吹っ飛ばした。中段突きか、思い出す。あれをくらって何度もゲロを吐いた。ん、こっちはまだ動きそうだ。ライトを当てる。ダメージは、不明。


「ナオミ」

「ナプー!」


ヘルプだ、向こうは大丈夫だろう。あとはこいつ。だが、何か変だ、暴れ、始めた。飛び跳ねて、腕を振り回す。まずい、氛が高まっている。


「何か来る!」


ナオミは一歩引いた。予測不能だ。仲間も、殴ってる。それに、また氛が。敵は不意に飛び上がった、高い。両手を組んでる、頭の上で、やっぱり地面に、叩きつけた!粉砕、


「ぐっ!」


岩の破片か、腹にくらった。また一歩引いて、な、投てき!顔面、避けろ。間一髪、滅茶苦茶に破壊して、投げまくってる。やっぱり仲間も投げてる。どうしたものか。ユウジが隣に来た。


「どうなってんだ?」

「分かんな、いっ!」


下っ端が飛んで来た。可哀そうに。


「そっちは?倒したの?」

「足元を見ろ」


何かある。これが、あいつ?鎧が粉砕されている。中身は、普通の人だ。あの中段突きか。


「そこにいろ。おれがやる」

「うん」


敵は壁に激突し、破片が飛び散った。それを持つか、まるでバスケットボールだ。それより、また氛が、仕留めに来た。ユウジも岩を拾う。こっちも氛が、でかい。振りかぶってる、


「ふんっ!」


投げた、右腕に命中、相手の岩を弾いた。え、ユウジが、いない。距離を詰めたか。


「はっ!」


敵の前にユウジだ。それよりも、敵が、強く発光している。ライトを照らしても、なお輝く。キィィーッ、こいつも、来るか、いや、弾けた!鎧が吹き飛ぶ。本体も、どこかへ飛んで行った。ナオミとナプーは駆け寄る。


「兄さん、大丈夫?」

「ああ。ちょっと予想と違ったが」


確かに。一体目は弾けてない。二体目は、たぶん全力だ。ギリギリまで粘ったのだろう。周囲を照らしてみたが、本体らしきものは見当たらなかった。下っ端が、相変わらずウザい。


「ユウジ」


な、ナプーが名を呼んだ。まだ会って数時間なのに。はいはい、ナプーの手に携帯を乗せる。


「あの敵は、なかなか強かった。それを拳だけで。私には無理だ」


私だってあのくらい、ナオミは下っ端を殴り飛ばす。


「ナプーさんには、遠く及ばない」


訳を聞いたナプーは、ユウジを見て微笑む。ユウジも笑っている。普段は仏頂面なのに。ナオミは下っ端を蹴り飛ばした。思ったより、飛びが悪い。


「早く行こ」

「そうだな」


しかし滅茶苦茶にやり過ぎだ。岩が転がって歩きにくい。通路は2つ、右か左か。


「どっちにする?」


ユウジは考えているようだ。考える必要あるのか。えいやで決めればいいのに。


「左に行く。この巣穴は、でかい岩場の西端に掘られている。つまり、右方向に広がりはない。右は別の出口に繋がってるかもな」


はいはい、左が行くべき道ね。ナプーも左を見ている。こっちはマノミの直感だろう。


「りょーかい。ナプーも左?」


左を指差すと、ナプーは大きく頷いた。


「ついて来い!」


何だかナプーは、生き生きしている。満身創痍とかは関係ない。できることを、全力でやっている。いや、こういうことが好きなだけか。


左の通路に入った。ナプーの後ろのユウジについて行く。通路は広い。子供もおらず、なぜか下っ端も追って来なかった。しかし距離が長い。100m近くは歩いたか。う、


「くっさ、」


ここにきて。だんだん慣れて来たのに、その上を行った。これは、今度こそ糞尿のにおいだ。トイレでもあるのか。ようやく前方が開けて来た。敵は、まだ見えない。


「止まれ」


何か、様子が、あっ。


「発光が、ない?」

「いや、奥」


ユウジが左を差す。人型に、発光している。慌ててライトを照らす。が、敵はいない。なぜ、高速で移動したか。別の場所を照らす。え、また出た、でも照らすといない。一体、ナプーが奥へ移動する。ナオミもついて行くと、すぐに分かった。


「なんだ、壁の模様か」

「ただの模様じゃない。よく見ろ」


これは、どんどん近づく。ただの模様じゃない、彫刻だ。敵が2人、並んで走っている。立体の部分に合わせて、コケが発光していた。自然にできるわけない。


「あいつらが作ったのね」

「おい、これ見ろ」


ユウジは壁を引っ掻いた。岩、じゃない。ボロボロ剥げ落ちる。奥にコケか、発光している。表面には、一体何が、ナプーはにおいを嗅いでいる。手を出している。携帯を置く。


「糞尿だ」


ふん、にょう。これ全体か、もう十分だ。


「排泄物の壁に、彫刻か。面白いやつらだ」

「面白くない」


彫刻にライトを照らす。でも、これはすごい。間近で見ると分かる。細部の凹凸まで表現されて、生々しくて、とにかく、すごい。発光も、こう、良い感じだ。糞尿もうまく使っている。


「面白くは、ないけど、芸術みたいね。ん、」


隣に穴がある。小さい、子供が通れるくらいだ。


「ねえ、ここに通路があるよ」

「向こうにも、大きいのがある」


次は大と小か。ナプーが寄って来た。かがんで中を見ている。確かに、ハルを隠すならこんな場所か。ナオミも中を見る。奥は見えないが、空気は流れている。


「ついて来い」

「うん。兄さん!」


後方に敵はなし。ナプーは穴に入り、ナオミが中腰で続く。思ったより狭い。後ろを向くと、ユウジはほふく前進だった。通れただけましか。しばらく進むと、前方が開けて来た。ようやく、中腰から、解放、


「って何これ?」


すごい、壁一面にさっきの彫刻だ。敵は、いない。敵じゃない。天井まで、淡く光って、美しい。その中心には、天使だろうか、翼の生えた人間が大きく彫られている。何と言うか、神々しい。今にも飛び出して来そうだ。


「翼の生えた、マノミ」

「ナプー?どうかした?」


ナプーが右手を出している。携帯を、あ、地面に落とした。手を伸ばす、


「痛っ!!」


背中が、熱、引っ掻かれた。


「大丈夫か?」

「大丈夫!それより、」


気付けなかった、攻撃が当たるまで。氛をまとった良い一撃だったのに。


「さっきのやつより、強いよ」

「分かってる」


三人は背中を合わせる。敵は、どこだ。

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