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第96話 前後不覚の海抜ゼロっぱい

「……ところで、ずっと気になってたんだけどさ。お前、ウヅキのなにがそんなに気に入らないんだ? やっぱあれか、胸の大きさか?」

 俺は金髪ちびっ子お嬢様に、俺を本物だと認めないことへの意趣返しも兼ねてド直球で直接尋ねてみた。


「あなた、わたくしにケンカを売っているのかしら……!?」

「いいや? 視線が不自然に何度もウヅキの胸にいってるだろ? だからどちらかというと、事実確認だ」


「く……っ!」

 言葉に詰まる金髪ちびっ子お嬢さま。


 知覚系S級チート『龍眼』の分析によると、この子は数えられないくらい何度も、ウヅキのおっぱいに対して射るような鋭い視線を放っていたのだ。


 『龍眼』のこういう使い方はプライバシーを覗くみたいで、あまり褒められた使い方じゃないだろうし、俺もどうかとは思ったんだけど。


「ちょっと話がこじれすぎてるからな……」


 ちなみに『龍眼』がどれくらいヤバいポテンシャルを持っているかというと、多分だけどその気にさえなれば、女の子のスリーサイズ――どころかそのデータを基にした全裸イメージ映像まで、再現できるんじゃないだろうか。

 伊達にS級を名乗ってはいない。

 文句なしに犯罪的にヤバいチートである。


「まぁほら、なんだ。(ひが)むのはやめろ、な?」

(ひが)む? 名門トラヴィス家の嫡子たる、このわたくしが? 庶民のサクライさんを? まったく、あなたという人は、本当に失礼な男ですわ!」


「そりゃ可愛さも心根(こころね)もおっぱいも負けて、面白くないのは分かるが……」

「だから僻んでなんていないと、そう言っておりますでしょうに!」


 うがーっ!と吠える金髪ちびっ子お嬢さまだけど、

「人って図星を指されるとすぐにカッとなっちゃうんだよなぁ……」


「まったく、言うに事欠いてなんて失礼な……! いいえ、落ち着くのよ、わたくし……。ふぅ……、いいでしょう! 無知蒙昧なあなたに一から教えて差し上げますわ! 我が名門たるトラヴィス家の祖先は、シュヴァインシュタイガー帝国皇帝を選定する権限をもった七選帝侯(トライアインズ)の一つなのですわ!」


 髪をさらっとかき上げながら、ぺたんこの胸を大いに張って得意げに語り出す金髪ちびっ子お嬢さま。

 ちんまい姿と相まって、必死に背伸びして大人の会話に混ざろうとする子供みたいでちょっと可愛らしかった。


「ふふん、今でこそ商家として身を立てておりますが、かつて武勇でその名をはせた――、特に弓の扱いにおいては帝国内でも右に出る者はいないと言われたトラヴィスに生まれた女性は、弓の邪魔にならぬようにと代々、胸が慎ましいのが血統ですの」


 そして慎ましくも誇り高き少女は、

 ビシィ――っ!

 と、指をさして宣言した。


「だからわたくしが凪の水面のごとくぺたんこであることは、誇ることでこそあれ、僻むことなど決してありはしないのですわ!」


「ふむ、そうだったのか。なら今のは俺が悪かった。訂正して謝罪させてほしい」

 と是々非々で素直に非を認めて、謝ったのだけれど――、


「ふっ、ふふふ……、慎ましい、ええ慎ましいですわ……。どころか真っ平らなぺったんこ……。控えめに言って、前後不覚ですわ……」


「前後不覚……?」

 って、あれだろ?

 酒に酔って意識がもうろうとする的な意味だよな?


「ええ、そうですわ! 胸も背中もまったく変わらない、前と後がどちらかさっぱり分からないから前後不覚なのですわ! ええ、ええ! わたくしは貧相を通り越して、これはもはやゼロの境地! 海抜ゼロのゼロっぱいなのですわ! 悪いですのっ!?」


「自分で言うなよ……」

 っていうか自爆特攻を俺のせいにされても困るんだけど……。


「ふっ、ふ、ふふうふふふふ! 許しません、許しませんわ……!」

「……何をだよ?」


「ゼロっぱいなどと、このわたくしをこうも屈辱的なまでに、(おとし)(はずかし)めたこと、わたくし絶対に許しませんわ!」

「だから俺は何も言ってないよね!?」


「言い逃れは許しませんわ! いいでしょう、こうなったからには、はっきりと白黒つけて差し上げますの! ――決闘、決闘なのですわ! あなたが本物のマナシロ・セーヤだというのなら当然、受けて立ちますわよね!」


「そんなことしなくても、俺が本物の麻奈志漏(まなしろ)誠也だって言ってるだろう?」

「そうですよ、セーヤさんが本物のセーヤさんなんですから!」

「ウヅキ……」


 そう言ってくれるのはすっごくすっごく嬉しいんだ。

 俺のためだって気持ちは本当に嬉しいんだけど。


 でも、いちいち『カッコいいポーズ』を決めるのはやめてくれないかな……?


 それまったく証明にならないからさ、そろそろ諦めてくれていいとおもうんだ……。

 そればかりか、まるで背後からフレンドリーファイアされてるみたいに感じちゃうよ……?


「もはや(さい)は投げられましたの! これ以上の問答は無用ですわ!」

 そしてこっちはこっちで聞く耳を持たない金髪ちびっ子お嬢さま。


「えぇぇぇぇぇ…………」

 俺の口から疲れたため息のような声が漏れたのも、仕方のないことではないだろうか……?

「無敵転生」をお読みいただきありがとうございます!

よろしければブックマークと評価をいただければ嬉しい限りです(ぺこり

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