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第80話 ナイアさん23歳


「……えっと? ナイア……?」

 想定外の展開に、俺は思わずぽかんとしてしまう。

 

「な、なんだい……セーヤ?」

 緊張しているのか、ナイアの声はわずかに裏返っていた。


「いや多分、俺の聞き間違いだと思うんだけどさ? なんか今ナイアが俺に惚れた、みたいなことを言われたような……?」


「聞き間違いなんかじゃないさ、アタイはセーヤに惚れちまったんだ!」


「……えっと、ドッキリ?」


 あまりの急展開。

 俺が何の面白味もないそんな答えを返してしまったのも、致し方のないことだろう。


「いやでも、ええぇぇぇぇっっ!?」

 いきなり急に何言ってんの!?


「だって今まで微塵もそんな素振りなかったよな!?」

 それがどうして急にこんな展開に!?


「アタイはさ、添い遂げるなら自分よりも強い男って決めてたんだけど、なかなかいい出会いがなくてね」

「うんまぁ、それはそうだろうね……?」


 現役最強にして、過去に5人しかいないS級騎士に最も近いと言われているナイアだ。

 そんなナイアより強いお相手となると、もはや現存人類の中には存在していない可能性まである。


「その点、セーヤの強さときたら折り紙つきだ。なんせこうやってドラゴンを退治してみせたんだからね。あんな格好いいところを目の前で見せられたら、好きにならない方が無理ってなもんさ」


「そ、そうか……マジな感じか……」


 ん?

 えらく反応が薄いって?


 薄いって言うかさ?

 ナイアみたいな魅力的な美人のお姉さんからいきなり、こんなまっすぐな告白をされて、俺は一体どう反応すれば正解なんだろうか?

 ぶっちゃけ驚きすぎて一周回って落ち着いたまである。


「ほんと、さっきのセーヤには抜群に胸の奥がキュンと来たよ。絶体絶命のピンチにも決して諦めず、未来に向かってあがき続ける凛とした姿――。最後は伝説の《神滅覇王(しんめつはおう)》の力まで行使して、これで惚れるなってほうが無理な話じゃないかい?」


「あ、うん……」


 ふと気づくとラブコメ系A級チート『大仕事をやってのけた同僚に胸キュン』が発動していた。

 タイトルで説明するのが流行りのラノベのごとく、ど真ん中ストレートにすぎるネーミングである。


「アタイはその、がさつだからさ。女としての魅力は低いかも、だし。聖処女様の加護を得るのに必要な聖性が落ちるから、えっちなこともできないし。もう23だから若くもないし。……だけど、ま、まぁ想うだけなら自由だもんな!」


「いや、ナイアは十分すぎるほどに女の子として魅力的だとは思うけど……」


 面倒見が良い姉御肌(あねごはだ)で、色んな人に慕われていて。

 現役最強の騎士にして、実は爵位を持った貴族だったりもして。

 スタイル抜群の綺麗系美人の上に、えっちなビキニアーマーを標準装備しているときたもんだ。


 それもう要素盛り過ぎだろ、ってくらいに魅力的な女の子だ。


「そんなナイアが、俺を……好き?」

 いまだに実感がわかない俺だった。


 ……そしてナイアは23歳なんだな。

 日本で言うと大卒1年目。


 「年上のお姉さん」好きには理想的ともいえる年齢である。

 割と知りたかったナイアの個人情報を期せずしてゲットした俺は、よしっ、と心のメモ帳に書きこんだのだった。


 そして突然のライバル出現に、


「ナイアさんがまさかの参戦です……! でもでも、セーヤさんはすごいですから仕方ないですよね……! わたし、ナイアさんに負けないように精いっぱい、頑張りますから!」


 ウヅキも負けてはいられない――!


「うーん、別に勝負しなくてもいいんじゃないかい? そもそもアタイが女として、ウヅキの魅力に勝てるなんて、とても思えないというか」

「ふぇ?」

 と思ったら、話が妙な方向に転がり始めた。


「ほら、英雄色を好む、って言うだろう? 《神滅覇王(しんめつはおう)》で《王竜を退けし者(ドラゴンスレイヤー)》ともなれば、英雄なんて言葉すら(かす)んでしまうだろうし」


「……言われてみれば、それもそうですね! 争いは不毛ですし、ナイアさんと競争するより、一緒にゴールした方が楽しそうです!」


「だよね! 実際、創世神話でも《神滅覇王(しんめつはおう)》は女の尻ばっかり追いかけてるしさ」

「そのたびに、いっつもピンチになるんですよね。最強なのに茶目っ気があって、なんだかセーヤさんみたいです!」


「まったくだ!」

「えへへ、さすがです、セーヤさん!」


 俺の話でいたく盛り上がっているウヅキとナイア。

 ついに、何もしてないのに「さすがです、セーヤさん」と言われてしまったよ。

 うん、さすがだな、俺。


 二人は初めて会った時も速攻で打ち解けていたし、まぁ仲良きことは美しきかな。

 

 そうさ、ドラゴンとだって分かり合えたんだ。

 人間同士でむやみに争う必要はないだろう。


「ふぅ、可愛い女の子にモテモテで今、俺は最高に幸せだぜ……!」


 ……べ、別に、俺の話題のはずなのに、完全に蚊帳の外にされて混ざれなくて、ちょっとさみしい……、なんて思ってないんだからねっ!


「……え? ……っていうか、マジで……? ナイアが、俺を……?」

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