第47話 おさんぽデート
奮闘むなしく、誤解を解くことこそできなかったものの。
しかし今日も今日とて美味しい朝食を頂いたあと、俺は庭先で薪割りに精を出していた。
斧の扱いに特化した戦闘系A級チート『バイキング』で、ぱっかんぱっかんと片っ端から薪を割っていく。
「ふははは、圧倒的じゃないか、我が薪割りは……!」
1時間ほどで今ある薪を全て割り終えた俺は、村人たちからとても感謝されて気分よく家へと戻った。
「お仕事お疲れ様でした! 大の大人でも丸一日はかかる量を、わずか1時間で終わらせてしまうなんてびっくりです。薪割りも得意なんて、さすがです、セーヤさん!」
「いやいや、それほどでもないよ」
ああ!
可愛い女の子にちやほやされるのって、なんて、なんて気持ちいいんだろう……!
ねぎらいに来たウヅキに水を貰って、渇いた喉を潤す。
ハヅキは俺が胡座をかくとすぐに膝の上にちょこんと座ってきて、俺の腕の中ですっぽり可愛く収まっていた。
そしてすりすりと子猫のように甘えてくる。
しばらく3人で他愛もないおしゃべりしていると、グンマさんがやってきた。
「――おつかい、ですか?」
「うむ、ウヅキと二人で隣のコション村まで行ってほしいのじゃ。妖魔の群れを討伐したことを、他の村々に伝えんといかんでの。この前の村長会議も妖魔についての話だったんじゃが、もう危険がないということを早く皆に伝えてやりたいのじゃ」
「それはもちろん構いませんよ」
確かに、危険が去ったことは早く伝えるに越したことはないだろう。
日常生活にも色んな支障が出ているだろうし、警戒を続けるのは肉体的にも精神的にも疲れるものだ。
「詳しい経緯はこの手紙にしたためておる。手間を取らせて悪いんじゃが、向こうの村長にこの手紙を渡してきてくれんだろうか」
「分かりました。それくらいならお安い御用です」
なんせ無職だから特にやることはないしな……いや今日はちゃんと薪割りをしたよな?
ほら、ウヅキだって一日かかる仕事だって言ってたし……
「まぁそこまで急ぎというわけでもない。二人で仲良くデートがてら、楽しんできてくれればの」
「で、デート……っ!?」
ウヅキがぴょんと小さく飛び上がった。
チラッとこっちを見て、
「はわっ!?」
俺と目が合うと、パッと露骨に目を逸らす。
なにこの反応、超可愛いんですけど……!
「ハヅキは……」
「ハヅキはまだ長い距離は歩けんじゃろ? コション村まで10キロはある。すまんが今日はワシとお留守番じゃ」
「うにゅ……わかった」
「そういうわけでマナシロさま。道はウヅキが知っております。妖魔がいなくなった以上、何も危険はないとは思いますが、道中ウヅキのことを守ってやってください」
「もちろんです」
「あ、あのあの、そういうことみたいなので、その、セーヤさん、今日はよろしくお願いしますね!」
ウヅキが深々とお辞儀をして……おっぱいが、たゆんと揺れた。
「コション村は丘の向こうにある村で、村長とうちのおじいちゃんは昔からの腐れ縁なんだそうです」
ウヅキとコション村へ向かう道すがら。
田舎風情が広がる緑豊かな景色に囲まれながら、俺はウヅキから村の話やらなんやらを聞いたりして、つまりとっても楽しくお話をしていた。
「ただ歩きながら何気ない会話を楽しむ……これが『お散歩デート』ってやつか……実に素晴らしいな……」
昨日もハヅキとお散歩に行ったけれど、ハヅキの場合は姪っ子に懐かれてる、みたいな感じがまだまだ大きいしな。
でもウヅキとのお散歩は、ガチのデート感あります!
ただ一緒に歩くだけっていうシンプルな行為なのに、しかし盛り上がる二人。
なんていうかこう、心の繋がり的なものを感じるよね!
「インターネットの海で指を咥えて眺めていた素敵ワードを、俺は今まさに、体験しているのだ……!」
徒歩移動での疲労を軽減する移動系B級チート『徒歩より詣でけり』を発動済みだから、足取りも軽い。
というかおそらくこれを使ってないと、途中で多分ガチでウヅキに置いていかれてしまう……
ウヅキは運動は苦手と言っていたけど、歩くのだけは得意と言うだけあって、足腰は相当強いみたいだった。
そんなウヅキの今日の服装は、ノースリーブの白ワンピース。
胸元が結構タイトな作りをしてて、脇から見える横乳がマジ半端ない。
「なんという圧倒的な存在感……」
腰の上のところでキュッと絞られてるせいで、胸の形が服の上からでもくっきり分かってしまって、しかもスカートが半端なく短いのだ。
太ももが際どくちらちらするのだ……!
端的に言ってえちえちなんだよ!
「だめだ、どうしても、どうしても視線が釘付けになってしまう……っ!」
「セーヤさん?」
「……はっ!?」
「さっきからずっと見てますけど、あの、この服、お気に召しませんでしたでしょうか……?」
不安げに問いかけてくるウヅキ。
「い、いいや、全然、ちっともそんなことないよ! 似合ってるか似合っていないかで言ったら超似合ってる!」
「良かった。これ母の形見なんです。だいぶ古いものなので、セーヤさんのセンスにはもしかして合わないかなって、ちょっと心配だったんですけど。そう言ってもらえてとっても嬉しいです、えへへ」
「うん、ほんと似合ってるよ……」
そんな大切な思い出の品を――知らなかったとは言え――横乳がどうの、腰の絞りでおっぱいがどうの、太ももがちらちらだの、エロい視点だけで凝視していた自分にちょっと自己嫌悪する俺だった……んだけど、
「それでも、どうしても、どうしても目が離せないんだ……っ!」
特におっぱいがすごいんだよ……!
船乗りを誘うセイレーンの歌声のように、俺を誘惑してやまないおっぱいの魅力に抗えない、己の弱い心が憎い……!
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