表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フロンティア in the Frontier ~ブレテ島とマノミの狩人~  作者: よっしー
ブレテ島の狂気
25/49

「トキリ、」


恐竜のときに、見せた顔だ。


「ねえ!」

「了解っす!」


テツは荷物を放り投げ、腕を回した。氛の消耗は少ない。動物とやり合わなくてよかった。ナオミも荷物を捨て、三人は走り出した。


「ナプー、ほら!」


驚いたナプーも後を追う。そしてあっという間に追い越した。本気のスピードだ。周囲を無視した全力の氛、まだ余力がありそうだ。ナオミの心配は杞憂だった。しかし別の心配、見失う。


「ちっ、こんなときに!」

「迷子になったら笑えないよ!」


見失った。しかしナプーの氛が目印だ。テツには悪いが全力で追う。氛をむき出しならきっと迷わない。それ以上にトキリが心配だった。マノミは氛で連絡が取れる。たぶんSOSの信号、一刻を争う。ファジール組も心配だ。振り返るとテツは消え、前からハルも消えた。


息が上がって来た。着く前にバテてはいけない。氛を抑え、周囲を警戒するとよく分かった。様子がおかしい。トキリの方から違和感のある大きな氛、おそらくマノミではない。ナオミは再び氛を高めた。もうそろそろ着きそうだ。


「ナオミさん!」

「ハル!」


ナイス判断、ナオミはハルの横に座った。ナプーの膨大な氛に紛れ、敵はおそらく気付かない。しかしトキリはどうなっているのか。目で見るには遠すぎる。


「様子は?」

「分からないっす」


氛では知る術がなく、この好機を活かせない。距離はまだ数キロある。ボラボラに連絡、と思ったがそれも危険だ。トキリは何かに襲われている。連絡で相手を刺激するかもしれない。


「近づきますか?」

「テツを待ちましょう」


ナプーの氛が収まらない。敵の引き付け役だが大丈夫か。それとも敵が強いのか。マノミが束になっても苦戦する相手、ナオミには想像できなかった。あの恐竜もほぼ無傷で退けた。


「テツさん!」

「おお?」


無事に合流し、策もないので静かに近づく。まだまだ遠い、たぶん気付かれない。早く近づいた方が良い。


「今はどの辺だ?」

「あと1、2キロってとこね」


念のためGPSでも確認するが、精度が悪く当てにならない。


「待って」

「どうしました?」


ナプーの氛が揺らいだ。と思ったら徐々に減衰し、周囲に紛れる。まさか、やられたのか。


「ナプー!」

「ナオミ、あぶな、」

「がっ!!」


頭に衝撃、ぶん殴られた。しかし平気だ。ナオミは立て直し、振り返った。動物、ではない。人だ。


「大丈夫か?」

「うん。でもマノミ?なぜ?」

「マノミじゃないっすよ!」


ハルは戦闘態勢だ。よく見ると違った。筋骨隆々、テツよりやや小さめの体、どす黒い肌にボサボサの長髪だ。全然違う。殴られて混乱した。肌は獣の皮で守っており、まるで原始人、しかし武器は持たなかった。素手で殴られたのだろう。


「こいつ、目がヤバいぞ」


血走った目、本当に人間か。


「ヴおおーー!!」


突然ほえた。氛も凄まじい。マノミとは質が全然違った。攻撃防御に特化か。


「仲間が来る!やるぞ!」

「了解っす!」


ハルが二歩で加速、三歩目で突進、空中の蹴り、じゃなくフェイントだ。敵を素通り、後方の木にめり込んで着地し、後ろから顔面に蹴り、ズギャ、敵は反り返った。その隙にテツ。


「喰らえ!」


腹に一発、ドゴッ、後方へ吹っ飛び、大木に激突した。


「タフなやつだ。起き上がるぞ」

「いったん隠れよう」


ナオミは走りながら考える。あいつらは一体何なのか、どこに行けば良いのか、ナプーたちは無事なのか。整理がつかない。そしてヤバイ、周囲にたくさんいる。


「どうしましょう?」

「一気に突っ込むか?」

「そうだ、木の上」


樹冠は生い茂り、身を隠せるはずだ。適当な大木を見つけ、素早く上まで登る。下の状況はほぼ見えなかった。


「あいつらね、マノミを襲ってるのは」

「たぶんな。どうするよ?」


ナオミは深呼吸する。よく考えてみると、ナプーには戦った様子がなかった。おそらく無事だ。敵は人間、たぶん別の部族だろう。恐竜みたいに無差別には殺さないはずだ。しかし数が多すぎる。冷静になるとその多さが分かった。


「まずはマノミの状況を知りたいけど、周りにうじゃうじゃいるのよね」

「いちいち相手にしてられんぞ」

「そうね。見つからないようにトキリへ移動しましょう。ん、近いわ、氛を抑えて」


トキリの方から2人来る。歩きの速度、次は走り、かなり速い、もう見える位置だ。すぐ近くで立ち止まった。葉が茂って見えにくいが、確かにいる。まだバレていないようだ。テツは汗を拭った。


「下に、二人」


指を二本立てる。木の上が安定していて本当によかった。


「ヴおおーー」


遠くから聞こえた。


「ウオーー!!」


次は真下、テツがよろけた。咄嗟に手、バチンとテツを掴む。嫌な汗、どうする、飛びかかるか。


「ワモアモ」

「ホイナ」


謎の言葉、たぶん会話だ。様子に変化はない。バレてない。ナオミは静かにテツを放した。敵は再び移動し、取り敢えず安全な距離になった。


「ふー、危なかった」

「敵も案外鈍いな」


これならトキリまで行けそうだ。しかし数がネックである。きっと何度も遭遇する。遭遇したら動けない。


「でも時間はかかりそうね。まあ、しかたないけど」

「ナオミさん、」


そういえば静かだった。まじめな顔、何かアイデアがあるのか。


「おれだけで行きましょうか?」

「あんただけ?」

「はい。おれだけなら見つかりにくいですし、三人で行くより早く着けますよ」


ダメに決まっている。しかし積極的な姿勢は良い。ブレテ島で自信を付けたようだ。ナオミの前にテツが首を振った。


「敵は複数、一人で見つかったら終わりだぞ。今は安全第一、優先順位を間違うな」

「でも、早くしないと、」

「マノミならたぶん大丈夫よ。戦ってる様子はなかったし、相手は人間だから。きっと動けない事情があるのよ」


と言いつつそんな事情は思い付かなかった。ボラボラからの連絡もない。状況は早く知った方が良いだろう。ハルが納得した後、すぐに三人はトキリへ向かった。


やはり敵が多い。近づくとさらに増え、何度か木の上へ回避した。30人以上はいる。トキリに多く集まっており、近づくと氛も濃くなった。嫌な感じだ。マノミは全然見つからなかった。今度は後ろから、テツとハルに合図する。


「またか」

「ふう、もう少しよ」


神経が磨り減る。狩られる側は本当にきつい。普段は狩る側で探っている。ナプーはこれを毎日やっているのだ。急いで木の上に登り、敵に集中した。おそらく一人、トキリに戻るようだ。どんどん近づく、非常に強力な氛、ナプークラスか。氛が乱れる、耐えろ、敵は猛スピードで通過、すぐに走り去った。体の力が抜ける。


「ふー、どうやら行ったわね。なっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ