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成宮遥は甘やかし1

 翌日、普段通り屋上で寝ころんでいるとどこから現れたのか成宮が俺を覗き込む。

 今は授業中のはずだが、こいつはなにをしているのだろうか?


「授業はどうした?」

「サボり」

「は? 成績優秀の成宮がサボり?」

「うん。体調悪いって言ってきた」

「それはサボりって言わねえから」


 体を起こすとすかさ成宮が隣に座った。柑橘系のいい香りがする。

 そして、どこから取り出したのか小さな弁当箱を渡してくる。

 成宮の方を見るとにっと口角を上げていた。


「昨日のお礼」

「お礼? ああ、気にしなくていいのに」

「ダメ、きちんとお礼する」

「真面目かよ」


 弁当を開けると中には卵焼きとハンバーグ、小さなおにぎりが入っている。


「自分の分じゃないよな?」

「勿論」

「食べていいのか?」

「当然」


 こくこく、と頷き成宮はまっすぐに俺を見つめてくる。

 可愛らしいやつだ。まあ、硬派な俺は可愛いとか言ってやりはしないが。


 ありがたく弁当をいただこうとすると成宮は盛大な勘違いをしていた。


「食べさせてほしい?」

「そんなわけあるか」


 どうして俺が成宮に食べさせてもらわなきゃいけない。

 しかし、成宮は隙をついて弁当を取り戻すと一口大に切ったハンバーグをはしでつまみ上げ、何を思ったのか俺の口元へと差し出した。


「あーん」

「おい、話聞いてたか」

「聞いてた」

「ならこの状況は?」

「食べさせてあげてる」

「なんでだ」

「国分君が一人で食べられないから?」


 成宮は気にもとめない様子で首をかしげる

 こいつ、恥ずかしくないのか? 普通、こういうのはカップルとかがするだろ。もしかして、誰にでもやってるのか?


「お前、誰にでもこういうことする感じ?」

「しない」

「じゃあ、なんで俺だけ」

「お礼だから」

「意味がわからん」


 クールな奴だと思っていたが、意外に天然なのか?

 成宮はいたって真面目そうに俺をじっと見ている。


 言動の読めない成宮に調子を狂わされていると、変わらずハンバーグを口元に運んでくる。

 食べろというのか? 断りたいが、断れば成宮を泣かせてしまうんじゃないかという得体のしれない危機感を感じて無下にできない。


 成宮も引き下がる様子はないし、残された選択肢は一つだけだった。


「わかったよ、食べればいいんだろ」


 差し出されたハンバーグを食べると、俺向けに作ったのか女の子にしては少し味の濃いデミグラスと肉の味が広がる。美味い、こいつ料理も出来るのか。


「どう?」

「美味い」

「良かった。次はこれ」


 再び料理を差し出そうとする成宮を制する。

 このままだと完食まで食べさせられそうだ。


「もういい……、自分で食う」

「そう。じゃあ、食べ終わったら私の膝で昼寝」

「げほげほっ! なんでだよ!」

「枕代わり」


 ぽん、ぽん、と成宮は膝を叩く。

 ほんとに意味がわからん。なにを考えてるんだ、こいつは。

 

 かきこむように弁当を食べると成宮は「そんなに膝枕してほしかったの?」と問う。


「美味かった。あと、膝枕はいい」

「残念。あ、お弁当は明日も作ってくるね」

「は、え?」


 ふふっ、と微笑を浮かべる成宮。まさか、毎日作ってくるつもりか?

 不良から助けただけなのに、やりすぎではなかろうか?

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