最後の結末をどう見ますか?
1.生まれたのか生まされたのか
人間一度は悩んだことがあるだろう。
もっといい家庭で生まれたかったとか
お金持ちだったらなとか
兄弟がいたらなとか
そんなありきたりで悩めるのはきっと幸せなんだろうと思う。
なぜなら僕は天涯孤独なのだから
僕は平成10年2月に生まれた。
そしてすぐに親が死んで親戚のいない僕は施設へと預けられた。
施設では男の子8人と女の子6人いて、みんなそれぞれの事情を抱えながらも楽しくやっていた。
施設内で暮らしていると血の繋がりだけが家族ではないと思えるほど強く深い絆ができた。
そんなある日のことだ。
施設のみんなで遠足の話が数日前からそんな話が上がっており、楽しみにしていた遠足当日。
ある子はおやつに何を持って行くか。
ある子は何をして遊ぶのか。
ある子は昔住んでいた所の近くに行くから兄弟に会えるかもとか。
僕は高熱で行けなかった。
みんなの残念そうな顔がふっと見てしまった僕は一人でも大丈夫だよと精一杯の笑顔でみんなを送って、施設には僕と施設長だけとなっていた。
高熱で頭がぼっーとしていた僕にとってはそれが現実であるのか夢であるのかすぐに判断つかなかった。 けたたましくなるサイレンの音で目を覚まし、体を起こすもそこには施設長の姿はなかった。
体を引きずるように部屋の扉を開けると救急車とパトカーと一面赤い世界が広がっていた。
けどそれはけして救急車やパトカーのランプなどではなかった。あたりには血が飛び散っていた。
僕はそのまま別の施設に預けられたが僕はその後、誰かに心を開くことはなく7歳を迎えて小学生となった。
けどそこで待っていたのは地獄であった。
僕の住んでいた地域は治安が悪く小学校では当たり前のようにいじめが起こっていた。
そして僕はいじめられないようにするため人をいじめた。
理不尽な暴行や恐喝など数えるときりがない。
けど、学校という空間は特別だ。
いじめられている子は社会であれば本人の意思で会社を辞めたり警察に行ったりいろんな選択肢があるだろう。
けど、学校では教師に相談しても何も解決はしなかった。ただ謝ってもうしません。そういえば解決して問題の根本の解決にはたどり着かない。
そうして俺は僕を守り続けて中学生になった。
みんな知っていると思うが中学生になることは別に特別環境が変わるわけではない。
ただ地域が広くなり多く人が集まった小学校となにも変わらなかった。
それはつまりいじめは続いていた。
そうして何度も警察にお世話になりまともに勉強していなかった僕は落ちこぼれと言われ高校には通わず、社会に適応できるわけもなく自堕落な日々を送っていた。
そしてあることをきっかけに僕は全てに蹴りをつける為首をくくり死んだ。
2.転機と天気
ある日なんとなく喫茶店に入った。
そして窓際の席に座りコーヒーを頼んだ。
日々の繰り返し。春に寝て夏に起き秋に寝て冬を迎える。そういった無意味な日々のはずだった。
その日もその中のただの1日。
頼んだコーヒーが届き女性の声でお待たせしましたといい終わるとすぐに
「久しぶり」
その声に驚き思わず顔を上げるとそこには
女性の顔があった。恐らく年齢は俺と同じくらいであろうと思うが全く覚えがなかった。
どちら様ですかと俺が聞く前にその子は
「覚えているわけないよね。ごめんね。」
そう言われ俺は咄嗟に同じクラスだったかなと聞いたが彼女は微笑を浮かべながらお店の裏に戻っていった。
その後まるで風で舞い上がってめくりあがったスカートの中身を偶然見てしまったかのような、何とも言えない罪悪感に苛まれいたが結局帰るまで彼女を見ることはなかった。
けど、たったそれだけのこと。
同級生にたまたまあった。
それだけのことで俺のこれからの日々が濃く重く意味のあるものになるとそう思った。本当は変わるタイミングを見ていてたまたまの偶然をそう錯覚してしまっただけなのかもしれないけど、俺自身きっと変わりたかったんだと思う。
次の日、俺はその喫茶店に行き彼女を探すと空いたテーブルを拭いていたところであった。
昨日の夜気になったので小学と中学の卒アルを見ているとある女の子にピンときた。
吉見 光 よしみ ひかり
なんとなく面影があったのである。
なのでそれを確かめるべく喫茶店を訪れた訳だが、別の席をすぐに案内されて店も混んでおりなかなか話すタイミングがなかった。
しかし、通り過ぎるタイミングで俺は見た
ネームプレートには吉見と書いていたのだ。
思わず声をかけてしまいそうになったがぐっと堪えた。
それは彼女が忙しそうなのもあったが、なんとなく昨日の最後の笑顔に引っかかったのである。そもそも中学時代の俺を知っているのであれば話しかけるであろうか。率先してやっていたわけではないが小学も中学も周りによく思われることをしていたわけではなかった。
そう冷静になり落ち着く為に一度たばこに火をつけた。
すると、「あっ」という声が聞こえ顔を上げるとそこには彼女がいた。
「今日も来てくれたんだね。」と
昨日とは打って変わり晴れた表情の笑顔であった。
「昨日はごめんね。全然気づかなくてさ。
でも思い出したよ。吉見光だよね?」
そういうと少し驚いた表情したがすぐに先ほどの笑顔になり
「思い出してくれたんだね。ありがとう。
でもごめんね。今日忙しくてあんまり話す時間がないんだ。」
そう言われて僕は急いで注文をした。
その日はそのままコーヒーを飲み、一服して喫茶店を出た。
その帰り道
春になり冬より日が長くなった為6時だというのにまだ夕暮れであった。
彼女に会えてスッキリしたことと、しかしながら一方疑問が頭をよぎった。
なぜ僕は彼女に固執したのだろうか。
地元である喫茶店に同級生が働いていることなんてよくよく考えればさして珍しいことでもない。特に仲良かったわけでもないのであれば尚更である。
そんな疑問を抱いたまま夕暮れの伸びた影を見ていた。その影が二つに見えた。
3.一度あることは二度ある
4月14日 AM5:30
いつもはこんなに早く目を覚ますことはないのだが、喉が乾いていたこともあるのでそのまま体を起こしお茶のみベランダで一服していた。
眠い頭でぼーっと下を見ているとそこに中学の同級生の友達らしき人がいた。
向こうもこちらに気づいたようで俺だと気づくと、びっくりしながらも嬉しそうに手を振ってタクミと俺の名前を呼びながら下に降りてくるようにジェスチャーしていた。
だからそのまま降りて行き久しぶりと会話を交わしながら雑談していると昔話で盛り上がった為俺の部屋でゆっくり話そうという流れになった。
「変わらないなーお前は」
そんなたわいない話をしているとあいつはどうしてるとかそんな話になり、名前だけではピンとこない為卒業アルバムを見ることになった。
そこでさらに昔話で盛り上がっていたところで先日あった吉見光の話をした。
「ヒサギ。そういえばこの子のこと覚えてる?最近近くの喫茶店で偶然会ってさ。俺全然覚えてなかったんだけど向こうは覚えていたみたいでさ。」
そうするとヒサギは眉を傾げておかしなことを言った。
「吉見ひかりが?そんなわけないだろ。彼女卒業して数年後に自殺したって話だぞ。」
どういうことか理解できず彼女と話をしたことも、
本人であることも確認したと話すもヒサギは納得することはなかった。
なので折角なら近いからとその喫茶店に行こうといい友達と向かった。
あの喫茶店は透明の大きなガラスに喫茶店名が書いてあるよくある喫茶店であったため、
外からでも彼女がいることがわかり店内に入った。
ヒサギにあの子だと告げるも数年あってないから顔も覚えていないしあんまり見えないというので仕方なしに店内に入ることにした。
「いらっしゃいま…」
すこし驚いたようだったがそのままテーブルに案内された。
そしてヒサギに確認もするもそれでも分からないというか不思議そうな顔していた。
注文の際に彼女に聞いた。
「あのーこいつ覚えてるかな?中学の頃同じクラスだったんだけど…」
というと彼女はあんまり覚えていないと言い、ヒサギは間近で見てもなお不思議そうな顔をするばかりであった。
なので再度吉見光であるかと聞くと、彼女はそうだよといい注文を聞いてそのまま奥に戻り俺たちは頼んだコーヒーを飲んで外に出た。
そしてヒサギは一言放った。
そのコーヒーはやけに熱く舌を火傷した。それはヒサギも同じであった。
そしてヒサギはこう呟いた。
「あれは間違いなく吉見ひかりではない」と。
そのままヒサギと別れたのだがやはり友達の言った一言が引っかかり考えた。
そして俺と僕は全てを思い出し二人ごとを言った。
あれは吉見ひかりではない。と
そして2日後ヒサギは死んだという噂を耳にした。
4.過去とは過ぎ去るとかく
施設内にいた頃の話である。
僕には好きな女の子がいた。
彼女は優しく可愛かった。
年下の子の面倒を見ることが得意で喧嘩をすれば仲裁をして年齢は僕とほぼ変わらないはずなのに誰よりも大人であった。
そんな彼女に好きだといえず過ぎていきあの事件が起きた。
僕はあの時の記憶が正しいものなのか確かめる為にPCの電源をつけてあの年代の事件を調べたら出てきた。
平成15年4月25日
乗用車が保育園の玄関付近に激突。
多数の重傷者が出たのものの幸いにも死者0名。原因はおそらく居眠り運転によるものであると予想される。
やはり死者はいなかった。
そして僕はすべてが分かった。
1.僕があの事件の後自分を守る為に二重人格になったこと。
2.なぜ友達が吉見ヒカリではないと言ったのか
3.喫茶店の彼女が誰なのか
4.ヒサギが殺された理由
そう。彼女は吉見ヒカル。
彼女には妹がいたのであった。
彼女が7歳で妹は僕と同い年だったと聞いていた。
確か名前は吉見ヒカリ。
つまり吉見ヒカルは吉見ヒカリを演じていたのだ。
理由はわからなかった。
ただ、僕はもう一つの事実を知った。
施設のみんなを家族だと思っていた。
なのについ最近まで誰一人名前を思い出すことができなかった。
それどころかあの喫茶店に一緒に行った友達でさえ卒業アルバムを見るまでは思い出せなかったのだ。
恐らくだが僕自身が誰かを覚えることを拒否していたのだ。
そして僕はもう一度あの喫茶店に向かった。
いつもは閑散としている時間帯にやけに喫茶店は騒がしかった。
相変わらず彼女。そのほかに何人かの警察がいた。
そして僕は彼女と彼女の後ろにマスターに一礼をした。
僕なりの謝罪であった。
自殺した吉見ヒカリの死んだ理由の一つに間違いなく僕自身が関与していたからだ。
彼女をいじめていたのは僕であり
そしてヒサギは主犯格であった。
マスターはヒカリとヒカルの親であった。
それは名札を見れば明らかであった。
吉見まさる
つまりこういうことだ。
そしてマスターはヒサギの飲み物に毒を入れたのだ。
あっあつでいれたのは中に入れた毒薬で味が変わることを恐れ、味合わせないようにするためにわざと高温にしたのだということ簡単に予想がついた。
なぜ僕のコーヒーにはいれなかったのか。
それは最後までなぜかわからなかった。
パトカーに連行されるマスターを尻目にヒカルが近づいてきて少し話をした。
「ごめん。僕…」
「あなたは何も悪くない。」
彼女は続けてこう言った。
「あなたを最初見たときにびっくりした。
驚きと嬉しさと怒りと憎しみと全ての感情が出てきたけどそれを押し殺して話してみたけど、あなたは昔のあなたではなかった。
私とヒカリはすごく顔が似ていたから数年経っていたとしても見覚えぐらいはあるはずなのに初めてあったかのような顔をしたから。
ヒカリから聞いていたあなたの話は何度も聞いていたんだよ。知らなかったでしょう。ヒカリはあなたのことが好きだったんだよ。」
僕は酷くあの時の自分の態度に後悔をした。
「ごめん。」
そんな言葉しか出なかった。
そして彼女は最後に言った。
「ヒサギ君が死んだけどヒカリは戻ってこないの。
どんだけ恨んで死んで欲しいと思っていたけど死んでも何も変わらずまだ憎いよ。」
そして僕は決心した。
死のうと。
6.遺書
令和2年6月5日
自殺で有名な樹海にて若い男性の遺体を発見。
首吊りによる自殺であることは見れば明らかであった。
そんな遺体の近くに遺書らしきものがあった。
「新人。遺体は見慣れておけ。いざという時体が動かなくなっても困るからよ。」
「警部勘弁してくださいよ。俺まだ入社して1ヶ月で二度目ですよ。見たくないですよ」
そんなことを言いながら遺書を開く。
遺書
生きるとはなんだ。
死ぬことが怖くて生きてる人間は本当に生きていると言えるのか。それは生かされているだけであっ生きているわけではないと私は思う。
生きていれば辛いことの連続だ。死ねばいいことも悪いことも終わらせられる。命とは脆い。
ベテラン刑事と若い刑事はその分を読み終えると
遺体に手を合わせた。
「さてと…一応事件って可能性もあるからな。
タクミお前どう思う?」
「さぁ…事件性についてはなんともわからないですけど。けど、彼の死にたくなる気持ちはなんとなくわかります。」
そういい彼も遺体に手を合わせた。