第76話 《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》ーアマノヌホコー
「『光、あれ――《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》――!!』」
創世の黄金光と、
「グォォォォォォオオオオオオオオオオ―――――――ッッッッ!!」
終焉をもたらす破滅の黒炎。
互いの誇る渾身の一撃、『固有神聖』の発露たる神話級の切り札同士が今――!
正面切って激突をした――!
光と闇、ぶつかり合う両極端の力は――、
「まずは互角か――!」
拮抗して浸食しあい、貪るようにして互いの力を削り合っていく!
奪い奪われ、喰らい喰らわれ。
激しくせめぎ合う鍔迫り合いが続く中――、
「ウヅキ――」
俺はチラリと肩越しに振り返って、ウヅキの安全を確認していた。
ナイアとウヅキ、さらにその隣にはグンマさんもいて、
「さすがナイア。グンマさんまで一緒とはぬかりがないな」
俺は一安心する。
3人とも少しの不安と――そして大きな期待と希望を込めた視線でもって、祈るように俺を見つめていた。
特にウヅキの視線がひっしと俺を捉えていることをしっかりと確認してから、俺はドヤァ!っとキメ顔でウヅキにウインクを飛ばす。
もちろんラブコメ系S級チート『ただしイケメンに限る』があるおかげで、効果は抜群だ。
ウヅキは「はうぅぅ……」って顔をしながら頬を真っ赤に染めて、きゅっと握った右手でそのおおきな胸を抑えていた。
控えめに言って、超かわいかった。
そう。
苦労に苦労を重ねて。
それこそ一度殺されてまで――どうにかこうにか、やっとこさたどり着いたこの局面は。
「可愛い女の子の前で最高にいいカッコする、またとない千載一遇の大チャンスなんだよ――!」
ここでいいところ見せずに、いつ見せるってんだ?
いつ見せるの?
今でしょ!
だったら――!
「おいこら、《神滅覇王》! でかい口叩いておいてチンタラしてんじゃねぇ! こんなもん一発で押し返してみせやがれ!」
まずは相棒のケツを叩いて発破をかける。
そして――、
「ウヅキ、俺の超格好いいところ、絶対に見逃すんじゃねぇぞ? 『固有神聖』《天照》、臨界突破! 燃え誇れ、創世の焔よ――!」
俺は神剣を――《草薙の剣》を今一度、強く握りしめると、
「耐えてみせろよ、《草薙の剣》――!」
ここぞとばかりに根性込めて押し込んでゆく。
「行くぞおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ―――――っっっ!!」
俺が雄たけびを上げたその瞬間――、
黄金の輝きが爆発した――!
溢れんばかりの黄金は、俺を始点として世界の全てを黄金の一色でもって塗り替えてゆく――!
それはまさに地上に現れた太陽のごとく――!
己の輝き一つでもって周囲を遍く照らし出してゆく――!
直後、拮抗していたパワーバランスが崩れ始めた。
破滅の黒は次々と勢力を失い、黄金の支配する領地へと置きかえら得られてゆく――!
「そうだ、負けるわけがない」
俺にはSS級チート《神滅覇王》がついていて。
そしてこの手にはSS級神剣たる《草薙の剣》があるのだから――!
限界を超えて超新星爆発のごとき莫大な出力を見せる《天照》に耐えられる武器は、まず存在しない。
だからここに《草薙の剣》があることは、奇跡のような偶然の産物で――!
「こっちにきていの一番にウヅキと出会って。すぐに《草薙の剣》を預けてもらって。それがなにもかもこの瞬間のためだったとしたら――! まさに2人の出会いは運命の出会いって感じじゃないか――!」
そう、今の俺はSS級が2枚体制なんだ。
ならば――!
「SS級がたった1体で、《神滅覇王》と《草薙の剣》、SS級2つを相手しようなんざ、百億万年早ぇえんだよ!」
《神滅覇王》の象徴たる黄金――光輝の力をまとった《草薙の剣》が、俺の声に応えるように唸りを上げる。
怒涛の勢いで輝きを増す創世の黄金光が、破滅の黒炎を一方的に飲み込んでゆく――!
そしてついに、勝敗が決する時が来た。
既に黒炎は力なく燃え尽きようとしていて。
対して黄金の御柱は天をも衝かん勢いで燃え盛っている。
「SS級『幻想種』、《神焉竜》アレキサンドライト。確かにお前は強い。だが、上には上がいることを、今一度その身をもって識るがいい――!」
黄金の大聖剣が、残り火となった黒炎を容赦なく吹き飛ばしてゆく――!
「俺の覇道の礎となれ――!」
黄金剣が王竜のブレスを完全に打ち抜き霧散させ、そしてついに《神焉竜》本体へと到達した――!
一瞬、耐える素振りをみせた《神焉竜》だったが、
「おおおおおおおおおおおっっっっっっっっ――――――――――っ!!!!」
もちろんそんな抵抗はこの無敵の力の前には長くは続かない。
それでもわずかとはいえ、この力の暴流に抗ってみせたドラゴンとしての意地とプライドは、
「素直に賞賛に値するぜ――」
だが、ま――、
「そのプライドごと叩き潰すと言っただろう? 撃ち抜け、《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》――!」
「グrるウぁAaあああああァァァァァぁぁっ――――っ―――――…………」
黄金剣が叩きつけられるとともに、断末魔のような《神焉竜》の咆哮が、黄金色に染まる世界に響きわたった――。
こうして。
《神焉竜》アレキサンドライドとの長い長い戦いは。
ここに終わりを迎えたのだった――。