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第五百三十七話 大手事務所コワイ

 ドラマの主人公である睡蓮が客席でのシーンを撮り終えたので、そろそろ歌也の出番だとスタッフが迎えにくる。

 いってらっしゃいと見送る鈴音達に手を振って、歌也は舞台へ。

 後ろに続いていたマネージャーの井上がふと足を止め、鈴音にこっそり尋ねた。

「励まし方のコツがあれば是非」

「キミは唯一無二の歌姫や、て客観的に教えたげて下さい。褒められて伸びまくるタイプかと」

「分かりました。ありがとうございます」

 コソコソ会話して頷き合った井上が舞台袖へ、睡蓮の警護担当である松本と山田はホールへ向かう。

 暫し後、松本から話を聞いてやってきたスタッフに綱木が説明し、鈴音と茨木童子も警護担当として舞台袖へ移動した。勿論、黄泉醜女も。



 そっと覗いた舞台上には、この放送局が誇る交響楽団が指揮者と共にドーンと構えており、その迫力に鈴音は圧倒される。

 しかしそれを背後に従える形の歌也は、ど真ん中に立てられたマイクの前で、とても自然な笑みを浮かべていた。

「はー、流石は歌姫。堂々としたもんやなぁ」

「兄貴カッコええっす」

「キャハハ!兄貴って」

「兄貴ちゃう、歌也さんや」

 殆ど吐息でヒソヒソやりつつ、いつ始まるのかなと楽しみに待つ。

 素人の鈴音達には分からない指示が幾つか飛び、細かい修正が行われた後、ついに歌唱シーンの撮影が始まった。


 曲はミディアムバラード。

 フルオーケストラが放つ音の圧力は予想以上で、これに負ける事なく歌うとなると、どれ程の歌唱力が必要になるのか想像もつかない。

 だが、背後からの圧力で緊張がぶり返していないかだとか、もし声量が足りなくてもマイクが何とかしてくれるし、だとかいう鈴音の心配は、役に入り切った歌也の第一声が吹き飛ばしてくれた。

 弦楽器の音を上回る力強さで鼓膜を震わせたのは、雲間から地上へ降り注ぐ一条の光のように、美しく温かく、神々しささえ覚える程の歌声。


 ああ彼女は、歌う為に生まれてきた人だ。


 ホールに響き渡り包み込むその歌を聞いて、鈴音の心に浮かんだのはそんな感想である。

 努力でどうにかなる域を超えた、天賦の才としか言いようのない声。

 伸びやかなその声に乗って伝わる、大切な誰かを思う愛、心からの感謝。

 マイクなぞなくとも最後列の客席にまで届く歌声が、舞台袖という近い距離で聞いていた鈴音を棒立ちにさせる。

 コーラスもダンサーも居ないステージ。

 優雅な手振りを時折交える程度の歌也は、その歌声のみで、ホール内に居る全ての人の心を鷲掴みにしてみせた。



 感動に打ち震える、というより最早ポカーンとしてしまった鈴音は、オーケストラの演奏が終わって暫くしてから沸き起こった万雷の拍手で、漸く我に返る。

「あっぶな。フツーに魂抜かれよったがな」

 とんでもない実力だ、と大きく息を吐き出しながら横の茨木童子を見上げ、再度ポカンとした。

「鬼の目にも涙」

「へ?」

 鈴音の呟きでやっと我に返った茨木童子が、目をぱちくりとさせ自身の異変に気付く。

「おおお!?なんすかコレ」

 濡れた目元を拭って驚く様子から、感動して泣いたのは生まれて初めてだと理解出来た。

「歌が良すぎて涙が出てしもたんや思うよ。悪鬼にもそんな人みたいな機能、備わってたんやなぁ」

「そんな事あるんすか。やっぱり兄貴の子孫は凄い」

 何でも酒呑童子に結びつける茨木童子の分かり易さに笑ってから、そういえば静かだなと黄泉醜女を見れば、こちらもまた魂の抜けたような顔ではないか。

「ツシコさーん、生きてますかー」

「んぇ?おーぅ、生きてる生きてる、生きてるよぉー?すんごい歌だねぇー……」

 溜息交じりにそう言って、また黙り込んでしまった。実に珍しい。

 雨が降らなきゃいいなと思いつつ、一瞬視界に入った目元を拭う綱木は見なかった事に。

 このあと同じシーンを何パターンか撮影するのだろうか、と舞台へ目をやった鈴音は、歌也が戻ってくるのを見てきょとんとする。


「あ、鈴音さんだ!どうでした?良かった?」

 袖で鈴音を発見するなり笑顔で問い掛ける歌也へ、こちらも笑顔で頷き返した。

「凄かったわー。今回は心があったまる感じ。ありがとうとか大好きとか伝わってったよ」

「ホント!?やったー!」

「これドラマ放送された日、歌也さんの名前がネット上に溢れるんちゃう?」

「よーし目指せランキング入り!」

 拳を握って気合を入れる歌也と楽しく笑ってから、気になっていた事を聞いてみる。

「歌のシーンはもう終わり?こういうのって、同じとこを何回か別バージョンで撮るもんちゃうの?」

「んー、普通はそうみたいなんだけど、今回はいいんだってー。歌の途中にリョウちゃんと私の回想シーンとか入れて、後は会場で聞いてたリョウちゃんの泣き顔入れて、オッケーとか言ってた」

 リョウちゃん誰。と思った鈴音だが、確か歌也は主人公の親友役だったので、睡蓮の役名だろうと判断した。


「そっか、ほんなら睡蓮さんも休憩入るやろか。もうお昼回ったけど」

「うん。次はスタジオに戻るから、その間にごはん食べちゃうはず」

「よっしゃ、自己紹介しに行こ」

 鈴音がそう言えば綱木と茨木童子も頷き、歌也は少し心配そうな顔になる。

「鈴音さん。リョウちゃん、大丈夫だよね?」

「うん、大丈夫大丈夫。私が()るんやから。変なもんは全部やっつけるよ」

「良かった。お願いしまーす」

 胸を叩く鈴音を見て歌也は笑顔に戻り、井上と合流して手を振りながら去って行った。


 ニコニコと見送ってから、鈴音は茨木童子を見やる。

「ここぞとばかりアピールするんか思たのに、大人しかったやん」

「や、今日はオバチャンに化けてへんから、近寄ったらアカン思たんす」

 若い男前な見た目の茨木童子は、ストーカー天狗事件で藤峰夏姫を警護した時の陽彦と同じく、女性芸能人のそばに立たない方がいいのは事実だ。

「自分でそういう配慮が出来るようになったんや、凄いなぁ。その調子で、藤原さんとか聞いても殺気が出んようにしよなー」

 ギラッとした茨木童子が深呼吸を繰り返しつつ頷き、身構えた綱木が両手で顔を擦っている。エア洗顔かな、と鈴音は首を傾げた。

「えーと、綱木さん?睡蓮さんに紹介して貰えますか」

「ふー。ああごめん、そうやね、行こか」

 両手で頬を叩いた綱木がキリリと引き締まった顔になり、先に立って歩きだす。

「やっぱりエア洗顔かー」

「なんすか?」

「いやこっちの話」

 相変わらずコソコソ会話しつつ、スタッフの邪魔にならないよう、鈴音達も後に続いた。



 一行がやってきたのは社員食堂である。

 綱木が電話で確認していたので間違いないが、役者も時間があればこういう場所で食事するのかと鈴音は感心し、同じような感想を抱いたらしい黄泉醜女もキョロキョロしていた。

 それなりに混んではいたが、食堂の真ん中辺りで立ち上がった松本が軽く手を挙げてくれた為、睡蓮を探す手間もなく皆でそちらへ向かう。

 テーブルには、松本と山田ともうひとりパンツスーツの女性、そして睡蓮とマネージャーらしき中年女性が居た。


 鈴音や山田と同年代に見えるスーツの女性は、安全対策課の仲間で木村、中年女性はマネージャーの山崎と名乗る。

「初めまして、夏梅です。こちらは茨木。今回の件を担当します」

 鈴音が会釈して名乗ると、睡蓮も立ち上がってお辞儀した。

「坂田睡蓮です。お願いします」

 男顔な美女の歌也とは対照的に、柔らかいイメージの可憐な美女だ。一昔前なら、奥さんにしたい女優ナンバーワンだとか言われていただろう。

 因みにこの時は全員が睡蓮へ視線をやっていたので、茨木童子の“坂田”でギラリとした顔は見られずに済んだ。

 睡蓮と共に鈴音達も着席すると、改めてマネージャーの山崎が茨木童子を見る。

「ええと、茨木さんはどのような役割で……?」

 やはり若いイケメンに警戒しまくりだ。

「外で不審な人物が()らへんか見張って貰います」

 営業用スマイルで鈴音が答えると、山崎はホッとした顔になる。

「そうですよね、夜ですし。女性だと危ないですね」

「ええ。いざという時に備えて、長い距離を走れる人員が()らな不安やなぁいう話になりまして」

 階段を駆け上がって息切れしたおじさん達は、『お恥ずかしい』と情けない笑みを浮かべた。


「ほんで、私は睡蓮さんのそばに……あ、お名前でお呼びしても?」

「はい、皆さん名前で呼んで下さるので」

「ありがとうございます。睡蓮さんのそばには私が付こうと思てます」

 そう言って鈴音が視線をやると、頷いた綱木が続ける。

「鈴音さんはウチの課に3人()る神使、神の使いですね、の中でも最強の人物です」

 神の使い云々は歌也から情報を仕入れていたのか、もしくは山田達が話していたのか、睡蓮も山崎も驚かなかった。

「彼女が出動した以上、おかしな出来事は確実に収まります。ただ……」

 難しい顔になった綱木が言い淀んだので、今度は鈴音が後を受ける。

「モノがモノだけに、予想外の人物が犯人で睡蓮さんの心が傷付く可能性があります」

「予想外の人物……」

 ゴクリと喉を鳴らした睡蓮に、鈴音は重々しく頷いた。

「例えば全く身に覚えのない、自称“夫”やとか。ほら、妄想の中で結婚して、現実と混同してまうファンとか聞いた事ありません?」

「ホントにいるんだ……」

 明らかに引いている睡蓮に対し、ベテランマネージャーらしく山崎は『あるある』な顔だ。


「気色悪いから、暫く男性を見る目にフィルター掛かりそうでしょ?」

「そうですね、怖いです」

「これの逆バージョンで、彼氏さんの自称“妻”パターンもありますよね。何でアンタが彼女ヅラしてんのよ!みたいな」

「あ、それは彼からも言われました。もしかしたら自分のファンで思い込み激しい子かもって」

 困り顔で溜息を吐いた睡蓮の答えに、『こっちに予防線を張ったか』と鈴音達は素早く視線を交わす。

「もちろん説得はしますし穏便に済んだらええんですけど、そういう人種やった場合こう、自分の思い込みが全てなんで。何を喚き散らすか分かったもんやないんですよね」

「あることないこと」

「そうです。その辺は、完全に聞き流すか笑い飛ばすか訴訟に持ち込むか。心の準備だけはしといて頂きたいなと」

「はい、分かりました」

 目を閉じて深呼吸する睡蓮に申し訳無さそうな顔をした鈴音は、山崎へ視線だけで『話がある』と訴えた。

 その辺は心得たもので、黙って頷いた山崎は睡蓮の背を撫でる。


「大丈夫だから、早くごはん食べちゃいなさい。すぐメイク直して貰わなきゃいけないし」

「はい。あ、夏梅さん達はお昼……」

 ここの食堂はセルフサービスなのに何も持ってきていない鈴音達を見て、睡蓮が小首を傾げた。

「私らはまだ色々と調べる事があるんで、お気遣いなく。どっかでテキトーに食べますから」

 笑ってそう告げ、席を立った鈴音はまた後でと手を振る。

「私そこまで送ってくるわね」

 一緒に立ち上がった山崎が、松本達に睡蓮を任せ鈴音について行った。

 人通りの多い食堂付近でする話ではない為、山崎の誘導で非常階段付近へ移動する。

 4人で向き合い、時折通る人に聞こえぬよう小声になった。黄泉醜女は、鈴音と茨木童子の間から聞き耳を立てている。


「睡蓮さんにはああ言いましたけど、ぶっちゃけ彼氏が怪し過ぎます」

 いきなり投げ込んだ鈴音の直球を、山崎は動じる事なく受け止めた。

「我々もそう思っています。睡蓮には、ドラマにしろCMにしろ、恋人というよりは家族という意識を持たれるような役柄を選んでいますので、生霊で襲ってくる程に思い詰めるファンはまず居ないかと」

 あまりにあっさり認められ驚いた鈴音達だが、恋人ではなく家族という理由を聞いて納得する。

「言われてみたら、CMでも娘役とかが多いですね」

「ええ。グラビア等もさせていませんので、あの子のファンという線は薄いです。では元彼は?というと、この世界に入る前、高校時代にお付き合いした人は居ると聞いていますが、調べた所その方には婚約者が居ました」

 何でもない事のようにサラリと言われ、『大手事務所コワっ』と内心震え上がりつつ、鈴音もまた何事もなかったように頷いた。

「睡蓮さんとは過去のええ思い出、いう感じですかね。元彼の線も消えたと」

 その結果やはり、現在の恋人であるバンドマン周辺が怪しい、と全員渋い顔になる。


「元彼みたいに、今彼の周辺も洗われへんのですか?」

 鈴音の尤もな質問に、山崎は渋い顔のまま首を振った。

「今現在も続いているなら直ぐに掴めるんですが」

「直ぐ掴めてまうんかーい。あ、こっちの話です。つまり今は睡蓮さん1人やと」

「そうですね。他に女性の影はなかったので、全てきっちり清算した上で、睡蓮と付き合う事にしたんだと思っていたんです。ところが、ですよ」

 週刊誌にすっぱ抜かれたのを機に交際宣言をした途端、睡蓮の身に夜な夜な起きる不気味な出来事。

「清算したつもりなんは男の方だけで、女の方はまだ続いてると思てる」

「それが一番ありそうだと思いませんか」

「彼氏の言動の怪しさからして、その線が濃いですよねぇ。まあ、妄想拗らせたストーカーの線もまだ残ってますけど」

 顎に手をやった鈴音の意見に、山崎は懐疑的な表情を見せる。


「確かに向こうのファンは10代の少女が多いので、妄想は膨らませていたでしょう。恋人が出来たと言われてショックも受けたでしょう。誹謗中傷の書き込みをした子もいるでしょう。でも、一度も関係を持った事のない相手に対して、生霊が出る程に思い詰めたりするでしょうか?」

 言われてみれば確かに、と鈴音は納得した。

 そんなに簡単に人の身体から魂が抜け出せるなら、この世は生霊で溢れ返ってしまう。

 そう思って綱木を見ると、難しい顔で頷いていた。

「ゼロやとは言い切れませんけども。でも仰る通り、生霊出すなんて並大抵の思い込みで出来る事ちゃうんでね。汚い言葉使うけど、好きな人の恋人に『死ね!』とは思ても『殺すぞ!』とは中々思わへん訳で。死ね、思てる内は出ぇへんねん、他人任せやから」

「あー、ホンマですね。殺すぞとか特に女の子は使わへんイメージ」

「ええ。どうせすぐ別れるでしょとか、別れろブスとかいう書き込みは見ましたが、別れさせてやる!は無かったですね」

 山崎がくれた情報で、やはりバンドマンのファンはお怒りなのだな、と鈴音達は頷き合う。


「何にせよ、そんな聞くだけで嫌な気分になる誹謗中傷でさえ、生霊出すにはまだ(ぬる)い。絶対赦さんこの手で殺す、て本気で心の底から思い込んでんねんけど、それを抑え込める理性があるから実際には手ぇ出されへん、いう人やないとアカンねん」

 恋敵は殺したいほど憎いけれど、人殺しは駄目だと理解している、常識的な人。

 綱木の説明を聞き、鈴音は過去のストーカー事件を思い出す。

「妄想拗らせたストーカーやったら、普段から理性なんか働いてへんし、生霊出さんと本体が武器持って襲い掛かってきますね」

「そういう輩が多いわな。けど中には表向きまともそうに見える奴も()るから、ゼロとは言い切れへんのはそこなんよ」

 難しい、と溜息を吐く綱木と山崎に、鈴音は歌也にしたのと同じくポンと胸を叩いてみせた。


「ま、生霊の正体に関しては、捕まえたら分かりますしね。逃がしません」

「そうでした、神の使いですもんね、生霊なんかチョチョイのチョイですよね」

 表現が昭和、と心の中でツッコみつつ鈴音は微笑む。

「はい。せやから今夜は睡蓮さんの部屋で待機さして貰います。ただ問題は、捕まえて本体が判明した後の事ですよね」

 鬼が出るか蛇が出るか。きっと睡蓮にとって碌な結果にはならない。

「まあその辺は。教えて頂いた生霊を出す条件からして、犯人には思い詰めるだけの理由があるんでしょう。男がどんな理屈を捏ね回そうと、悪いのは彼で睡蓮は被害者でしかない。ええ、睡蓮は男を見る目がなかっただけ。世間の皆様には、それだけを知って頂ければ」

 人好きのする笑みを浮かべながら、やはりサラリと怖い雰囲気を醸し出す山崎。鈴音はブルッと震える。

「さ、流石は敏腕マネージャー」

「うふふ、ありがとうございます」

 大手が大手たる所以の一端を垣間見た気がした。


「では私は戻りますので、何かありましたらご連絡下さい」

「はい、また後で」

 お辞儀して去って行く山崎へ、皆もお辞儀を返す。

 充分に距離が開いてから、鈴音がしみじみと零した。

「……何ですかね、生霊の正体とか悩むだけ損やった気がするいうか」

 現場に出ているマネージャーであれなのだ。上役達が持つ力は更に凄いのだろう。

「ホンマやね。SNSは無理でも、新聞や週刊誌ぐらいどないでも出来るんやろね」

「どういう事っすか?」

 不思議そうな茨木童子に説明するのは黄泉醜女だ。

「全面的に彼氏が悪いって書かせる気だろねぇー。睡蓮ちゃんは何も知らされてなくてぇ、すっごいショック受けてるーとか。まあそこは事実みたいだけど」

「そんなんで世間は納得するんすか?」

「そりゃゴチャゴチャ言う奴もいるだろうけどさぁ、彼女の好感度と若さから考えてぇ、『悪い男に引っ掛かっちゃったんだねー。いい勉強だと思って次ガンバロー』みたいな空気になると思うよぉ?」

「SNSとかにも、そっちに誘導する書き込みするやろし。いわゆる工作ね」

 鈴音が付け足すと、茨木童子は緩く首を振る。

「はー……。魔王でも紛れ込んでんすか?大手事務所とかいうとこには」

「あはは!そうかも!ひょっとしたら、1体ぐらい人に化けて遊んでるかもしらんね」

「怖い事言わんとってくれー、顔洗いたなってったやないか」

「キャハハ!大丈夫だってぇ、魔王が本気で化けたら人には分かりっこないしぃー」

 どこが大丈夫なのか、と青褪める綱木を慰めつつ、鈴音はホテルの造りを把握したいと頼んで、放送局を後にした。

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