表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/438

第87話 家に帰るまでがドラスレです

 馬車に揺られてのアウド村までの道中は、特に何があるわけでもなく。

 挟まれる……、じゃない揺られること約1時間。


「す、すみません。安心しちゃって、ついぐっすり寝ちゃいました……」

「はは、いいよいいよ、俺も役得だったし」


 それはもう、眠気が吹っ飛ぶくらいに心行くまで柔らかさを堪能させてもらったからね。


「は、はぅ……」

 俺の腕を思いっきり抱きしめながら寝ていたことに思い至ったのか、ウヅキの顔が真っ赤に染まった。


「それに、なんだかとんでもない夢を見てた気がします……」

 とか言いつつ俺の股間あたりにさりげなくチラッと視線をやったウヅキ。


 もちろんそれについては知らない呈で黙っておいた。

 女の子の秘密を詮索しない、これぞモテる男への第一歩なのである。


 とかなんとかやりとりしつつ、村の入り口で停車した馬車から俺たちは順番に降り立った。


 トラヴィス商会から派遣されたという腕のいい御者――なぜかメイドさんの格好をしていた――に感謝の意を告げると、


「むしろ感謝するのはこちらの方です! 《神滅覇王(しんめつはおう)》にして《王竜を退けし者(ドラゴンスレイヤー)》マナシロ・セーヤ様!」


 とか言われてしまった。

 とか言われてしまったわ……!


「ふっ、ふふ、くふふふ……」


 ヤバい……。

 《神滅覇王(しんめつはおう)》にして《王竜を退けし者(ドラゴンスレイヤー)》って(ふた)つ名マジヤバい……!

 半端なくテンションあがるんですけど!


 おっと、そうだ、サインとか考えてた方がいいかな?

 うん、考えた方がいいよな?

 だってサインを求められたときに、無いと困るもんな?


 あ、でもサインってどうやってデザインしてるんだろ?

 デザイナーにでも頼むのか?

 それともみんな自分で考えてるんだろうか……?


 ……とまぁこんな感じで。

 平穏無事にアウド村へと帰ってきた俺達3人は、村の中を行き行きサクライ家までたどり着いた。


 そんな俺達を出迎えたのは、


「うにゅ、おかえり、なさい」

 一人残っていたハヅキだった。


 ハヅキはとてとてと玄関までやってくると、グンマさんも一緒なのを見てぱぁっと顔をほころばせた。


 でもあれ?

「ハヅキ、起きてたのか?」


 グンマさんが連れて行かれたことを俺たちに伝え、そのまま泣き疲れて眠ってしまったハヅキを部屋まで運んだのは、他でもない俺である。


「ううん、ねてた」

「だよな。あ、ちょっとうるさかったか? 起こさないようになるべく静かにしたつもりだったんだけど、ごめんな?」


 人間の眠りは、深い眠りと浅い眠りを交互に繰り返す。

 玄関を開ける時も大きな音を立てないようにと注意はしてたんだけど、浅い眠りの時間帯だとちょっとした物音でも起きちゃう時があるんだよな……。


 でもハヅキはというと、

「うるさく、ない……なんとなく、かえって、くるかも、って?」

 なんてことを言ってきた。


「ふむ、いわゆる第六感ってやつか。いいね、実に運命的じゃないか」

 運命とか巡り合わせとか、そういう厨二ワードが大好きな俺が素直に喜んでいると、


「ごめんなさい、うそ、でした。おしっこに、おきた」

 ハヅキが心底申し訳なさそうに呟いた。


「そ、そうか……」

 いたずらが見つかった子供みたいに、目に見えてしょぼーんとするハヅキ。


「ま、まぁでも、ほら? それでも狙いすましたようにこのタイミングでおしっこに起きたってのはさ、やっぱ運命的だよ。デスティニーおしっこだ。えらいぞ、ハヅキ」


 言って、頭を優しくなでなでしてあげると、


「ぁ……ぅ……」

 ハヅキが嬉しそうに目を細めた。

 そのままぎゅっと、俺のお腹に顔をうずめるようにして抱き着いてくる。


 このやりとりもなんか久しぶりで、すごくホッとできるなぁ……。


「ほんと、やっと全部終わったんだな……」

 何気ないいつもの日常をいつものように行ったことで、改めてそのことを実感した俺だった。


 そうだよ、いきなりSS(ダブルエス)級と遭遇するなんていう、底意地の悪い神様が用意した運命のいたずらに、俺は打ち勝ったんだ……!


「お疲れ様でした、セーヤさん」

「ああ、さすがに疲れたかな……。でもさ――」


 ここから、改めてもう一度。


 史上最高究極至高の、パーフェクトで、グゥレイトな、俺のモテモテハーレム異世界転生が始まるんだ――!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ