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俺は十年間後悔した  作者: 宮原叶映
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寝たくないって

会話が多いので読みやすいかもしれません。

綾は寝ることを拒絶する日があった。俺たちはそれに立ち向かうんだ。

 綾は寝ることを嫌がるようになった。記憶がリセットしてしまうのが恐いからだ。

 

「綾、もう遅いから寝ような」

 

「いや! 」

 

「寝よう!明日、学校だからな。遅刻するぞ」  

 

「いや!寝たくない」 

 

「寝ましょう。僕たちも寝ますから」

 

「いや! 」

 

 政流は、頭を悩ました。その時、俺はコクコクとソファーで船を漕いでいた。政流と満流はいつも下のきょうだいと話すときは、目線に合うようにしゃがんでやる。二人は背が高いから威圧感を与えないようにするためだ。

 

「寝よう! 」

 

「政ちゃんたちは寝てていいよ。私は起きておくから」

 

「だめだ。みさき姉が言ってたぞ!寝不足は、肌に悪いんだ。綾はきれいだから。寝よう」

 

「じゃあ、私はブサイクだから寝ない」

 

「俺はそういうことを言ってるんじゃない」

 

「二人とも落ち着いてください」


 満流の低く鋭い声がリビングに響き、俺はそれで目を覚ました。

 

「満ちゃんたちには、私の気持ちなんてわからないよ! 」

 

「はい。僕たちにはわからないことで綾さんが苦しんでいるですよね」

 

「俺たちだって、綾の嫌がることを好きで言ってるわけじゃない」

 

「うん、でも恐いの。明日が」

 

「恐いですね」

 

「綾が寝るまで、俺が一緒にいてやるから」

 

「だめ」

 

「何で?」

 

「私は寝ないから」

 


 頑なに寝ることを拒絶する綾に、二人はさっきよりも悩みそして頭を抱えた。このままではと思った俺は、ソファーからピョンッと降りて三人がいるとこにかけていった。

 

「あや、おれひとりでねれないから、えほんよんで」

 

「分かった、いいよ」

 

 綾の顔を見れば明らかに眠そうなのに、頑なに寝ることを拒んでいる。でも俺は知っていたのだ。それは綾が俺に甘いことを。

 

「お部屋、行こうね」

  

「うん」

 

 俺と綾はあの日と変わらずに、手を繋いで歩いた。子供部屋に着くと、綾は本棚に入ってる絵本を出してきた。俺はそこから絵本を選ぶことにした。


「何の絵本にする? 」

 

「え〜とな」

 

 俺は綾に絵本を読んでもらった。そして、一緒に寝ることに成功した。



 お月さまとさよならして、太陽おはようと朝を迎えた。


「あれ、私寝てたっけ?」

 

 と、手を繋いで寝ている俺を見つけた。


「えっ?どういうこと? 」


 綾はますます今の状況に混乱した。彼女の声に俺は起きた。

 

「おはよう、あや〜」

 

「おはよう優。何で私と一緒に寝てるか分かる? 」

 

「おれ、あやにえほん、よんでもらった」

 

「……その後に、私は寝ちゃったってことね? 」

 

「うん」

 

 俺たちは、半分寝ている状態で話をした。

 

「綾、優太!朝ごはん食え!遅刻するぞ! 」


 一階の階段前で俺たちを大声で呼ぶ政流の声が聞こえ、その内容にまた綾は混乱した。

 

「えっ?今日って、休みだよね? 」

 

「ううん」

 

 綾はバッと布団から起き上がって、俺を抱き抱えていてリビングに向かった。そこでは制服を着ている満流がテーブルに朝食を置いていた。

 

「満ちゃん! 」

 

「綾さん、おはようございます。そんなに慌ててどうしたんですか? 」

 

「満ちゃん、今日って休みだよね? 」

 

「綾さん、今日は平日で学校がある日ですよ」

  

「でも、私ね。優太と公園に行かないといけないの。約束したから」

 

「綾、ねおうけへんの? 」

 

 満流と同じように制服を着ている政流は、口に食べ物が入っている状態で話に割り込んだ。

 

「政流くん、言い方とお行儀悪いですよ」

 

「そうか? 」

 

「政流くん、さっきから口に食べ物が入っているのに話して、頬にご飯粒をつけて、醤油をご飯にぶっかけてますよ」

 

「ふぇっ!? 」

 

 政流は驚き、白いご飯だったものを見て絶望した。何かのはずみでご飯の横に置いていた醤油が倒れたようだった。

 

「満流、おかわりある? 」

 

「出来ませんよ」

 

 政流は絶望したが、すぐに冷蔵庫から卵を取り出してご飯の上で割る。卵かけご飯的なのを編み出した。

 

「醤油、多すぎだ……」

 

「自業自得です」

 

「政ちゃん、満ちゃん、はぐらかさないで」

 

 綾は机をバンッと叩き、食器が揺れたりコップに入っている牛乳が震えたりした。政流は、満流が何か言おうとしてるのを止めて綾の視線を合わせる。

 

「綾の脳が、記憶するのが疲れてな。優太と公園に行こうぜっていう直前で止まっちゃったんだ」

 

「えっ? 」


「一日をどんなに過ごしても、脳が疲れたよ、記憶が出来ないよって、なるんだ」


「……どういうこと? 」

 

「俺たちも突然のことで驚いてんだ。綾はいつも、あの人らが家にいないから、家のこと頑張ってくれたから。疲れたんかなって」

 

 政流は、まっすぐと綾の目を見て言った。その政流の目をを見れば嘘を言ってないことが分かるけど、まだ信じたくない気持ちが勝っていた。

 

「そうなの? 」

 

 綾は、何も言わない満流を見ると彼は頷いた。それが答えだと思って、綾は涙を流した。

 

「ごめんね」

 

「綾が謝るのダメ。お前は何も悪くないからな」

 

「……質問していい? 」

 

「なんでもいいぞ! 」

 

「今日、私は何をどうしたらいいの? 」

 

「それはですね……」


「綾、ご飯食べて落ち着こうな」


「うん」


「綾さんと優太くんは後でパジャマから着替えないといけませんね」


「「うん」」

 

 満流は綾に、学校に行くか家にいるかを相談した。この日は日記帳を見せることなく事なきを得た。日記を見せると、日によったらかなりのショックを受けてしまうからだ。

 俺たちは、全員で家を気持ちよく出ることが出来た。政流と満流は、俺と孝太を保育所に連れていき、綾を小学校に送り届けた。

 

「なんとかなって良かったな! 」

 

「はい。優太くんに感謝ですね」

 

 綾が寝るのを嫌がるのに、疲れていた二人の顔に笑顔が戻った。


 

 この日を境に綾が寝るのを嫌がると、待ってましたと言わんばかりに彼女が断れない理由を無理やり作り、みんなでリビングに布団を広げてそれをしながら寝ることになった。政流たちの年相応のことが関係するからだ。それ以外にも政流には別の理由があるようだ。

 綾がそれでも嫌だと言ってきたら、またどうするか考えないといけない。

 

「寝たくない! 」

 

「何でですか? 」

 

「だって、怖いもん」

 

「よし、俺たちと寝よう! 」

 

「なんで? 」

 

「優太ばかり、綾を一人占めしてるのが俺は嫌なんだ」

 

「みんなで、横になって話すとリラックスして、怖いのがなくなりますよ」

 

「分かった」

 

 そんなこんなんで、綾が不安に感じるのを最小限にすんだ。俺の作戦のおかげたとも思う。

 誰だって寝るのが恐くなるときがある。そういう時は、みんなで布団を並べて寝るといい。暑い夏にはエアコンの節約にもなる。


 一人で寝たくないのなら、俺たちはバラバラに寝るのを辞めて一緒に寝る。だって家族だから、綾のことが大好きだから。みんな手探りで、綾が寝れるように、これからの暮らしが出来るように日々を過ごしているんだ。

読んでいただきありがとうございます。

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