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第70話 は、はぅううううううううう~~~~!

「ありがとうな、ウヅキ。おかげで色々と吹っ切れた」

「えへへ、なら良かったです。わたしも来た甲斐がありましたね!」


 ウヅキが両腕をよせて「がんばりました」ポーズをする。

 おっぱいがぎゅむっと寄せられたせいで、うん、色々と大変なことになっていた。


「ふぅ……」

 やれやれ、あいかわらずの俺を魅了してやまない魔性のおっぱいだぜ……。


 うん、でもま。

 これを見て本当にもう全てが吹っ切れた。


 こんな情けない俺を「好きだ」と言ってくれる女の子(ウヅキ)がいるのだから。

 こんなダサい俺を「さすがです」と褒めてくれる女の子(ウヅキ)がいるのだから。


「なら――ここでいいかっこ見せないで、どこで見せるっていうんだよ!」


 格好いいとこ見せて見せて見せまくって、可愛い女の子にモテモテで賞賛されまくりのグゥレイトな異世界生活を、俺は絶対に諦めない――!


「――っと、そうだ。これもありがたく頂くよ」


 言って、俺はさっき払いのけてしまった竹筒(たけづつ)を拾い上げた。

 ウヅキが俺のためにと用意してくれた、『月華草(げっかそう)』を煎じたものが入っている。


「さっきはその、手を払っちまってごめんな。ちょっと頭の中がゴチャゴチャになっててさ。本当にごめんなさい」


 俺はしっかと頭を下げて謝った。 


「そんな、謝らないでください。わたし全然ちっとも気にしてませんので! それにイライラしてたセーヤさんも、その、ワイルドで格好良かったですから、えへへ」

「お、おう……そうか……」


 多分だけど、これもラブコメ系S級チート『ただしイケメンに限る』のおかげだろう。

「このチートのカバー範囲の広さときたら、ほんと半端ないからな……」


 ダメ男に酷いことをされて喜んでしまう、そんな特殊な性的嗜好にウヅキが目覚めてしまったのではないと思いたい。

 ウヅキは包容力が高くて我慢強い女の子だけに、ちょっとだけ不安だぞ?

 

 それはさておき。

 俺は竹筒(たけづつ)の中身を一気に飲み干した。


「なんていうか、普通に苦い……」


「薬草を(せん)じただけですからね……。良薬口に苦し、ってほど良薬ではないのが申し訳ないのですが……」


 でもわずかとはいえ、ちゃんと気力・体力が回復しているし、なによりこれはウヅキが危険を冒して取りにいったものだ。

 その真摯(しんし)な想いが、誰かを思う優しい心が、俺の心を限りなく奮い立たせてくれるのだ!!


「病は気から。誰かを想う心には、最高のプラシーボ効果があるはずだ!」


 ……ついでに。

 肩車をしてスカートの中に頭を突っ込んだことも思い出して、さらに気力がみなぎっていた。


 エロは偉大なり、それもまた男の子の真理なのである。


「ところで……ナイア。いつまで寝たふりをしてるんだ? 盗み聞きとは、趣味が悪いじゃないか」


 俺は少し離れたところにあるがれきの山へと問いかけた。

 元気になったついでに使った知覚系S級チート『龍眼』で、ナイアがそこにいるのは確認済みだ。


 わずかな間があった後、

「たはは、別にそういうつもりじゃなかったんだよ? ただほら、いい雰囲気だったからさ。今出ていくのはちょっと野暮かなって思ってね」


 ガラガラと音を立ててがれきが崩れると、中からエロ美しいビキニアーマーをまとった白銀の女騎士が立ち上がった。


「ふぇ? あわわ――ナイアさんっ!? い、いい、いつからそこに!?」


「ん? ずっと気を失ってたから、いつからって言われるとずっとかな? 聞いてたのは『大大大大――大好きです!』のあたりからだけど。大きな声だったから一発で目が覚めたよ」


「は、はぅううううううううう~~~~!」

 ウヅキの顔がリンゴのように真っ赤になった。


 両手で顔を覆い隠しているものの耳まで真っ赤なので、まったくもって隠し切れていない。


「あのなぁナイア、あんまりウヅキをからかってやるなよ」

「なはは、ごめんごめん」


「でもナイアも大きな怪我はないみたいでよかったよ」


「あの時セーヤが、自分を犠牲にして突き飛ばしてくれたおかげさ。でも風圧をもろに受けてがれきの山に突っ込んじゃってね。アタイとしたことが、そのまま疲労とダメージで気を失っちゃったんだ」


 照れ隠しをするようにナイアが頬をかく。


「俺がもたもたしてたせいで、ナイアにはだいぶ無理させてたからな……わりぃ」

「いいよ、戦場ではお互い助け合ってナンボだからね」

 気にしないでいいさ、とナイアがニカッと笑った。


「ウヅキも、ほら、深呼吸をして落ち着こう」

「は、はい……すー、はー」


 ウヅキの大きなおっぱいがその圧倒的サイズを誇示するかのように、呼吸に合わせてぐいっ、ぐいっと上下した。


「ご、ごくり……」

 ウヅキはただ深呼吸しているだけなのに、俺の目はどうしようもなくその動きに吸い寄せられてしまう……!


「よ、よし。落ち着いたみたいだな」

 ガン見していたのがばれないように、さも何事もなかったかのようにおっぱいから視線を外す俺。


「セーヤさん、また胸を見ています……」


 はい、ぜんぜん視線が外れていませんでした!

 魔性のおっぱいを見まくってました!


「えっちなセーヤさんも嫌いじゃないですけどね……えへへ」


 くっ……!

 怒られると思ったらなんだよこの反応、可愛すぎるんですけど!?


 ほんと可愛くて可愛くて、どうしようもないくらいに可愛くて。

 こんな可愛いウヅキと死んでサヨナラだなんて、そんな未来は――、


「そんなバッドエンドは絶対に受け入れられないよな……!」


 なにがなんでも俺は勝つ……!!


「いろいろとありがとうウヅキ。ここは危ないからさ、ちょっと下がっててくれ」

「はい――!」

 期待に満ちた顔で、こくりと一度大きく(うなず)くウヅキ。


「ナイア、もう全部出し尽くして限界なのは分かってる。その上でお願いしたい、ウヅキのことを頼む」


「《聖処女騎士団(ジャンヌ・ダルク)》団長ナイア・ドラクロワの名に懸けて、確かに頼まれたよ」


 ナイアに連れられるようにしてウヅキが下がっていく。

 時々振り返ってくるので笑って手を振ってあげると、嬉しそうに手を振りかえしてきた。


 それを見た俺の胸の中に、じわっと温かいものが溢れてくる――!


 さて、と。

 俺は《神焉竜(しんえんりゅう)》に向き直った。


「長々と手持無沙汰で待たせて悪かったな《神焉竜(しんえんりゅう)》。今度こそ、最後の決戦だ――」

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